Q.自社で商品券を発行しようと企画していますが、その際に注意することはありますか?

回答

1.資金決済に関する法律の適用の有無

商品券を発行するにあたっては、資金決済に関する法律(資金決済法、以下「法」といいます。)の適用の有無が問題となります。まず、商品券は、「自家型前払式支払手段」(法3条4項)に該当いたします。もっとも、発行総額が1000万円であれば、基準日未使用残高が基準額(法14条1項、同施行令6条)の1000万円を超えることはないため、発行の届出を行う必要はありません(法5条1項)。
したがって、この場合の発行者は、「自家型発行者」(法3条6項)にあたらず、「前払式支払手段発行者」(法2条1項)に該当しないので、資金決済法の適用を受けることはありません。
なお、発行者が、あらたに発行する商品券以外に、「自家型前払式支払手段」を発行している場合は、全ての「自家型前払式支払手段」の基準日未使用残高を合計した額について法適用の有無を判断する必要がありますので,この点にご留意ください。

2.今後の管理方法・留意点

(1)  「自家型前払式支払手段」の追加発行により、基準日未使用残高が1000万円を超える場合には、最初に基準額を超えた基準日(毎年3月31日、9月30日(法3条2項))の翌日から二月を経過する日までに届出が必要となります(法5条1項、前払式支払手段に関する内閣府令(以下、「府令」といいます)9条)。

(2)  (1)の場合には、以下の義務が生じます。
①表示義務(法13条)
前払式支払手段発行者は,発行者の名称等一定の事項を,発行する前払式支払手段に表示または利用者に提供する義務を負います。

②供託義務(法14条)
前払式支払手段発行者は,前払式支払手段の基準日未使用残高の2分の1の金額を,基準日の翌日から2カ月以内に,発行保証金として供託する義務を負います。なお,この供託義務については,発行保証金保全契約や発行保証金信託契約で代替することも可能です(法15,16条)

③払い戻しに関する義務(法20条)
前払式支払手段発行者は,前払式支払手段の発行の業務の全部または一部を廃止した場合等には,前払式支払手段の残高を払い戻す義務を負います。一方で,上記払い戻し義務を負う場合及び前払式支払手段に関する内閣府令42条で払い戻しが許容される場合を除いては,原則として払い戻しを行うことが禁じられます。

④帳簿書類等保管義務(法22条以下)
 前払式支払手段発行者は,行政の監督をうける立場となりますので,帳簿書類等を作成し,保存する義務を負います。帳簿作成及び保存の詳細については,府令46条に定めがあります。また,基準日ごとに報告書を提出する必要があります。報告書の書式につきましては,府令別紙様式27号をご参照ください。

(3)  (2)の義務のうち,帳簿等につきましては、追加発行等の事情により必要となった場合に備えて、また発行状況を貴社で確認するためにも、発行時点から管理しておくことが望ましいと思われます。

自社で商品券の発行をご検討の企業様は、この分野に詳しい弁護士に一度ご相談ください。

The following two tabs change content below.

弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

顧問弁護士とは、企業の「強力な参謀役」です。お悩みのことがあれば、どのようなことでもまずはご相談いただき、もし当事務所が解決するのに適さない案件であれば、解決するのに適切な専門家をご紹介させていただきたいと考えております。経営者の方々のお悩みを少しでも軽くし、経営に集中していただくことで、会社を成功させていっていただきたいと思います。
初回相談無料 法律相談のご予約はお電話で(予約受付時間 9:00~20:00) 078-382-3531 法律事務所 瀬合パートナーズ

神戸・姫路の弁護士による企業法律相談のメールマガジン

法律事務所瀬合パートナーズがお届けするメールマガジンです。業界で話題のニュースや経営に役立つ情報をお届けします。
無料で読めるメルマガの登録はこちらから。

無料購読

最新のメルマガ
発行日:2021.03.04

法律事務所瀬合パートナーズ通信

非正規社員に賞与や退職金は払わなくても良い?(同一労働同一賃金の原則) ご存じの方も多いと思いますが、今月

バックナンバーはこちら