譲渡制限株式の買取請求制度における注意点
目次
1.閉鎖会社と譲渡制限株式
株式は、本来は自由に譲渡できることが原則です。しかしながら、多くの中小会社では、株主を信頼関係のある者に限定したいという要請が強いことから、例外的に、定款により譲渡による株式の取得につき、会社等の承認を要する旨を定めることができます。このような会社のことを閉鎖会社、このような株式のことを譲渡制限株式といいます。
しかしながら、定款により株式の譲渡制限をしたからといって、必ずしも譲渡を制限できるわけではありません。そこで、譲渡制限株式の買取請求がされた場合に、よく問題となる点と対応策について、説明させていただきます。
2.譲渡承認請求と会社(又は指定買取人)よる買取請求
(1)譲渡承認請求に対する会社の対応
譲渡制限株式を譲渡しようとする株主がいた場合、譲渡承認請求者から会社に対し、譲渡承認・買取請求が行われます。
具体的には、
①会社(承認機関)に対して承認するか否かの決定を請求するか
②会社(承認機関)が承認しないときは会社または会社の指定する者(指定買取人といいます。)が株式を買い取るように請求してきます。
会社は、請求されてから2週間以内に譲渡承認請求者に承認通知をしなければ、譲渡は成立したものとみなされます(みなし成立)ので、ご注意ください。
ここで、会社として承認機関をどこにするかが問題となります。株主総会、取締役会、代表取締役が考えられますが、上記のとおり、2週間以内に承認通知をしなければ、譲渡がみなし成立しますので、迅速性と安定性のバランスから、(取締役会設置会社であれば)取締役会が望ましいと思われます。なお、代表取締役が承認機関になれるかについては、争いがあります。
(2)買取通知の方法
①買取をする者
承認機関が、承認しないときは、会社自身又は指定買取人が買取をする必要があります。会社自身が買取をする場合、株主総会を開催し、その旨の決議をし、40日以内に買取通知をする必要があります。ただし、株主総会を開催すると、他の少数株主にも買取請求の事実が知られてしまい、さらなる買取請求がなされるおそれもあります。ですので、できれば買い取り先としては、指定買取人を指定することが望ましいといえます。もっとも、指定買取人を指定する場合、10日以内に買取通知と下記の供託を証する書面を交付する必要がありますので、普段から、買取請求に備えておく必要があるといえるでしょう。
②買取通知および供託
会社または指定買取人による買取をする場合、譲渡承認請求者に対して、会社または指定買取人による買取通知をする必要があります。
さらに、会社の一株あたり純資産額×買取対象株式数の金額を供託し、供託を証する書面を譲渡承認請求者に交付します。
③株券の提出
株券発行会社の場合、譲渡承認請求者は、供託書面を受領した日から1週間以内に株券を供託し、遅滞なく会社または指定買取人に通知する必要があります。通知を怠った場合、会社または指定買取人は売買契約を解除することができます。なお、株券不発行会社の場合、この手続きは不要です。
(3)売買価格の決定方法
①当事者間の協議
売買価格は、会社または指定買取人と譲渡承認請求者との協議で決定するのが原則です。
②当事者間の協議が整わない場合
協議が整わない場合、会社または指定買取人か、譲渡承認請求者が、通知日から20日以内に価格決定の申立てを行い、裁判所が決定することができます。このとき、両当事者から価格についての意見書が提出される等の攻撃防御が行われるのが一般的です。社歴が長く、不動産を多くお持ちの会社の場合、予想以上に高い売買価格になることもありますので、ご注意ください。
価格決定の申立をしない場合、売買価格は上記(2)②の供託金額が売買価格となります。
3.まとめ
最近は、一部で少数株主を保護する動きがあると聞きますので、閉鎖会社の形態をとっている企業様は特に要注意です。安定的な経営を行うためには、自社の株価が実際にいくらくらいなのかを把握され、買取資金の準備をする等して、普段から少数株式を集約しておかれることをお勧めします。
譲渡制限株式の買取請求への対応に関してお悩みの経営者の方がいらっしゃいましたら、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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