弁護士による債権回収の方法

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弁護士により債権回収をする方法

 自社において債権回収がうまくいかない場合は、弁護士に依頼して債権回収を検討することになるかと思います。

 弁護士が債権回収を行う場合は、複数の選択肢の中から、事案や状況に応じてベストと考える方法を選択します。

 弁護士による債権回収方法は、具体的には次のような方法があります。

弁護士が代理人として督促する

 まずは、弁護士が債権者の代理人となって債務者に督促を行います。
 
 方法は、内容証明郵便などの郵便を送ったり、電話やメール、FAX等を使って請求することが多いです。

 内容証明郵便等を送るときは、「●日以内に支払わない場合は、法的措置を講じます」等と記載し、今回の債権回収に対して強い態度を取ることを伝えます。

 弁護士に依頼してまで債権回収を進めようとすることで、こちらの債権回収に対する強い意志を相手に伝えることができます。
 
 弁護士から請求されると、裁判などの法的手続を取られるかもしれないと思い、相手の対応が変わり、請求にスムーズに応じてくる場合があります。

民事調停手続

 相手が任意に支払わない場合、法的手続に移すことを考えます。

 その一つとしてまずは、裁判所に民事調停を申し立てるという方法があります。
 
 民事調停は、裁判に比べて手数料が安く、手続も簡素であることから、弁護士に依頼しなくても、自社で調停を行うことも可能です。

 民事調停 | 裁判所 (courts.go.jp)

 民事調停は、裁判所で行いますが、いわゆる裁判手続とは全く異なり、調停委員を間に入れた裁判所での話し合いとなります。

 このため、民事調停では、裁判所がどちらが正しいか判断するとか、強制的に債務の支払いを命じるということはありません。

 民事調停で相手がそもそも調停に出席しないとか、調停に出席しても支払いに応じないような場合は、最終的に調停が不成立となって終了することになります。

 その場合は、裁判を起こすなど次の手段を考えなければなりません。

 それでも、例えば、相手が話し合いに誠実に対応しないような場合、相手が支払いに応じないが裁判まで起こすのは抵抗がある、相手が支払いをしないことに一定の理由があって和解的に解決したいような場合は、民事調停の手続を利用することが有用かもしれません。

支払督促

 相手がどうしても支払いに応じない場合は、裁判所の手続を使って強制的に債権を回収する方法を検討することになります。

 その一つの方法として、簡易裁判所の書記官に支払督促の申立てを行う方法があります。

 支払督促 | 裁判所 (courts.go.jp)

 支払督促は、裁判とは違って、書面審査のみで相手に支払督促をすることができ、これに基づいて財産差押さえなどの強制執行をすることが可能となる手続です。

 相手が、裁判所からの支払督促を受け取った後、異議申立てをすれば、通常の裁判手続に移行するというのがこの手続の特徴です。

 異議の内容は、例えば「分割払いにして欲しい」という法的な抗弁とは言えないものもよくあります。

 支払督促を行った結果、相手から異議を出され通常訴訟に移行するというケースの方が多いような印象です。

 このため相手から異議が出されることが予想される場合は、支払督促ではなく、最初から通常の裁判手続を行う方が時間的な無駄がないかもしれません。

 

少額訴訟手続

 相手がどうしても支払いに応じない場合は、最終的には、裁判を起こして強制的に回収することを目指します。

 その一つとして、少額訴訟という方法があります。ここからはいわゆる一般にイメージされる「裁判」となり、裁判官が判決を出して支払を命じるという手続になります。

 少額訴訟 | 裁判所 (courts.go.jp)

 少額訴訟は、通常の訴訟手続ではなく、特別な訴訟手続になりますが、その特徴は「60万円以下の金銭の支払いを求める場合」のみ利用できること、「1回の審理のみで審理を終えて判決を行うことを原則とする」ことです。

 管轄は、簡易裁判所になります。

 通常の裁判では、裁判の期日は何度も開かれ、地方裁判所での平均審理期間は約10か月(判決で終わる場合は約14か月、令和5年次)となっています。

 これに対し、少額訴訟では、原則として1回の審理のみとなりますので、通常の訴訟手続き比べて、非常に速いスピードで判決を得ることが可能となります。

 ただし、少額訴訟も、相手の申立てにより通常訴訟に移行する場合もあります。

 また、事案が複雑であったり、証拠を多く提出する必要があるような場合など、少額訴訟の手続に適さない場合がありますので、そのときは通常訴訟を検討した方が良い場合もあります。

訴訟手続

 最後の手段とも言えるのが、通常の裁判を起こすことです。

 裁判では、当事者双方が互いに書面で主張を出し、それに沿う証拠書類を提出します。

 裁判手続の中では和解も試みられますが、和解ができない場合は、裁判官が判決を出し、どちらの言い分が正しいかを判断します。

 債権者の言い分が認められれば、金銭の支払いを命じる判決が下されます。

 判決が確定すれば、相手から判決に従った支払いがあることが多いです。

 判決が確定したにもかかわらず、支払いがない場合は、相手の財産を差押える強制執行の手続を取ることができます。

強制執行手続

 判決が出てそれが確定しても、相手が支払わない場合は、相手の財産を強制的に差押さえる方法を取って債権回収を図ります。

 強制執行をすることができるのは、確定判決がある場合、和解調書(裁判での和解が成立)がある場合、調停調書(民事調停が成立)がある場合などです。

 差押えることができる財産の主なものは、相手の所有する「不動産」「預金債権」「売掛金債権」「動産」などが考えられます。

 不動産を差し押さえる場合、不動産に抵当権などの担保がついている場合は、抵当権が優先されるため、債権が回収できなくなる場合があるので注意します。

 また、調査をしても、相手に差押えるような財産がない場合は、強制執行ができない場合があります。

 その場合は、一旦現時点での差押えを見送り、相手の経済状態が回復したときに差押えを検討することもできます。

 債権執行の中心は、銀行預金の差押えと言えます。

 銀行預金を差押えれば、回収すべき金額の範囲内である限り、差押時の預金残高をそのまま回収することができます。

 強制執行手続は債権回収における最後の手段として非常に有効ですが、時間とコストが非常にかかるのが難点と言えます。

保全手続

 訴訟を提起して判決が出てそれが確定するまで、1年以上、場合によっては数年かかることもあります。

 その間に、相手が自分の財産を処分してしまわないよう、「仮差押手続」などの相手の財産を保全する手続を取ることも可能です。

 仮差押えを行う場合、相手の事業に重大な支障が出ないよう、相手の預金の仮差押えを行うことは難しく、不動産など比較的影響が少ないと思われるものの仮差押えが認められる傾向にあります。

 仮差押えを行う場合は、裁判所が決めた金額を担保金として法務局に供託する必要があります。

 

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