賃料の回収方法
目次
賃料回収のためには早めの対応を
賃貸経営者が最も苦労する問題の一つが、賃料回収です。
賃料回収の成功のカギは、早めの対応です。時間が経てば経つほど回収率は低下していくのが現実です。
このため、早めの対応が成功につながります。
また、情報収集も非常に重要です。
賃借人の現在の状況や資産など、情報量が多ければ多いほど、回収の成功率は上がります。
このため、地道に日頃の債権管理をしっかりと行うことが重要です。
まずは早めに督促することが第一歩
支払期限に遅れたらすぐに賃借人に連絡を取って支払いを督促するのが、賃料回収の第一歩です。
面倒でも支払われるまで繰り返し督促し、滞納がある度に毎回督促していくのが賃料を滞納させないための重要なポイントです。
賃借人が賃料を滞納する場合、賃借人側の状況として、大きく①平常時の場合、②危機的な状況の場合、③倒産状態の場合が考えられます。
このうち①の平常時の場合は、単純な払い忘れなどの事務的ミスなどが原因であったりするので、賃料の回収は容易でしょう。
また③の倒産状態の場合は、もはや回収が困難です。場合によっては、破産手続の中で配当を受けるしか方法がないことがあります。
このため、②の危機的状態のときに、他の債権者に先駆けて回収を図ることが賃料回収の成功のポイントとなります。
他の債権者よりも先に回収を図るためにすべきことは、まずは実際に債務者に会いに行ってみるということです。
債務者である会社に出向いたところ、もはや営業をしている気配がないということもあるかもしれません。
債務者である会社に赴き、社長や担当者と話をすることができた場合、すぐに支払いを受けられないかもしれませんが、そのときに会社の情報を聞くようにしてください。
また、普段と違う会社の様子がないか等、会社の様子をよく観察して情報をつかむことも賃料回収にとって非常に重要です。
連帯保証人に請求する
賃借人から賃料が支払われない場合は、連帯保証人に連絡をして、連帯保証人に対して賃料の支払いを求めることも検討しましょう。
裁判等を見据えて請求を行う
賃料の滞納が続くため、契約を解除して明渡しを求めていく場合は、段階を踏んで請求を行っていきます。
内容証明郵便を送付して督促する
賃料不払いに関する内容証明郵便を送付し、賃料の支払いを求めます。内容証明郵便という形式の書面で働きかけることで、相手に圧力を掛けることができます。
また、弁護士の名前で内容証明郵便を送付することで、相手にプレッシャーをかけることも一定の効果が期待できます。
賃料滞納を理由に契約を解除しようとする場合は、この内容証明郵便で一緒に「契約を解除する」旨の通知を行います。
裁判を起こす
内容証明郵便などで請求を行っても、賃借人が支払いに応じない場合は、法的手続を検討します。
法的手続には、支払督促、少額訴訟(60万円以下の請求)、通常裁判を起こす方法があります。
裁判の中で和解が成立し、未払賃料を何とか支払ってきたり、分割払いにより支払う内容の和解をする場合もあります。
和解ができない場合は、未払賃料の支払いを命じる判決などを得てから、賃借人の財産を差し押さえる強制執行の手続を行います。
ただし、賃借人に財産がない場合は、強制執行の手続を行っても賃料を回収することができません。
賃料が回収できない場合は明渡しを求める
賃料の回収ができない場合は、今後の賃料の支払いも期待できないことから、賃貸借契約を解除して、物件の明渡しを求めることになります。
賃借人が任意の明渡しに応じない場合は、裁判を起こして明渡しを求め、最終的には強制執行をして明渡しを求めなければならないことがあります。
その場合は、賃貸人の側で費用を負担して、裁判や強制執行を行う必要があるため、相当の時間や費用がかかり、負担が大きくなります。
賃料滞納があっても対応できる事前の対策が重要
賃貸経営においては、賃料滞納は避けて通れないトラブルかもしれません。
このため賃料滞納が将来起こりうることを前提に、事前の対策を行うことが重要となってきます。
賃借人の情報を収集する
当然ですが、新規の取引先に賃貸する場合は、その取引先に資産があるか、経営状況はどうか、主な収入源は何かなどの情報を収集することが重要です。
新規の賃借人と契約するときには、資力や資産に関する情報を開示してもらい、賃貸借契約を締結するかを慎重に判断します。
情報の入手方法としては、会社のホームページ、X(旧Twitter)、フェイスブック、Instagramなどで確認する方法があります。
公的に入手できる資料としては、法人登記や、不動産登記簿謄本などを取ってそこに情報がないか確認する方法もあります。
また、その取引先の関係者や取引先、近隣の人から情報を得るという方法もあります。
情報を多く収集することが、賃料回収率の大幅な上昇につながります。
連帯保証人
また賃貸借契約では、契約時に連帯保証人をつけてもらうことが一般的ですが、その際、きちんと資力のある連帯保証人をつけてもらうよう注意する必要があります。
中小企業の場合、会社と会社の代表者は経済的に一体であることも多いため、会社の代表者が会社の連帯保証人になることは避けた良いかもしれません。
敷金・保証金
賃料滞納があり、賃借人が原状回復をしないまま退去する場合や、明渡しの裁判を行って強制執行により退去を求める場合に備えて、契約時に十分な敷金・保証金を確保することが重要です。
そうすれば、賃料の滞納があった場合でも、最終的には敷金・保証金からこれを差し引くことで回収を図ることができます。
賃料の回収でお悩みの方は、是非一度、法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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