建物明渡しの強制執行
目次
建物明渡の強制執行を申し立てる
建物明渡訴訟で勝訴判決を得ても、賃貸人が自ら賃貸物件の中に入って、賃借人の荷物などを搬出することは認められていません。
このため、判決を得ても、賃借人から明渡しを受けられない場合は、裁判所の執行官に対して、強制執行の申立てを行わなければなりません。
申立ては、賃貸物件がある住所地を管轄する地方裁判所の執行官に対して行います。
強制執行を行うためには、建物の明渡しを命じる確定した判決や、判決と同等の効力を持つ和解調書があることが必要です。
また、申立てを行う際には、執行官の報酬となる予納金を裁判所に納める必要があります。
予納金の金額は、そのケースによって異なりますが、6万円~数十万円(20~50万)程度になります。
動産執行の申立て,不動産引渡(明渡)執行の申立てに必要な書類 | 裁判所 (courts.go.jp)
明渡しの催告
強制執行の申立ての後、執行官は、いきなり強制的に荷物を搬出する訳ではなく、賃借人に対して、1か月の引渡し期限を定めて、明渡しの催告を行います(民事執行法168条の2)。
またこのとき強制執行を実施する予定日も決められます。
この執行官による明渡しの催告は、強制執行の申立てから2週間以内に実施されることになっています。
この1か月の期限までに、自発的に退居する賃借人も少なからず見られます。
強制執行の断行
強制執行の実施予定日までに、賃借人が自発的に退居しない場合は、いよいよ強制執行の断行(荷物の強制的な搬出)が行われます。
荷物を搬出する業者を賃貸人側で手配するか、執行官が使っている業者を事前に手配しておきます。
このとき賃借人が不在で物件に施錠されている場合もあるので、鍵を開錠してくれる業者を手配することもあります。
建物明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行うものとされています(民事執行法168条1項)。
債権者が賃貸物件の占有を取得する必要があるため、強制執行の際は、賃貸人または代理人(弁護士など)が立ち会う必要があります(民事執行法168条3項)。
業者に荷物を全て搬出してもらった後、賃貸物件の占有を賃貸人が取得すれば、明渡しは完了となります。
動産の引渡し、売却
執行官は、賃貸物件の中に残置された動産について、債務者(賃借人)、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければなりません(民事執行法168条5項)。
動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、即日または断行日から1週間以内に動産を売却することができます。
動産売却まで執行官は、動産を保管することになりますが、必要な場合は保管のための倉庫を手配する必要があります。
任意の明渡しを目指す
このように、明渡しの強制執行の断行は、時間がかかる他、執行官の手数料、荷物搬出業者の費用、鍵の開錠業者の費用及び倉庫の保管費用などの多額の費用がかかります。
このため、遅くとも1か月の引渡し期限までの間に、賃借人から任意の明渡しを受けることが理想です。
できれば、強制執行に至る前に、賃借人と話をして、何とか任意に鍵を返還してもらうようにしましょう。このとき、賃借人から①任意に明渡しを行ったこと、②残置物の所有権は放棄し、処分されても異議がないことを記載した確認書を取るようにしましょう。
賃貸物件の明渡しについてお悩みの方は、是非一度、法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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