賃借人が行方不明になった場合の対処法
目次
賃借人が行方不明になった場合
賃料の滞納があったので、賃借人の様子を見に行ったところ、誰もおらず、ポストも郵便物であふれかえっており、状況から行方をくらましたと思われる場合は、どのように対処すればよいでしょうか。
自力救済は禁止されている
このとき、賃貸人は、持っている鍵で勝手に中に入り、中の残置物を勝手に撤去したり、鍵を新しく交換することはできません。
法的手続によることなく実力行使をすること(=自力救済)は禁止されています。
いくら自己の所有物件であるとしても、無断で物件に立ち入って賃借人の所有物を廃棄等すれば、場合によっては、後日、損害賠償請求をされる可能性もあります。
このため、面倒ですが、明渡しを求めるには裁判などの法的手続による必要があります。
親族や連帯保証人に連絡を取ってみる
明渡しを受けるためには、法的手続による必要があるとはいえ、いきなり明渡しを求める裁判を起こすことも大変です。
このため、まずは、賃借人の親族や関係者、連帯保証人に連絡を取ってみて、賃借人の情報を得るようにしましょう。
情報を得て、何とか賃借人と会うことができたら、まずは鍵の返還を受けることを最優先してください。
鍵の返還を受けることは法的には明渡しを意味します。
裁判などの手続によって物件の明渡しを求めることは、非常に大きな労力と費用がかかりますが、賃借人から任意に鍵を返してもらえれば、費用もかからず、すぐに明渡しを受けることができます。
このため、賃借人に対しては、賃料の未払いを責めることなく、ともかく明渡しさえしてもらえたら良いという態度で接するのが良いでしょう。場合によっては立退料の支払いを検討してもよいかもしれません。
このとき鍵の返還を受けると同時に、確認書にもサインをもらいます。
賃借人からもらう確認書の内容ですが、①鍵を任意に返還し物件を明渡したこと、②室内に残置した動産の所有権を放棄するとともに、残置物を処分しても異議がないという内容にしておきます。
連帯保証人に対応してもらうことを検討する
賃借人が行方不明の場合に、賃借人に代わって連帯保証人との間で賃貸借契約を解除し、連帯保証人に対して物件の明渡しを求めることはできるでしょうか。
原則として、連帯保証人に対してこのような物件の明渡しを求めることはできません。
もっとも、賃貸借契約時に、賃借人から連帯保証人に対して契約解除・明渡し・残置物処分の委任する内容の契約条項を盛り込んでおけば、対応が可能な場合があります。
このような委任条項は、借主が親族の連帯保証人で、委任条項の内容を借主が納得していれば有効といわれています。
もっとも、解約・明渡時に本人の意思に反する場合は無効になるので注意が必要です。
明渡訴訟と強制執行
賃借人と連絡が取れない場合は、賃貸物件の明渡しを求める裁判を起こして、明渡しを求めます。
まずは、賃料不払いを理由に、賃貸借契約を解除する旨の通知を賃借人にする必要があります。
しかし、賃借人が行方不明の場合は、この解除の通知をすることができないので、裁判の手続の中でこれを行います。
裁判の場合、被告となる賃借人に対して、裁判所から裁判書類を郵送することになりますが、賃借人が行方不明の場合は、最終的には公示送達という手段で送達を行います(公示送達の申立書 (courts.go.jp))。
行方不明の賃借人は、基本的には裁判にも出席しないので、被告不在のまま、物件の明渡しを命じる判決が言い渡されることになります。
強制執行
物件の明渡しを命じる判決を得て、それが確定したら、明渡しを求める強制執行の申立てを行います。
また、同時に賃貸物件の中にある動産を処分する動産執行の申立ても行うことを検討します。
申立ては、物件の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に行います。
申立時に裁判所に対して、予納金(執行官の手数料となります)を納付する必要があります。
予納金の金額は、ケースによって異なりますが、6万円から数十万円(20~50万円など)程度です。
このときの予納金、弁護士費用については、事実上、賃貸人が負担しなければなりません。
動産執行の申立て,不動産引渡(明渡)執行の申立てに必要な書類 | 裁判所 (courts.go.jp)
早めの対応がベスト
賃借人が行方不明になった場合には、明渡訴訟を起こしてから強制執行をすることになり、賃貸人にとって非常に大きな負担となります。
このため、日頃から賃借人の様子を注視し、異変があれば早めに対応するように心がけるのが良いでしょう。
賃借人が行方不明になったことでお悩みの方は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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