賃貸借契約の条項の有効性(委任事項、無催告解除、自力救済、残置物廃棄)
目次
Q.「連帯保証人への委任条項」の有効性
賃借人が行方不明になった場合に備えて、連帯保証人に物件の明渡しをしてもらうため、賃貸借契約書に「連帯保証人への委任条項」を定めておき、連帯保証人に、①賃貸借契約の合意解約、②建物明渡し、③物件内の処分をしてもらうことはできるでしょうか。
A.できる場合もあります
連帯保証人が借主の親族で、かつ委任の内容を借主が納得していれば有効と考えられます。
ただし、解約・明渡時に本人の意思に反する場合は無効と判断されるでしょう。
連帯保証人への委任条項例
「借主は連帯保証人に対し、次の事項を委任するものとする。但し、借主は本件賃貸借契約が終了し、かつ本 件賃貸建物の明渡し及びその他の契約関係がすべて精算されるまで、当該委任を撤回しないものとする。
① 貸主と本件賃貸借契約を合意解除すること
② 貸主に対し本件賃貸借建物を明け渡すこと
③ 本件賃貸借契約の対象建物内の家財・動産類を破棄・処分すること
④ 上記に関連する一切の事項」
Q.残置物の廃棄・処分条項の有効性
賃借人が行方不明になった場合に備えて、物件の中に残置されている物を処分することができるよう、賃貸借契約書に「残置物の破棄・処分条項」を定めておこうと思うのですが、このような条項は有効でしょうか。
A.明渡しを受けていれば有効
賃貸物件の明渡し(=鍵の返還)を任意に受けていれば、この条項を使って、裁判をせずに賃貸物件内に残置されている動産類を破棄処分しても問題はありません。
何よりもまず、鍵の返還を任意に受けることが大切です。
残置物の破棄・処分条項例
「 物件を明渡した後に残置された借主の家財や動産等の所有物について、借主は、その所有権を放棄したものとし、貸主が任意に破棄処分しても借主は何らの異議を述べない。但し、残置物の廃棄処分に要した費用は借主の負担とする。」
Q.自力救済容認条項の有効性
賃借人が行方不明になった場合に備えて、賃貸人が賃貸物件内に立ち入って中の動産を撤去できるようにするため、賃貸借契約書に「自力救済容認条項」を定めておこうと思いますが、有効でしょうか。
A.無効になります
残念ながら、賃借人がこのような契約書に署名押印していても、この特約自体が公序良俗に反して無効と判断されます。
この条項を根拠に賃貸人が賃借人の部屋に立ち入ったとしても、不法行為となり損害賠償責任が発生するおそれがあります。
自力救済容認条項例
「借主が家賃を3ヵ月分以上滞納した場合、貸主および管理会社は借主の同意を得ることなく貸室に立ち入り、貸室内の家財を他に保管してその貸室をあらたに第三者に貸すことができる。但し、家財の保管に要した費用は借主の負担とする。」→無効になります。
Q.無催告特約の有効性
賃借人が賃料を滞納した場合に備えて、1か月でも賃料を滞納すれば契約を解除することができるようにするため、賃貸借契約書に「無催告解除特約条項」を定めておこうと思いますが、このような特約は有効でしょうか。
A.無効になります
残念ながら、このような特約は無効です。
賃貸人と賃借人との間には、信頼関係が基礎とされていますので、家賃の不払いによる借家契約の解除には、信頼関係が破壊されたと認められる事情が必要です。
信頼関係が破壊されたと認定されるためには、次の要件が必要とされています。
①少なくとも3カ月分以上の家賃の滞納があること
②滞納家賃を催促しても払わないこと
③今後も家賃の滞納が続くと予想されること
無催告解除特約条項例
「家賃を1カ月分でも滞納すれば、直ちに何らの催告なくして本契約を解除できる」→無効になります。
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