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商事留置権と債権回収
目次
1 商事留置権とは
商事留置権とは、①両当事者が法人や事業者などの商人で、②両当事者の事業から生ずるなど商行為により生じた債権が存在し、③弁済期が到来しているときには、債権者は、④契約による保管など商行為により自己の占有開始をした、⑤債務者所有の物又は有価証券を留置することができる権利のことを言います。
①から、個人顧客との取引、例えば、個人から自動車の修理を受けて修理したのに、修理代金を回収できない場合には商事留置権は成立しません。
この場合は、民事留置権が成立しますが、破産の場合には消滅してしまうことに注意が必要です。
③から、万一に備えて、取引先が破綻したときには、当然に期限の利益を喪失する合意などを予め契約しておくことが重要です。
④から、商事留置権が成立するためには、保管物は取引先の所有物である必要があり、第三者の所有物は対象にはならないことも注意してください。
商事留置権には、以下のような例が考えられます。
Ⅰ 取引先の商人の金型を預かって委託製造を行っていたところ取引先が破産した場合、加工代
金・売掛代金の支払いがあるまで金型を含む取引先所有物全部の引渡しを拒絶することができ
ます。
Ⅱ 倉庫業者が取引先から商品を預かって保管をしていたところ、取引先が倉庫代金を支払わずに
破産してしまった場合、倉庫代金の支払いを受けるまでは商品の全部の引渡しを拒むことがで
きます。
Ⅲ 工場機械等の修理を委託されていたところ、修理後に委託先が破産を開始した場合には、修理
代金の支払いを受けるまでは工場機械の引渡しを拒むことができます。
2 破産開始決定があった場合
売掛債権先である取引先が破産を開始した場合、破産財団に属する財産につき存する商事留置権は、特別の先取特権に転化し、別除権として破産手続によらないで行使することができます(破産法66条1項、65条1,2項)。
したがって、取引先の物を預かっていれば、特に担保の契約がなくても、その物の返還を拒絶し、動産競売を行い、換価代金から優先弁済を受けることにより、一定の回収を図ることができる可能性があります。
加工や修理のために取引先から材料や商品を預かったりする場合には、「預かり物」が担保になることを意識し、「他人の物」という意識から、破産管財人等から返還を求められた場合、あるいは取引先が苦しい状態になったときに返還を求められ、無条件で返還してしまうことがないように注意してください。
もっとも、価値のない預かり物は早急に引き取りに来てもらうように請求することも大事ですので、動産競売を行うかについては、早期に債権回収に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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