株主総会の特別決議

1  はじめに

 株主総会は、全ての株主によって構成される株式会社の意思決定機関であり、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類の決議が行われます。
 株主の地位に重大な影響を及ぼすなどの理由で慎重な判断を要する事項については、株主総会の特別決議が必要となります(会社法309条2項)。以下では、特別決議を要する事項、普通決議や特殊決議との要件の違いについて具体的に説明していきます。

 

2  特別決議を要する事項

 会社法309条2項各号は、以下の事項について、株主総会の特別決議を要するものと定めています。
①譲渡制限株式の買取りまたは買取人の指定(同項1号)
②特定の株主からの自己株式の取得(同項2号)
③全部取得条項付種類株式の全部の取得(同項3号)
④譲渡制限株式の相続人等に対する売渡請求(同号)
⑤株式の併合(同項4号)
⑥非公開会社における募集株式の発行等に関する決定(同項5号)
⑦公開会社が第三者に対し特に有利な金額で募集株式の発行等を行う場合における募集事項の決定(同号)
⑧新株予約権の発行についての⑥⑦と同様の決定(同項6号)
⑨監査役の解任(同項7号)
⑩累積投票により選任された取締役の解任(同号)
⑪役員等の責任の一部免除(同項8号)
⑫資本金の減少(同項9号)
⑬現物配当(同項10号)
⑭定款の変更(同項11号)
⑮事業の譲渡等の承認(同号)
⑯会社の解散(同号)
⑰組織変更、組織再編の承認(同項12号)

 

3  特別決議の要件について

 会社法309条2項は、株主総会の特別決議について、普通決議より厳格な要件を課しています。具体的には、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定款により加重または3分の1までの軽減が可能)、出席した株主の議決権数の3分の2以上の賛成を要する(定款により加重のみが可能)と定めています。
 普通決議や特殊決議との要件の違いは、以下の表のとおりになります。

定足数 可決要件
普通決議(会社法309条1項 過半数
(定款で排除可能。ただし、役員・会計監査人の選解任は3分の1未満にできない。)
過半数
特別決議(会社法309条2項各号) 過半数
(定款で加重または3分の1までの軽減可能)
3分の2以上
(定款で加重可能)
特殊決議(会社法309条3項・4項) 半数以上 ①議決権を行使できる株主の半数以上
かつ
②3分の2以上
(①②は定款で加重可能。会社法109条2項の定款変更については、②は「4分の3以上」。)

 

4  決議方法について

 決議方法については、会社法上の規定はありませんが、定款で定められている場合には定款により、定められていない場合には、議案についての賛否を特定できる方法である限り、議長が合理的裁量によって決することができます。この点、議案への賛否が拮抗している場合には、投票による採決が必要となりますが、書面により行使された議決権のみで可決要件を満たしているなど、結果が明らかな場合には、拍手等により採決をすることも可能です。
 採決は議案ごとに個別に行うことが原則ですが、議案全てを一括して決議に付すこともできます。もっとも、株主が個別採決を提案していた場合には、議長が株主総会決議において、一括して決議を行うことについて多数決での承認を得る必要があります。

 

5  まとめ

 以上のとおり、株主にとって重要な事項については、特別決議が必要とされており、普通決議より厳格な要件が求められています。これらの要件を満たしていなければ、株主総会決議が取り消される可能性があり、役員等が損害賠償責任を負うことにもなりかねません。株主総会の決議要件や、決議方法に不安があるという方は、是非弁護士にご相談ください。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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