株主総会は省略できる?
目次
1 株主総会の招集
株式会社は、毎事業年度の終了後一定の時期に、定時株主総会を招集しなければならないとされています(会社法296条1項)。そのため、株式会社としては、会社法上規定されている様々な規制に注意を払いながら、毎年株主総会の招集準備を行わなければなりません。株主総会を開催しなかった場合はもちろん、後から株主総会の招集手続きに重大なミスが見つかると、株主総会取消の訴えなどにより株主総会決議が効力を失ってしまい、会社経営に致命的な影響を与える恐れも生じてしまいます。
そこで、株主総会の招集・運営には、細心の注意を払わなければなりません。株式会社としては、できる限り負担の重い株主総会を省略ないし簡略化して、機動的な会社運営を行いたいと思うことも多いはずですので、以下では、そうした株主総会を簡略化する手続きについて見ていきます。
2 株主全員の同意
通常、株主総会を招集するためには、取締役が株主総会の日の2週間前まで(非公開会社の場合は1週間前まで)に、株主全員に対して招集通知を送らなければならないとされています(会社法299条1項)。この招集手続きにミスがあった場合には、先ほど述べたとおり、その程度によっては株主総会決議の効力に影響を及ぼす可能性が出てくるところです。
もっとも、株主全員の同意がある場合には、こうした煩雑な招集手続きを行わずに株主総会を開催することができます(会社法300条)。この場合でも、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権行使可能である、もしくは電磁的方法によって議決権行使可能である旨定められていると、やはり原則どおり招集手続きを省略できない点には注意が必要です。
なお、これはあくまで株主総会の「招集手続き」を省略できるという話であり、株主総会で決まった事項は当然議事録として残さなくてはなりません。
3 全員出席総会
株主総会開催当日に、総会の開催に同意した株主全員が出席している場合には、別途招集手続きをとる必要はないと考えられています。このケースは全員出席総会と呼ばれています。
株主総会の招集通知を送らなければならないと定められているのは、株主総会の開催を事前に株主に知らせることにより、株主総会へ出席する準備等を行う機会を与える必要があるからです。全員出席総会の場合には、株主に対してこのような配慮をする必要がないことから、実務上も認められています。
4 株主総会決議の省略
ここまでは、株主総会の招集手続きの省略についてでしたが、株主総会の決議自体を省略できる場合もあります。
取締役や株主が行った株主総会の目的である事項に関する提案について、株主の全員が同意の意思表示をしている場合には、株主総会決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。そのため、このケースでは、株主総会決議自体を行う必要がありません。
なお、ここで同意が求められている「株主」は、当該事項について議決権を有する株主に限られます。また、この方法をとった場合であっても、議事録は作成しなければならないことに注意が必要です(会社法施行規則72条4項1号)。
これとよく似た制度として、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知し、当該事項について株主総会への報告を要しないことについて株主全員の同意が取れた場合には、当該事項について株主総会への報告があったとみなされる制度があります(会社法320条)。
5 まとめ
ここまで見てきたように、原則として厳格に定められた会社法の規定に従って株主総会を招集・運営していく必要がありますが、一部では手続きが緩和されていますので、こうした規定をうまく使いながら効率的な意思決定を行いたいところです。
その反面、株主総会手続きの瑕疵は後々大きな問題に発展する可能性がありますので、少しでも判断を迷われた場合には、対応を決めてしまう前に一度専門家への相談を検討してもらえればと思います。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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