株式譲渡契約書作成の注意点

1 はじめに

 株式譲渡契約書とは、その名のとおり、株式を譲渡(売買)する際に作成する契約書のことです。
 株式を譲渡(売買)する場面はさまざまですが、典型的なものは、M&A(企業の合併と買収を総称する表現です。)の際に買主側が売主側のオーナーの持つ株式を譲り受ける場合などです。また、中小企業などの場合には、事業承継の一環で、現経営者から後継者に株式を移転させるという場合も想定されます。
 一口に株式譲渡と言っても、その方法は通常の売買契約とは異なります。例えば、株券発行会社の場合には株券そのものの交付をしなければ有効な譲渡とはなりませんし(会社法128条)、譲渡の事実を会社や第三者に対抗するためには、株主名簿の書き換えを行う必要があります(同法130条)。
 このように、株式譲渡を行う際には、その譲渡が有効に成立しているかどうか、有効に成立したとして、その譲渡に基づいた権利をきちんと主張できるかどうかが非常に重要なポイントとなります。
 そのため、株式譲渡の際には、その契約内容を反映した契約書が大切になってくるのです。

 

2 株式譲渡の流れ

 それでは、株式譲渡はどのような流れで行われるのでしょうか。
 まず、譲渡の対象となっている株式が譲渡制限株式か否かを確認します。譲渡制限株式であるかどうかは、発行会社の定款や登記簿により確認できます。譲渡制限株式であることが判明した場合には、株式の譲渡につき会社の承認を得なければならず、この承認がなければ会社に対して譲渡の事実を主張できないことになります。非上場会社の場合には、無関係な第三者が自己株式を取得できないようにするため、株式に譲渡制限が課されていることが非常に多いです。
 次に、譲渡価額を決めます。発行会社が上場企業であれば、既に時価が算定されて公開されているため特に決める必要はないのですが、非上場企業の株式の場合にはその時価が定まっていないため、改めて算定する必要があるのです。一般的には、その会社の財務状況などをもとに外部の専門家に試算してもらったうえ、当事者間で金額を定めます。譲渡価額が不相当に低い等の事情があった場合には、贈与税などの課税対象にもなりますので、注意が必要です。
 最後にその他の条件についても協議し、内容がまとまれば晴れて株式譲渡契約の成立となります。

 

3 株式譲渡契約書の内容

 株式譲渡の流れは上で述べた通りですが、株式譲渡契約書にはどのような内容を記載する必要があるのでしょうか。
 まずは、対象となっている株式を特定する必要があります。当事者間ではもちろん、どの株式について譲渡について協議しているのかは自明ですが、第三者がその契約書を見たときにも、どの株式についての契約書であるかを明確にしておくべきです。株式を特定する情報としては、会社名、株式の種類、株式数などですので、明確に記載しておきましょう。
 一番重要なのが、譲渡対価とその支払方法です。譲渡対価はいくらか、どのようにしていつまでに支払うかなどの情報を明記します。支払期限が、株主名簿の書き換えと同時とするのが基本ですが、当事者間の合意により変更することも可能です。一般的に対価の授受や株式の名義書き換えを行うことをクロージングといいます
 株式譲渡を実行する前提条件を細かく定めておくことも大切です。例えば、先ほど述べたような譲渡制限付株式が対象となっている場合には、その譲渡につき会社の承認がされていることを前提条件としたり、重要な書類が引き渡されることを前提条件とすることもあります。また、その他、株式を譲渡するにあたって必要な手続きがある場合には、その手続きがきちんと履行されていることを条件とするのも良いでしょう。
 さらに、表明保証条項です。これは、譲渡対象である株式自体や、その発行会社が、契約を交わすことになった前提事項等(例えば、株式発行会社の財務状況、株式の状態と内容、発行会社が保有するノウハウ等)について真実かつ正確であることを、譲渡会社が保証することです。
 その他にも、一般的な契約と同様に、解除や保障、誓約事項についても言及しておけば、一定のリスク回避にはつながります。

 

4 最後に

 株式譲渡契約は、他の物品についての単純な売買契約とは異なり、その対価の算定や前提事項の確認等、事案に応じて注意すべき点が非常に多いです。株式譲渡契約書は、その注意すべき点を踏まえて極力リスクを回避できる内容にする必要があり、契約が問題なく履行されるためにもきちんとした形で作成しておく方が安心です。
 そのために、契約内容に問題がないかどうかを、一度専門家にチェックしてもらうという機会は必要かと思います。
 弊所では、契約書作成も多く取り扱っておりますので、案件に即した内容も取り入れながら、最適な契約書を作成することのお手伝いもさせていただけます。契約書の作成をご希望の方は、弊所までお問合せください。

 

The following two tabs change content below.

弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

顧問弁護士とは、企業の「強力な参謀役」です。お悩みのことがあれば、どのようなことでもまずはご相談いただき、もし当事務所が解決するのに適さない案件であれば、解決するのに適切な専門家をご紹介させていただきたいと考えております。経営者の方々のお悩みを少しでも軽くし、経営に集中していただくことで、会社を成功させていっていただきたいと思います。
初回相談無料 法律相談のご予約はお電話で(予約受付時間 9:00~20:00) 078-382-3531 法律事務所 瀬合パートナーズ

神戸・姫路の弁護士による企業法律相談のメールマガジン

法律事務所瀬合パートナーズがお届けするメールマガジンです。業界で話題のニュースや経営に役立つ情報をお届けします。
無料で読めるメルマガの登録はこちらから。

無料購読

最新のメルマガ
発行日:2021.03.04

法律事務所瀬合パートナーズ通信

非正規社員に賞与や退職金は払わなくても良い?(同一労働同一賃金の原則) ご存じの方も多いと思いますが、今月

バックナンバーはこちら