株主総会の招集手続

1 はじめに

 株主総会とは、株主全員で構成される会社の最高の意思決定機関です。以下、毎事業年度の終了後一定の時期に招集される定時株主総会(会社法296条1項)の招集手続について説明した後、臨時株主総会(同条2項)の招集手続及び株主による招集手続(同法297条)について説明します。

 

2 定時株主総会の招集手続

(1) 招集の決定

 取締役会を設置している会社においては取締役会が、取締役会を設置していない会社においては取締役が、開催の日時、場所、議題等を決定します(同法298条)。

(2) 招集通知の発送

 株主総会を招集するには、株主総会の日の2週間前までに、株主に対して招集通知を発送しなければなりません(同法299条1項)。ただし、公開会社でない株式会社で書面投票及び電子投票を実施しない場合は1週間前までに発送すればよく、加えて、取締役会を設置していない場合は定款によってさらに期間の短縮が可能です(同条項)。
 2週間前とは、通知を発送した日と総会の日との間に中2週間(休日を含む)が必要という意味になります。書面投票や電子投票を実施する場合で、その期限を総会の日より前の特定の日と定めたときは、その特定の日と発送の日との間に中2週間が必要です(会社法施行規則63条1項3号ロ・ハ)。

(3) 招集通知の記載事項と添付書類

ア 記載事項

 招集通知には、招集にあたって取締役会で決議した以下の事項を記載します(会社法299条4項)。これらの事項が記載される招集通知を協議の招集通知といいます。

 ①総会の日時及び場所(同法298条1項1号)
 ②総会の目的事項(同項2号)
 ③書面投票ができることとする場合はその旨(同項3号)
 ④電子投票ができることとする場合はその旨(同項4号)
 ⑤書面投票・電子投票を実施する場合の決定事項等(会社法施行規則63条)

イ 添付書類

 狭義の招集通知とともに、株主に対し、以下の書類を提供する必要があります。

 ①事業報告(会社法437条)
 ②連結計算書類(同法444条6項)
 ③計算書類(同法435条2項)
 ④監査役の監査報告(同法437条)
 ⑤会計監査人の会計監査報告(同条)
 ⑥株主総会参考書類(同法301条1項、302条1項)
 ⑦議決権行使書(同法301条1項)

(4) 招集手続の省略

 以上が原則ですが、株主全員の同意がある場合で、かつ、書面投票及び電子投票を実施しない場合は、招集手続を省略することができます(会社法300条)。

(5) 添付書類の省略

 添付書類は大部になり、印刷代や株主への輸送費等のコストがかかります。そこで、法定の記載事項の一部をHPで開示すれば、それらの事項については株主に提供したものとみなされるWEB開示の制度が利用できます(会社法施行規則94条、133条3項~5項、7項、会社計算規則133条4項~6項、134条5項~7項)。なお、WEB開示を利用するには定款の定めが必要です(会社法施行規則94条1項ただし書、133条3項ただし書、会社計算規則133条4項ただし書、134条5項ただし書)。

 

3 臨時株主総会の招集手続

 定時株主総会以外の株主総会を、臨時株主総会といいます。臨時株主総会は、定時株主総会以外の機会に、報告事項や決議事項が生じた場合に開催されます。臨時株主総会の招集手続は、添付書類を除いて、定時株主総会の招集手続と同じです。

 

4 株主による招集手続

 総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(会社法297条1項)。
 請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、または、請求があった日から8週間以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合は、請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができます(同条4項)。

 

5 まとめ

 以上の手続を怠ると、その株主総会の決議が取消事由や無効事由となる可能性があります。株主総会の招集手続に心配がある場合、手続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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