株主総会の対応
1 はじめに
株主総会の招集や決議に法令違反等の問題がある場合、後に総会決議の効力を争われるリスクがあります。
また、近年では株主総会において、取締役等が一般の株主から質問を受ける機会が増加しており、対応につき事前に準備しておく必要性は増しています。
以下では、株主総会の対応について、解説していきます。
2 株主総会
(1)意義
株主総会は、会社としての意思決定を行うための株主の会議体(会社の意思決定機関)であり、会社法上、取締役等の機関の選任や定款変更といった一定の重要事項については、必ず株主総会決議によって決定しなければならないこととされています。
株主会社においては、毎事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を招集する必要があるほか、必要に応じて臨時株主総会を開催することができます。
(2)招集
株主総会は原則として取締役が日時・場所・議題等を決定して招集します。
取締役会設置会社では、これらの事項につき取締役会で決定して代表取締役が招集手続を執行しますが、その際書面等により招集通知を発しなければなりません。
そして、株主が議案について検討するための期間を確保するため、招集通知の発送・発出の期限は、公開会社(発行株式の全部または一部について譲渡制限をしていない会社)の場合には総会の日の2週間前まで、非公開会社(発行株式の全部について譲渡制限をしている会社)の場合には総会の日の1週間前までとされています。
これらの招集手続に問題(招集通知の漏れや期限徒過等)があると、招集手続に法令違反があるものとして株主総会決議の取消事由に該当してしまう可能性があるため、スケジュールを意識して準備を進めていく必要があります。
(3)議事
株主総会の議事については、株主の法的利益の侵害等にわたらないかぎり、基本的には議長(通常は定款で取締役社長とされます)の裁量に委ねられています。
もっとも、取締役等が株主総会において株主から特定事項について説明を求められた場合には、これに対して必要な説明を行う義務(説明義務)があり、株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な説明を怠ると、決議方法に法令違反があるものとして総会決議の取消事由に該当してしまう可能性があります。また、質問に対する説明が不十分であれば、株主からの信用にも影響しかねません。
株主からの事前の質問状等もふまえ、株主総会で質問があった場合の説明につき、事前に検討・準備しておくことが重要です。
(4)議事録
株主総会の議事については所定の項目を記載した議事録を作成することが義務付けられており、株主や債権者には議事録の閲覧・謄写の請求が認められています。
3 決議の効力に関する問題
(1)決議の不存在・無効
そもそも株主総会が開催されたとは評価できない場合、具体的には代表取締役が招集したわけではない株主総会において決議がなされた場合や、多数の株主について招集通知を欠くなど著しい手続的瑕疵がある場合には、総会決議は不存在とされ、取り消されるまでもなく効力が認めらません。
また、決議内容が法令に違反する場合には、総会決議は無効とされ、やはり取り消されるまでもなく効力が認められません。
(2)決議の取消し
株主総会の①招集手続・決議方法に法令や定款の違反・著しい不公正がある場合や、②決議内容に定款違反がある場合、③議案について特別な利害関係を有する株主の議決権行使により著しく不当な決議がなされた場合には、総会決議につき取消事由が認められ、株主総会決議取消しの訴えにより決議の効力が否定されます。
4 最後に
以上のように、一定の事項については株主総会での決議が必要であり、後に総会決議の効力に疑義が生ずることがないよう、慎重に準備を進めていかなければなりません。
もし、「株主総会の開催にあたってどのような点に注意すればよいのかわからない」といったことでお困りなら、株主総会対応に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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