スクイーズアウト
1 はじめに
スクイーズアウトとは、少数株主の保有株式を強制的に取得することで、少数株主から株主の地位を失わせることをいいます。スクイーズアウトが用いられるのは、敵対的な株主を排除する場合や大株主が会社の支配権を強化する場合です。株主数が多くなると、会社経営のために少数株主の意見も尊重する必要があり、意思決定の迅速さが失われます。そのため、円滑な経営を行うためには、株主数を減らす必要があります。もっとも、少数株主から任意で株式を買い取るのは容易ではありません。そこで、強制的に株主から株式を取得するための手段がスクイーズアウトなのです。
また、スクイーズアウトにより、100%の株式を取得し完全子会社化した場合、親会社は連結納税制度を適用することができます。親会社と子会社の利益を損益通算することができるようになるため、納税額を減らすことが可能です。
では、実際にスクイーズアウトを行うには、どのように進めればよいのでしょうか。スクイーズアウトには、①株式等売渡請求、②株式併合、③株式交換、④全部取得条項付種類株式の4つの方法があります。以下では、この4つの方法について順に紹介します。
2 スクイーズアウトの方法
(1)株式等売渡請求
一つは、株式等売渡請求による方法です。特別支配株主は会社の承認を得て、他の株主の株式を買い取ることができ、これを株式等売渡請求といいます。特別支配株主とは、90%以上の議決権を持つ特別支配株主のことです。株主総会を開く必要もないため、迅速に少数株主からの買い上げを進めることができます。多数株主が90%以上の議決権を有する場合には、この方法によることが一番簡単です。
(2)株式併合
二つ目は株式併合による方法です。株式併合は、株主総会の特別決議により決定され、複数の株式を1つにまとめることができます。株式を併合し、少数株主の株式が1株未満になるように調整することで、その株式は端株となります。端株は、株主総会での議決権行使ができないため、少数株主から議決権を失わせることができます。この議決権のない端株を会社が買い取ることで、少数株主を会社から排除することになります。
(3)株式交換
3つ目は、株式交換による方法です。株主交換とは、完全子会社となる会社の株式すべてを完全親会社となる会社の株式と交換することです。親会社となる会社は、子会社の100%株主になることができます。株式交換には、親会社と子会社双方で株主総会の特別決議が必要になります。
(4)全部取得条項付種類株式
4つ目は、全部取得条項付種類株式による方法です。全部取得条項付種類株式とは、会社が強制的に株主から買い取ることのできる株式のことで、種類株式にあたります。そのため、まず種類株式発行会社発行済株式となるための定款変更を行う必要があります。定款変更には、株主総会の特別決議が必要です。その後、普通株式を全部取得条項付株式に変更するための定款変更を行う必要があります。この定款変更も特別決議が必要です。全株式を全部取得条項付種類株式に変更したら、いよいよ少数株主の株式を強制的に買い取ります。買い取りの際にも、株主総会の特別決議を必要とします。
3 終わりに
以上のとおり、スクイーズアウトには様々な方法があります。どの方法を用いるかは、その目的や資本にも左右されます。重要なのは、事前にしっかりとした計画を立てて進めることです。手続きの専門性が高いため、専門家と連携した進めるべきであることは間違いありません。迅速な意思決定等のため、スクイーズアウトを用いる場合は、是非弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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