ベンチャー法務 ~資金調達・ファイナンス - 投資契約書について弁護士がポイントを解説

1 ベンチャー企業の資金調達

ベンチャー企業は,不動産等の担保もなく,財政基盤も弱いため,銀行等の金融機関からの融資を受け難い状況にあります。このため,ベンチャー企業の資金調達は,株式等をベンチャーキャピタル等の投資家に発行することがメインとなります。

 

2 投資契約とは

投資契約は,ベンチャーキャピタル等の投資家がベンチャー企業に対して投資するにあたり,発行会社,経営株主,投資家との間で締結される契約です。
投資家は,企業に対して資金を提供して株式等を取得し,将来的に株式等を譲渡することでキャピタルゲインを得ることになります。このため,株式等の価値が重要になることから,投資契約では,企業の経営状態を監督するための条項や,企業価値に影響を及ぼすような事項の把握や拒否ができる条項のほか,投資家の出口となる株式の買い取りに関する条項等が定められます。

 

3 表明保証条項とは

表明保証条項とは,法令違反がないことや企業と経営株主等が事前に交付した資料に誤りがないこと等を表明し,保証する旨の条項です。訴訟等が係属していないことや担保権が設定されていないこと等,詳細な規定が設けられます。仮に契約締結時点で表明保証に反することが明らかになっている事項があれば,その事項は例外として明記しておかないと,契約違反となってしまいます。
表明保証に違反があった場合は,損害賠償や投資からの撤退を認める旨の条項が盛り込まれることが一般的です。

 

4 取締役派遣条項とは

取締役派遣条項とは,投資家が企業の運営状況を確認することを目的として,社外取締役を派遣(指名)するための条項です。条項では,招集通知を受ける権利や取締役会や株主総会に出席して意見を述べることができる旨が明記されることや,反対に許可を得なければ意見を述べることができない旨が明記されることもあります。

取締役の派遣までいかなくても,取締役会や株主総会にオブザーバーとして参加することができるオブザーバーを派遣する条項が設定される場合もあります。オブザーバーは会社法に規定がないため,その具体的な権利等は契約内容次第となります。企業側としては,経営株主側の意向が反映した取締役会決議ができるよう,取締役の過半数は経営株主側で保てるようにしておく必要がありますし,投資家側としては,企業側と投資家側とで利益相反状態になったような場合等に,いつでも取締役を辞任できるよう,取締役の人数を調整しておく必要があります。

 

5 ドラッグ・アロング条項とは

ドラッグ・アロング条項とは,発行済み株式総数の過半数を有する株主や,発行済み株式の総数の3分の2を保有する優先株主等の一定の株主の承諾等,一定の要件がある場合に,他の株主に対して買収に応じるべきこと(同時売却,強制売却)を請求できる条項です。この条項により,投資家は,具体的な買収提案があるものの,少数株主が反対しているような場合に買収を受けることができないというような事態を回避することができます。また,投資家と経営株主側の意見が対立した場合でも,買収提案に応じるように請求することもできます。

この条項は,反対する可能性のある株主全員に対して拘束力を持たせる必要があるため,全株主を当事者とする株主間契約において合意すべき条項といえます。また,企業側としては,まだまだこれからというときに投資家に権利行使をされないよう,一定の要件を定めるにあたっては,買収提案の規模を要件とする等の対策も必要です。

 

6 みなし清算条項とは

みなし清算条項とは,発行会社が買収された際に,発行会社を清算したものとみなして,投資家に優先的に分配する条項です。みなし清算条項では,買収に関する定義を定め,その買収が発生した際に,買収の対価を分配する旨が定められます。

例えば,10億円の価値がある企業があり,そのうちの1億円を投資家が投資していた状況で,2億円でのМ&Aがなされた場合,みなし清算条項がなければ,2億円を9対1の割合で分配することになるため,投資家は,2000万円の分配しか受けることができません。みなし清算条項があれば,投資家は,まず,1億円について優先的に分配を受け,残りの1億円について,1000万円の分配を受けることができます。このため,投資家にとっては買収によるイグジットの場合に利益を得られるか,それとも損失を受けるのかに影響する重要な条項ですし,企業側にとっては,投資家からの資金調達を受けやすくするための条項として重要といえます。

 

7 株式買取条項とは

株式買取条項とは,投資契約違反等の一定の事由が生じた際に,投資家が企業あるいは経営株主に対して,一定の価格で株式を買い取るよう請求できる条項です。この条項により,企業や経営株主に契約違反があった場合に,投資家が投下資本を回収し,企業との関係を解消することが可能となります。

一定の事由には,表明保証条項に違反があった場合や,株式公開に向けての合理的な努力を怠った場合等が定められます。一定の価格については,投資家が株式を取得した際の単価,直近の取引事例又は買取請求時の時価のうち最も高いものを単価として買取株式の数量を乗じたもの等というように定められます。契約違反があった場合,投資家が企業に対し損害賠償請求をすることは可能ですが,損害額の立証には困難が伴うため,投資家にとって重要な条項といえます。

 

8 終わりに

このように,投資契約は,企業及び投資家の双方にとって重要な事項が定められるため,ベンチャー法務に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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