ベンチャー企業の資金調達

1.はじめに

ベンチャー企業とは、先進的な技術等を基礎として新たなビジネスを考案し、これを試行錯誤の上軌道に乗せて、ビジネスモデルとして確立する企業のことをいいます。
ベンチャー企業は、上記のような性質上、ビジネスモデル確立までの過渡期において多額の資金を要しますが、自社の営業利益はそれほど振るわないため、資金調達が重要になります。
ベンチャー企業の資金調達には以下のとおり様々な方法がありますが、それぞれメリット・デメリットがあるため、弁護士等専門家のアドバイスも受けつつ、適切な方法で行うことが大切です。

 

①金融機関から融資を受ける

典型的な資金調達方法として、金融機関から融資を受ける方法が考えられます。
ベンチャー企業のように若くて実績の乏しい会社であっても、信用保証協会を通せば、金融機関から金銭を借り入れられる可能性があります。ただし、審査に時間を要するため機動的な資金調達が難しく、また、返済計画どおりの返済が義務付けられる点でも柔軟性に乏しいことが難点です。

②日本政策金融公庫から融資を受ける

資金調達方法として、日本政策金融公庫から融資を受ける方法も考えられます。無担保、無保証、低金利で融資が受けられる制度もありますが、各制度には各々利用条件があります

③助成金や補助金を利用する

各種助成金や補助金を利用して資金調達する方法も考えられます。助成金や補助金は、基本的に返還の必要がないのがメリットといえます。ただし、申込書類の準備に手間と時間を要する場合が多いこと、審査で落選する可能性があること、申込から入金までに時間を要すること等のデメリットもあります。

④クラウドファンディング

インターネット上にて不特定多数の人から少額ずつ資金援助を募り、そのお礼として返礼品を送るという資金調達方法を、クラウドファンディングといいます。出資者は返礼品目的で出資するため、企業としては、事前の市場調査を兼ねることも大きなメリットです。ただし、目標額を達成できないリスクや、募集方法や募集内容を巡って炎上するレピュテーションリスクがあるなど、デメリットも小さくありません。

⑤ベンチャーキャピタルから出資を受ける

ベンチャーキャピタル(VC)から、出資を受けるという資金調達方法も考えられます。
VC自身も、企業の成長後に株式譲渡により利益を得ることを目的としているため、VCがコンサルティングも行ってくれる等、VCと企業がWin-Winの関係を築くことができる場合があるのが大きなメリットです。ただし,反対に、VCからの経営への口出しにより成長が訴外されたり、経営権を奪われたりするリスクもあることには注意が必要です。

⑥IPO(Initial Public Offering)

証券取引所に上場し、一般投資家に企業の株式を購入してもらうという資金調達方法であるIPOも考えられます。広く一般投資家から資金調達を受けることができるため、多額の資金が調達可能となることが強みです。ただし、証券取引所の上場審査は厳格で、条件を満たすために長期的な計画で準備しなければならないものもあることには注意が必要です。

⑦ICO(Initial Coin Offering)

一般投資家に対して新たに独自の暗号資産(ユーティリティ・トークン)を発行して販売する資金調達方法であるICOも考えられます。これは、証券取引所の上場審査を介さずに資金を調達できる点でメリットがありますが、それ故に、企業自身が公開したホワイトペーパーしか投資の判断材料がないため、一般投資家からは将来性や安定性が担保されていないとして忌避される場合もあります。
また、発行されるユーティリティ・トークンは、当該トークンを購入したプロジェクトで使用するか、トークンを売却するしか使途がない点でも、投資商品としても魅力が高くないと考えられています。なお、現在では、資金決済法や金融商品取引法の改正により、日本でのICOの実施は困難となっています。

⑧STO(Security Token Offering)

一般投資家に対して、ブロックチェーン上で発行されたセキュリティ・トークンを販売する資金調達方法であるSTOも、近年注目を集めています。セキュリティ・トークンとは、電子的に発行された有価証券のことをいいます。有価証券ですので、資金の使途や利益の分配方法が予め決まっている点で、ICOに比して安全性の高い暗号資産です。また、電子的に発行されているので、譲渡も簡便です。ただし、セキュリティ・トークンは電子的な有価証券であるため、金融商品取引法の規制を受けます。発行するトークンの性質によっては、募集を業として行うには金融商品取引業の登録が必要な場合もあることには、注意が必要です。

⑨IEO(Initial Exchange Offering)

ICOと同じく、一般投資家に対し、ユーティリティ・トークンを新たに発行、販売して資金調達する方法には、IEOという方法もあります。
ICOと異なり、企業は、暗号資産交換業者の取引所に上場し、暗号資産交換業者を介してトークンを販売するため、一般投資家からは、ICOよりは投資商品としての将来性、安定性が担保されていると考えられています。企業としても、暗号資産交換業者を介してトークンを販売することで、マーケティングのコストを削減できるというメリットがあります。
また、日本では、JVCEA(日本暗号資産取引業協会)や金融庁による事前審査も必要です。資金決済法の規制を受け、また、当該トークンが投資性を有する場合には金融商品取引法の規制も受けることには注意が必要です。

 

2.まとめ

ベンチャー企業にとって、資金をどのように調達するかは、企業の成長・発展に大きな影響を及ぼすおそれがあります。各企業のステージにあわせた無理のない資金調達を検討してください。
資金調達にお悩みのベンチャー企業の経営者様は、この分野に詳しい専門家にご相談ください。

以 上

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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