ベンチャー企業の労務問題
労務問題については,企業の規模にかかわらず起こりうるものですが,今回は特にベンチャー企業において起こりやすい労務問題をご紹介いたします。
目次
1.就業規則・労使協定の確認
まずは就業規則等が適切に整備されているか確認する必要があります。就業規則等は会社の指針や統制のため作成しておいたほうが良いです。もっとも,開業当時に作成されたものがそのままになっている場合ですと,法改正が反映されていなかったり,法律的に適法か否かあやふやな条文も存在する可能性もあります。労働基準法に則った規則となっているか,また,会社での運用に沿ったものになっているかを一通り見直す必要があります。
さらに,附則規程の給与規程や育児介護休業規程などもきちんと整備されているか確認が必要です。
加えて,忘れがちなものとして必要な労使協定が整備されているかです。36協定はもちろん,給与から立替経費分を控除している場合,賃金控除に関する協定などの整備も必要です。
労働基準法等の諸法規に沿った規定関係の整備が第一の準備となります。
2.長時間労働について
ベンチャー企業におかれましても,人手不足の問題はあると思われます。人手不足の場合,マンパワーが足りず,一人一人の労働者に過剰に業務が課されている可能性があります。マンパワーが足りなくなり,一人一人の労働者の負担が増えることにより,残業が強いられることになります。従業員に残業させれば当然残業代を支払わなければなりませんが,資金が枯渇しがちな設立当初では,残業代が未払いになってしまうケースもございます。そのため,人員と業務量の把握が重要になってきます。
3.労働保険・社会保険加入者の確認
まず,雇用保険の原則的な加入基準は週20時間以上勤務の場合となっています。アルバイトの方等で,週20時間以上の勤務をしているにもかかわらず,雇用保険に加入していない方はいないか確認してください。
また社会保険の加入基準は週30時間以上の勤務の場合,従業員501名以上の企業であれば,平成28年10月より週20時間以上の勤務で加入しないとならなくなっています。このあたりの基準を踏まえ,従業員の勤務時間の把握をするとともに,加入漏れがないようご確認ください。加入手続き漏れや,退職しているのに喪失届を出していないというケースが判明する場合もありますので確認が必要です。
4.人事労務トラブルの有無の確認
パワハラ・セクハラを含めた労務上のトラブルについて,相談できる部署を設けておく必要があります。上場前に人事労務上のトラブルで訴訟等に進んでしまうと,上場審査に大きな影響が出る可能性があります。パワハラやセクハラといった労務トラブルを抱えている人のための相談口を設けておくと安心です。また退職トラブルについても,訴訟等に発展する前に会社側で相談できる法律事務所があると安心です。
5.まとめ
以上ベンチャー企業等に見受けられるトラブルや問題について記載させていただきました。
この他にも様々なトラブルが付きまといがちです。会社側としては業績を伸ばし,上場を目指したりしていかなければならないときにトラブルに見舞われると目標が危ぶまれてしまいます。そうならないように,事前に弁護士に相談しながら進めていくことも重要と考えます。また何かあったときにすぐに相談できるようにしておくことも重要です。何事も後手にまわすよりも早急に対処していくことが大切です。弊所ではベンチャー企業のスタートアップ支援等のご相談も承っております。気になる方がいらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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