ベンチャー法務 ~IPO準備 - コーポレートガバナンス~

1 はじめに

会社が成長を続け,IPOの実施を検討する段階になったとき,何をどのように進めればよいのか,悩まれる経営者の方も多いことでしょう。
IPOを進めるには,各証券取引所が要求する様々な実質的要件を満たす必要があります。特に,実質的要件のうち,社内の体制・制度の整備については,設計して運用していくまでに期間を要しますので,計画的に進める必要があります。
この記事では,コーポレートガバナンスの観点から, IPO準備を進めるに際しての留意点等をお話しいたします。

 

2 内部通報制度の設計

(1)内部通報制度の設計の重要性

会社内で法令違反行為や不祥事が生じた場合,会社は,これに対して行政上・民事上の責任を負うのみならず,会社の評価・イメージの悪化によるレピュテーションリスクをも負うことになります。法令違反行為や不祥事が経営へ及ぼす悪影響の大きさは計り知れません。
そこで,会社としては,法令違反行為や不祥事が生じないよう社内規則を整備するのみならず,法令違反行為や不祥事を早期に発見して被害が大きくなる前に対処し,また,再発防止策を講じることができるよう,社内の管理体制を整備する必要があります
そのためには,まず,法令違反行為や不祥事を早期に発見するために,実効的な内部通報制度を設計することが極めて重要になります。

(2)社員が通報しやすい制度設計

具体的には,社員が,通報することにより自らが不利益を被る危険を懸念することなく,違法な行為や不適切な行為に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるような制度を設計することが必要です。そうでなければ,社員は,不祥事に気付いたとしても,通報した際に生じる自らの不利益を懸念して通報を行わず,見て見ぬふりをすると考えられるためです。
例えば,通報内容に関して秘密が保持されるのみならず,通報の事実そのものが秘密にされなければなりません。また,通報の受付方法としても,専用の電話回線を設置したり,勤務時間外の受付を認めたりする等の配慮が必要です。

(3)通報に対する適切な検証の確立

次に,社員から通報された情報や疑念に対して,客観的な検証がなされ,適切な運用がなされるような体制を整備することも必要です。そうでなければ,社員による通報が,その内容が精査されることなく,会社にとって問題がないと判断されてしまうおそれが高いためです。
例えば,会社の経営陣が関与している不祥事を調査する場合もあるため,経営陣から独立した通報・検証の制度を確保しておかなければなりません。実際に内部通報窓口を設けている会社も,社内窓口のみならず,社外窓口(法律事務所等)を設置している会社が非常に多いです。

 

3 個人情報の取扱い

IPO審査においては,情報セキュリティや個人情報保護の観点からも,リスク管理及びコンプライアンス体制の整備が求められています。
また,個人情報保護法上も,会社の規模にかかわらず,個人情報を取り扱う会社は全て,プライバシーポリシー(個人情報保護方針)を策定した上,個人情報保護法上定められた様々な義務を負うと定められています。これに違反した場合,是正勧告等の対象となり,会社の活動が大きく制限されるおそれもあります。

加えて,近年,個人情報の扱いに関する関心が高まっており,個人情報の漏洩等の不祥事が生じた場合のレピュテーションリスクも大きいといえます。
そこで,会社としては,プライバシーポリシー,個人情報管理に関する社内規程等を策定し,これに従った運用がなされるよう,外部専門家との連携,関係法令の社内周知リスク管理及びコンプライアンスにかかる会議の開催等を行っていくことになります。
個人情報の第三者提供については,近年個人情報保護法の改正も行われているところですので,特に注意が必要です。

 

4 紛争が与えるIPO審査への影響

会社が活動をしていく中で,不祥事,事故,人事労務問題等,紛争に晒される場合は少なくありません。そのため,IPO審査時に会社が訴訟等の紛争を抱えていた場合にどのような影響があるのかという点は,大きな関心事かと思います。
実際,会社の抱える紛争がIPO審査に与える影響は,紛争の内容,規模等によってケースバイケースではありますが,当然,当該紛争が会社の収益や事業活動に重大な影響を与える場合には,IPO審査にもマイナスの影響を与えることになるでしょう。

また,会社が同種の訴訟を多数抱えているような場合には,会社のリスク管理及びコンプライアンス体制についても疑義が生じることになるため,その意味で,IPO審査にもマイナスの影響を与えることとなってしまいます。

そこで,会社としては,会社の抱える紛争が,できる限りIPO審査にマイナスの影響を与えることのないよう,事業への影響の有無及び程度,訴訟の見通し,再発防止策の策定等をよく検討し,IPO審査時において明確に説明できるような準備をしておくことになります。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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