子どものいじめ問題と学校側(学校法人)の対応方法
目次
1.はじめに
2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立し、学校はいじめ対応に大きな変化を求められるようになりました。学校は、被害児童やその保護者と交渉するにあたり、新法の知識と理解が必須となります。
以下、学校がいじめ問題に対応する際の留意点を中心に詳述します。
2.いじめ防止対策推進法と学校側の対応
(1)「いじめ」の定義
いじめ防止対策推進法(以下「いじめ防止法」といいます。)において、「いじめ」の定義が定められました。いじめ防止法における「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等、当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいいます(「いじめ防止法2条1項」)。
このように「いじめ」の定義がかなり広くなったことから、いじめか否かが争われることは少
なくなりました。
(2)被害児童と保護者への対応
学校は、通報を受けたときは、速やかにいじめの事実の有無を確認するための措置を講じなければなりません(法23条2項)。
被害児童の代理人から交渉のアポイントを求める連絡があった場合も、対立する姿勢を示すのではなく、誠実に対応し協力する姿勢を示すのがよいでしょう。決して担任レベルで対応するのではなく、学校全体で取り組みましょう。普段から、いじめの通報があったことを学校が速やかに情報共有できるシステムを作り、機能できるようにしておくことが大切です。
(3)加害児童と保護者への対応
学校は、いじめがあったことが確認された場合、加害児童に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行う必要があります(法23条3項)。
具体的には、別教室での授業(法23条4項)、出席停止(法26条)、部活動の謹慎、クラス替え等を検討したり、所轄警察署との連携(法23条6項)、担任の交代、支援員の配置等、いじめの再発を防止するための環境を作ることを検討するべきでしょう。
ただし、加害者への行き過ぎた指導がなされないように注意する必要があります。
3.重大事態(いじめ防止法28条)
重大事態が発生した場合、学校は、学校の設置者(公立の場合は教育委員会)又はその設置する学校の下に組織を設け、調査を行う必要があります(法28条1項)。後者の例としては、第三者委員会の設置が考えられます。
重大事態とは、次の場合を指します。
① いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(法28条1項1号) 例)自殺、精神疾患、多額の金銭の支払い
② いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(法28条1項2号)
相当の期間とは、年間30日を目安としますが、児童生徒が一定期間、連続して欠席しているような場合には、上記目安にかかわらず、学校の設置者又は学校の判断により、迅速に調査に着手することが必要です(文部科学大臣決定・いじめ防止基本方針参照)。
なお、いじめとの因果関係が不明でも、重大事態に該当することに注意してください。
4.いじめ予防授業
各教育委員会では、いじめ予防に関する授業を定期的にするように指導がなされているようですので、いじめ問題に詳しい弁護士によるいじめ予防授業を実施することも検討されるとよいでしょう。
子どものいじめ問題でお悩みの学校法人を経営されている方は、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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