創業株主間契約の重要性
仲間と協力して起業したものの,途中で意見が対立して,創業メンバーが辞めていくことは少なくありません。
対友人関係では単なる「喧嘩別れ」で済ますことができるかもしれませんが,対会社関係ではそうはいきません。何もケアしなければ,議決権を行使できる株式を持ったまま出ていくことになるので,会社を辞めた後も,会社外から会社に対して影響を及ぼすことができるからです。
このようなリスクをケアするために,創業時には,創業メンバー間で,「創業株主間契約」を締結しておくことをお勧めいたします。
1 創業株主間契約とは
「創業株主間契約」とは,創業時に複数人が株式を所有する場合に,創業株主間で締結される契約です。
創業株主間契約を締結する目的は,創業株主が退職する際に,その人が保有している株式を会社に残る株主が買い取るようにすることにあります。
2 契約の内容
⑴ 株式譲渡に関する条項
「株式譲渡」に関する条項は、創業者間契約書において必ず定めておくべき条項です。主に,①どのような場合に買い取るのか,②誰が買い取るのか,③買取価格について定めます。
① どのようなときに株式を買い取るのか
ア 会社の役員と従業員の両方の地位を失ったとき
イ 死亡したとき
などが考えられます。
創業メンバーが辞めたときだけでなく,創業メンバーが死亡した場合も,相続により第三者が株式を取得することになってしまうので,規定しておくことをお勧めいたします。
② 誰が買い取るのか
ア 代表取締役
イ 会社に残る創業メンバー全員
ウ 会社に残る創業メンバーが指定した人物
エ 会社
などが考えられます。
なお,会社が買い取る場合は,会社法上の「自己株式の取得」に該当し,様々な規制が設けられているので, 買い取りが可能かどうか弁護士に相談することをお勧めいたします。
③ 買取価格
ア 無償
イ 株式を取得した際の取得価格
ウ 直近の増資や譲渡事例における譲渡価格
エ 貸借対照表上の純資産額から算出した価格
などが考えられます。
なお,買取には贈与税や譲渡課税所得等の税務上の問題が絡む場合がございますので,弁護士や税理士と相談し,慎重に作成する必要がございます。
⑵ べスティング
「べスティング」とは,一定の時期の経過に応じて株式を保有する権利を与える契約条件のことです。
例えば,在籍期間に応じて,1年で自己保有分の10%,2年で自己保有分の20%の株式を保有することができるという規定が考えられます。
会社への貢献を評価するために設ける条項ですが,社外の人間が株式を持つことになってしまうので,設定するか否かは慎重に判断すべきでしょう。
3 最後に
上記では,創業株主間契約の主たる目的である株式の買い取りについて紹介をしましたが,創業株主間契約では,他にもいろいろな条項が考えられます。
決裂したときの予防だけでなく,創業メンバーの一体性を高める役割も果たしますので,ぜひ締結されることをお勧めいたします。
創業株主間契約について詳細を知りたい方は,この分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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