資本政策の重要性

1 はじめに

 別の記事で創業株主間契約の重要性についての概略を解説いたしましたが,今回は,会社の資本政策の重要性について解説いたします。

 

2 資本政策とは

 資本政策とは,株主資本に関する計画です。具体的には,どのようなタイミングで,株式という形で資金調達するかにつき,計画する必要があります。

 

投資希望者がいたからといって,何も考えずに株式発行による資金調達をした場合,様々な弊害が生じかねません。一度,誤った資本政策を実行してしまうと,後で挽回することは困難です

 

3 株式発行による資金調達の持つ意味

 株主になるということは,会社の重要事項を決定する株主総会で行使することができる議決権を有するということです。

そのため,資本政策を考える上では,「誰が」「いつ」「どれくらい」株式を保有するのかについて慎重に検討しなければなりません。

 誰彼構わず株式を発行すると,経営陣の持ち株比率が低下し,会社の重要事項を決定する際の障害となる可能性があります。

 

4 株主総会の決議要件

 資本政策を考えるにあたっては,株主が,どの程度の株式を保有していればなにができるかを把握することが重要です。

 

 会社法における,株主総会の決議要件を整理すると以下の通りです。

 

議決権比率3分の2以上

→株主総会の特別決議をすることが可能。特殊決議が必要な事項(吸収合併や新設合併契約の承認など)を除いたほとんどのことをコントロールすることができる。

 

議決権比率2分の1以上

→株主総会の通常決議をすることが可能。役員選任や計算書類の承認等が単独で可能に。

 

議決権比率3分の1以上

→株主総会の特別決議を拒否することが可能。会社の重要事項に一定の影響力を及ぼすことができる。

 

議決権比率3分の1未満

→株主総会の議決を拒否することはできないが,株主として取締役への責任追及や株主代表訴訟を提起することができる。

 

 

このように,たとえ少数株主であったとしても,会社に一定程度の影響力を有することにはなるので,誰を株主にするのかは極めて重要なことであり,慎重に判断する必要があります。

 

5 資本政策の考え方

 

資本政策を考える前提として,事業計画や資本計画を考えてみてください。

 

 ビジネスモデルを思いついた場合,

 

まずはそれが事業として成立するか,将来的に発展させていくことができるのか(事業計画),

そして,その事業を始める,継続する,発展させるにあたって,いつどれくらいの資金が必要か(資金計画)

 

 これらを十分に検討する必要があります。

 

 そして,その結果外部資金が必要だと判断した場合には,さらに資金調達の方法を検討する必要があります。

すなわち,①借入によるのか,②出資によるのか(株式発行)です。

そして,②出資の方法をとる場合に,資本政策を検討する必要が生じるのです。

 

 このように,資本政策を考えるにあたっては,将来から逆算して綿密に計画を練る必要があるのです。

 

6 まとめ

 以上の説明は,資本政策の極々基本的な事項です。他にも考慮すべき事項は多数ございます。資本政策を検討するにあたっては,ぜひ専門家に相談されることを強くお勧めします。

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