クレーマーへの対応方法

1.はじめに

 企業活動をしている限り、少なからず、顧客からクレームを受けることがあると思います。

 そのクレームが正当なものであれば、ビジネスを改善させるための契機にもなりますので、客対応を継続すべきでしょう。これに対して、そのクレームが不当なものであれば、それ以上、顧客対応を継続することは、担当者の精神的疲弊や業務への悪影響が懸念されます。

 クレーマーは企業の顧客主義につけ込む傾向がありますので、顧客対応を終了し、法的対応等に切り替えることを検討する必要があります。

 

2.正当なクレームと不当なクレームとの判断のポイント

(1)では、正当なクレームと不当なクレームとの判断のポイントはどこにあるのでしょうか。
 これは、企業側が丁寧な説明や説得を繰り返しているにも関わらず、交渉が堂々巡りになっているか否かが大きなポイントとなります。

 したがって、企業側としては、安易に不当なクレームとして決めつけるのではなく、まずは丁寧な説明や説得をするように心がけてください。紋切り型の説明は顧客をクレーマー化させてしまうおそれがありますので、できる限り丁寧な説明を最低3回はするようにしましょう。なお、弁護士へ依頼する場合等に備えて、必ず交渉記録を残しておくようにしましょう。

 

(2)また、謝ってしまったら後から不利になると誤解されている企業様もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、「謝罪イコール責任の発生」ではありません。
 むしろ、謝罪をすることで、相手が抱いている悪感情を緩和したり、無駄な2次・3次クレームの発生を防ぐといった効果が期待できます。

 

 ただし、謝罪の仕方には注意が必要です。謝罪の意味を明確にして謝罪をすることが重要で、 
法的責任が明らかでないうちに、法的責任を認めるような謝り方はしないようにしてください。
具体的には、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」等といった謝罪の仕方がお勧めです。

 

3.タイプ別によるクレーマーへの対応方法

 一言でクレーマーといっても様々なタイプがあり、その特質が異なりますので、それぞれのタ
イプによって、対応方法を変える必要があります。クレーマーは、大きくわけて4つのタイプに
わけることができます。

① 独善型クレーマー

 独善的な価値観、ロジックをもち、執拗にクレームや不当要求を繰り返すタイプです。自身の有能さを自他ともに認識することを目的としていることが多く、経済合理的には動かない傾向にあります。

 顧客である自分の要求にはすべて応じるべきだと思っていることが多く、無理・不当な要求でも執拗に要求してくる傾向にあります。ネット上へ誹謗中傷の書き込みをしてくることもあります。

 企業の対応としては、このような不当な要求には、丁寧な言葉を使いながら、要求を拒否しましょう。交渉が堂々巡りになった時点で、それ以上の交渉を打ち切り、書面で最終回答をすればよいでしょう。それでも、相手方から交渉の要求があったり、業務妨害的な行為が行われた場合には、交渉の窓口を弁護士へ移管することを検討する必要があります。

 

② 精神型クレーマー

 言動から精神的に問題がありそうなタイプで、挫折感・孤独感・執着心等の心の欠損を埋めることを目的としていることから、クレームの理由は何でもよいことが多いです。
 頻繁に長電話をしてきて、なかなか電話を切らせてくれなかったり、時折意味不明な言動をしたりする傾向にあります。

 企業の対応としては、相手に付き合わずに、本題についてのみ型通りの接客を心がけ、できる限り、関係や接触をもたないようにしましょう。

 

③ 常習型クレーマー

 比較的安価な賠償又は対価を求めるタイプで、一般人に多いです。経済的な要求自体が目的ですので、比較的経済合理的に動く傾向にあります。執拗ですが攻撃性は低く、企業に打撃を与えるような言動に出る可能性は低いです。

 企業の対応としては、丁寧かつ具体的に質問して、事実関係を確認するようにしてください。前例や同業他社の対応を引き合いに出してくることもありますが、相手にせず、今回の事案だけの話をするようにしてください。やがて、しどろもどろになり、あきらめることが多いでしょう。

 なお、安易に金銭等を渡すと高い確率で、再び要求してくることがありますので、そのような対応は絶対にしないでください。 

 

④ 反社会型クレーマー

 経済活動や社会活動を装いながら、企業恐喝や取引を強要してくるタイプで、反社会的団体に属する人に多いです。このタイプも経済的な要求自体が目的ですので、経済合理的に動く傾向にあります。

 調査をしてターゲットを絞り込んできていることが多く、街宣活動やマスコミへの漏洩等、要求を拒絶した場合の報復もまえもって準備していることがあります。

 反社会的勢力への現代社会の厳しい反応からもわかるとおり、不当な要求に屈することは、企業の信用・ブランドに極めて重大な損害を与えるおそれがあります。

 ですので、企業の対応としては、要求を断固拒否し、直ちに、警告の内容証明郵便を送付した、刑事告訴(強要・恐喝・名誉棄損・業務妨害等)することを検討する必要があります。早期に弁護士に依頼されることをお勧めします。

 

4. 場面に応じた具体的な対応方法

 その他、場面に応じた具体的な対応方法としては、次のような方法が考えられますので、参考にしてください。

(1)受付(面会編)

・基本は2名以上での対応
・場所に配慮する(×店頭 ○別室)
・閉じ込められないように、部屋の奥に相手方を座らせる等、座る位置にも配慮する
・面会時間の上限を決めておく
・場合によっては弁護士の存在をちらつかせる
・誠意をもってお見送りを

(2)受付(電話編)

・電話は3コール以内
・基本は折り返し、たらい回しはしない
・復唱する等、正確に記録に残すこと
  
 その他、様々な業種や場面に応じて、対応方法にも工夫が必要です。悪質なクレーマー対応にお困りの経営者の方は、クレーマー対策に詳しい弁護士にご相談ください。

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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