クレーマー・カスハラについて

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問題化しているカスタマーハラスメント

 インターネットや、スマホ、SNSの普及の影響もあり、近時、カスタマーハラスメント(カスハラ)が問題化しています。

 企業側は、口コミなどで悪い評判を書き込まれたり、写真や動画、録音などがSNSで拡散されることを恐れて、強い態度をことができず、顧客の言いなりになってしまう場合があります。

 カスハラの態様としては、不当な要求を伴う「不当クレーム」を行うもののほか、要求などを伴わない「顧客による嫌がらせ」も存在します。

 これらのカスハラは、自身の不満のはけ口やストレス発散を目的としてなされたり、パワハラやセクハラが横行していた時代に社会で活躍していた人が、過去の価値観によって行う場合もあるようです。

 いずれにしろ「不当クレーム」「嫌がらせ」を行う顧客については、態様や程度にもよりますが、民事上は不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うほか、刑事上は暴行罪(刑法208条)、脅迫罪(刑法222条)、恐喝罪(刑法249条)、器物損壊罪(刑法261条)、名誉棄損罪(刑法230条)、強要罪(刑法223条)や業務妨害罪(刑法233条、234条)、不退去罪などの犯罪に該当する可能性があります。

 このため企業の基本的な姿勢としては、不当クレームやカスタマーハラスメントを許すことなく、毅然とした態度により適切な対応を取る必要があります。

 

不当クレームであるかどうか

 顧客からクレームがあった場合、企業側としては、まずそのクレームが「正当クレーム」であるか「不当クレーム」であるかを区別することが非常に重要です。

 正当クレームであれば、企業側は適切に対応する必要があります。一方、不当クレームであれば、要求を一切受け入れることなく拒絶し続ける対応が必要です。

 では、正当クレームと不当クレームはどうやって区別するのでしょうか。

 これについては、クレームの「内容」と「手段・態様」がいすれも正当であれば「正当クレーム」、クレームの「内容」と「手段・態様」のいずれか一方でも不当であれば「不当クレーム」と判断することになります。

クレームの「内容」が不当である例

 まずクレームの「内容」が不当であう場合の例としては、次のようなものがあります。

過大な要求をする
 例えば、5万円の商品やサービスの不備に対して、迷惑料100万円の要求や、高額な代替商品・代替サービスの提供を要求するなど。

正当な理由なく返品要求・代替品の要求をする
 顧客自身が商品を壊したにもかかわらず、返品を求めたり、代替商品の提供を求めるなど。

言いがかりをつけ代金を支払わない・減額を求める
 商品やサービスに問題がないにもかかわらず、些細な不備などをを指摘して、代金を無料にするように求めたり、不当な割引を求めてくるなど。

社長を出せ、上司を出せと要求する
 場合にもよりますが、自身の要求が通らないときに社長や上司を出させて無理な要求を通そうとするなど。正当なクレームであれば、通常は担当者が対応することで足ります。

クレームの「態様・方法」が不当である例

 一方、クレームの「内容・態様」が不当な例としては、次のようなものがあります。

・怒鳴る、大声を出す、乱暴な言葉遣い、騒ぐ

・「お前」「バカ」「頭悪いのか」などの侮辱的発言をする

・「殺すぞ」「こいつをクビにしろ」などの脅迫的な発言をする

・土下座を要求する

・長時間の電話をかける、毎日のように電話で同じ話をする

・会社や店舗、事務所に長時間居座る

・SNSで写真や動画を拡散するなどと言う

 

クレーム対応の手順

 顧客からクレームがあった場合は、①聴取、②調査、③判定(不当クレームかを判断)、④回答、⑤履行の順序で処理をします。

 まずは、顧客からクレームがあった場合、事実関係、顧客の要求などを聞き取ります。また、その顧客の氏名や住所、連絡先も忘れずに聞き取ります。

 次に、顧客から聞き取った事実関係について調査を行います。このとき、企業側の従業員が正確なことを話していない可能性があることも踏まえて、なるべく客観的な資料などを集め、客観的資料と顧客の主張している事実が合致しているかという視点で調査するのが良いでしょう。

 調査が終わった後、顧客の要求が正当なものかどうかを判定します。企業が民事上の責任を負うかという観点で判断します。

 判定の結果、正当なクレームであると判断した場合は、顧客に対して正式に回答を行い、顧客の要求のうち正当な部分について履行します。このとき、場合によっては合意書面や和解書面などを作成することを検討します。

 不当なクレームの場合は、書面等で要求に応じられない旨を回答し、その後、再び顧客が同じような要求をしてきても、同じ回答を繰り返し行うことになります。
 繰り返し拒絶を行うと、顧客側としては裁判などを起こして自分の要求を通さなければならないですが、不当クレームの場合、裁判を起こしてくることはありません。

企業が取るべき対応

 不当クレームには応じずに拒絶する対応を取り続ければ良いということになりますが、実際にクレームに対応する従業員にとっては、精神的な負担が非常に大きい仕事になります。

 このため、企業側としては、独自のカスハラ対応マニュアルを作成して、いざというときの対応を周知しておいたり、企業としての基本的な対応姿勢を従業員に示しておくことが必要でしょう。また、研修などを実施しておくことも従業員の安心感につながります。

 実際に起こったクレームについては、その内容や対応について情報を共有しておくというのも有用でしょう。

 また、担当の従業員1人に任せるのではなく、組織的に対応していくことが非常に大切です。

 企業内部において対応することが難しい場合は、外部の弁護士に委託してクレーム対応にあたってもらうことも一つの選択肢となります。

 クレームでお悩みの方は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。

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