カスタマーハラスメントの対応方法とは
目次
〇はじめに
カスタマーハラスメント(カスハラ)が、深刻な社会問題になっています。カスハラは、従業員に過度な精神的ストレスを生じさせるとともに、通常の業務に支障を生じさせるケースもあります。
こうした社会的背景を踏まえ、令和4年3月に、厚生労働省が、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成しました。そこで、本記事では、この厚労省マニュアルの内容を踏まえながら、事業者としてカスハラに対応する方法等を解説します。
〇カスハラの定義
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客等からのクレームや言動のうち、その要求の内容や手段・態様が社会通念上不相当なものであり、それによって労働者の就業環境が害される行為を指します。具体的には、以下の2つの基準に基づいて判断されます。
①要求内容の妥当性 顧客の要求が事実関係や因果関係に基づいているか、自社に過失があるか、根拠のある要求かを確認します。 ②手段・態様の相当性 顧客の要求内容の妥当性に加えて、その要求を実現するための手段や態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかを確認します。 |
例えば、①要求内容が妥当であっても、②長時間にわたるクレームや暴力的・威圧的な言動は手段・態様が社会通念に反するため、カスハラに該当します。
〇事業者が取り組むべき対策【事前準備編】
事業者としては、平時からカスハラを想定して、以下のような事前準備を行っておくべきです。
(1)基本方針の明確化
事業者は、カスハラに対する基本方針・基本姿勢を明確にし、それを従業員に周知・啓発する必要があります。これによって、従業員がカスハラに対する企業の姿勢を理解し、適切に対応できるようになります。
(2)相談対応体制の整備
従業員がカスハラの被害を受けた際に相談しやすい体制を整備することが重要です。たとえば、相談窓口の設置や、専門の相談員の配置などです。
(3)対応方法・手順の策定
具体的な対応方法や手順を策定し、従業員が迅速かつ適切に対応できるようにします。たとえば、カスハラ発生時の初動対応、エスカレーションの手順、記録の方法などを決めておくべきです。
(4)従業員教育・研修
社内対応ルールについて従業員に教育・研修を行い、全員が共通の認識を持つようにします。これにより、全従業員が一貫した対応を取ることができます。
〇事業者が取り組むべき対策【カスハラ発生時編】
カスハラが実際に発生した場合、事業者としては、以下のような対応を取るのがよいでしょう。
(1)事実関係の確認と対応
カスハラが発生した場合、事実関係を正確に確認し、適切な対応を行います。カスハラ被害者に遭った従業員からの事情聴取は必須です。また、たとえば顧客が主張している内容が「商品に瑕疵がある」というものなら、本当に商品に瑕疵があるのか、客観的な証拠を収集することになります。
確認の結果、不当な要求だと判明した場合は、無理に落としどころを探るのではなく、毅然とした対応を取ることが重要です。
(2)従業員への配慮
被害者となった従業員へのメンタルヘルスケアや適切な配慮を行います。カスハラが繰り返される場合には、従業員一人で対応させるのではなく、複数名あるいは組織で対応するのがよいでしょう。
(3)再発防止策
同様の事案が再発しないようにするための措置を講じます。社内で事例を共有し、定期的にルールを見直していくことが必要です。
〇カスハラ対策を怠った場合
事業者がカスハラ対策を怠り、カスハラが発生しても放置していると、以下のような負の影響が生じます。
(1)従業員の離職
カスハラ被害を直接受ける従業員の精神的な負担は大きく、当該従業員の業務パフォーマンスが低下します。深刻な場合には、当該従業員の健康不良や精神疾患を招き、休職や退職につながる可能性もあります。
(2)事業者の安全配慮義務違反
事業者がカスハラを放置したことによって従業員が精神疾患等に陥った場合、事業者が安全配慮義務違反を理由に、当該従業員から損害賠償を請求されることがあります。実際に損害賠償が認められた裁判例もあります。
(3)事業者のイメージの悪化
カスハラに適切に対応しない事業者は、消費者や社会からの信頼を失い、イメージ悪化、顧客離れにつながる可能性があります。また、それにより、採用活動においても、優秀な人材を確保することが困難になる可能性があります。
〇最後に
以上の通り、カスハラ対策は、事業者にとって必須の取組みといえるでしょう。「カスハラ対策に何から取り組んでよいか分からない」、「カスハラが発生して困っている」という方は、ぜひこの分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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