M&A(基本合意契約)

1.はじめに

 基本合意契約は、LOI(Letter of Intent)、MOU(Memorandum of Understanding)などと呼ばれます。

 M&A案件において、買い手側からの意向表明書が受理され、買い手の絞り込みと重要な条件が決まった場合に締結される契約書です。ただし、絶対に必要なプロセスではなく、省略する場合もあります。

2.法的な性格

 基本合意書は、最終契約に至る途中段階で合意した条件等をまとめたものであり、一部の条項を除き、一般的には法的拘束力は持ちません。例外的に法的拘束力を持たせる項目として、独占交渉権、秘密保持契約、裁判所管轄等があります。一定の日までに最終契約が締結されなかった場合に、一定額の違約金を相手方に支払う義務を負わせる場合もあります。

3.メリット

 買い手候補の何よりのメリットとして、一般的に独占交渉権を与えられることがあります。そのため、買い手側としては安心してDD(デューデリジェンス)費用を負担することができます。

 その他に、売り手買い手双方のメリットとしては、スケジュールの明確化と交渉の過程で合意できた内容の整理が期待できます。

4.内容

 基本合意契約の基本条項としては、具体的には、

 ①取引対象物の特定と売買条件の合意

 ②買収査定

 ③最終契約の締結日

 ④費用負担

 ⑤公表

 ⑥優先交渉権

 ⑦有効期限

 ⑧基本合意書の効力

 ⑨準拠法

 裁判管轄といったものがあげられます。

 日付が関係するものとしては、③⑥⑦があるので、統一するようにしましょう。期間としては、1~3ヶ月程度が目安です。

5.注意点

 ①取引対象物の特定と売買条件の合意

 株式譲渡の場合には、対象株主と株数、事業譲渡の場合には、対象事業を明確にします。譲渡価格は、その決め方、レンジ等を合意しておきます。DDで問題点が発見された場合に備えて、売買価格の調整を行う旨を規定することが多いです。

 ②引継ぎ条件等

 役員・従業員の引継ぎと雇用条件を合意しておく必要があります。オーナーの引継ぎについては、期間と条件を定めます。

 ③適時開示

 当事者が上場企業の場合、基本合意の締結が「重要事実の決定」に該当する場合は、証券取引所の適時開示ルールにより公表しなければなりません。基本合意書に代えて簡易な覚書などを作成することもあります。

 証券取引所に適時開示の対象か否かを確認するとよいでしょう。 

 M&Aに関してお悩みの経営者の方がいらっしゃいましたら、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

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発行日:2021.03.04

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