仲介(媒介)契約
目次
1.仲介(媒介)契約とは
仲介(媒介)契約とは、売主(又は買主)と宅地建物取引業者との間で締結する契約のことを言います。
「不動産を売ろう!(又は買おう!)」と思った場合、素人が自分で買主を探したり、売りに出されている物件を探すことは非常に困難です。そこで、多くの人が、不動産会社等の宅地建物取引業者に仲介を依頼することと思います。この場合に、売主(又は買主)と宅地建物取引業者との間で、仲介の内容について取決め(契約)をすることになりますが、これを仲介(媒介)契約というのです。
そして、宅建業法34条2項で、「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。」とされているとおり、仲介(媒介)契約においては、契約書を作成することが義務付けられています。
また、契約書の内容には、一定の決められた事項を記載することも義務付けられています。この点については、国土交通省大臣が標準媒介契約約款を告示で定めており、実務においては、この標準媒介契約約款を基にして仲介(媒介)契約書が作成されることが一般的です。標準媒介契約約款については、国土交通省のホームページで見ることができますので、ご参照ください。
2.仲介(媒介)契約におけるポイントは?
では、仲介(媒介)契約書において、注意すべきポイントとはどのような点でしょうか?以下、主な点について述べていきます。
(1)仲介(媒介)契約の形態
仲介(媒介)契約は、「他の業者に重ねて仲介を依頼できるか否か」、「依頼者自らが見つけた相手と売買(交換)契約を締結することができるか否か」によって、以下で述べるように、3つのタイプにわけることができます。契約をする場合には、自分の需要や目的に従って、どのタイプが適しているのか、良く考えて選択することをお勧めします。
① 専属専任媒介契約
これが、最も縛りの強いタイプです。このタイプの契約においては、他の業者に重ねて仲介を依頼することはできません。また、依頼者が自ら見つけた相手と契約を締結することもできません。
その代わり、宅地建物取引業者から、1週間に1回以上、業務状況の報告を受けることができますし、仲介(媒介)契約を締結した翌日から5日以内に指定流通機構に登録してもらうことができます。
ちなみに、指定流通機構とは、国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営する情報ネットワークシステムで、不動産情報の交換や成立した契約の集約や取引情報の提供を行っているものです。早期に広い範囲に情報を流すことで、早期の売買等の契約の成立を図ることができます。
② 専任媒介契約
このタイプの契約では、他の宅地建物取引業者に重ねて仲介を依頼することはできませんが、依頼者が自ら見つけてきた相手と売買等の契約を締結することはできます。
もっとも、この場合には、自ら取引相手を見つけたことを宅地建物取引業者に通知しなければなりませんし、それまでに宅地建物取引業者が仲介業務を行ったことにより生じた費用については請求される可能性がありますので、注意してください。
このタイプにおいては、宅地建物取引業者は、2週間に1回以上、業務の状況を報告する義務を負い、仲介(媒介)契約を締結した日の翌日から7日以内に指定流通機関に登録する義務を負います。
③ 一般媒介契約
これが最も自由度の高いタイプの契約です。このタイプにおいては、他の宅地建物取引業者に重ねて仲介を依頼することができますし、自ら見つけた相手と売買等の契約をすることもできます。
その代わり、宅地建物取引業者は原則として指定流通機構に登録する義務はなく、業務の状況を報告する義務もありません(別途、特約で定めた場合は別ですが)。
(2)その他のポイント
その他、仲介(媒介)契約書においては、下記の事項を明記することが求められています。いずれも、仲介(媒介)契約の基本的な内容となるものですので、契約締結時には、これらの点に誤解がないかを良く確認する必要があります。
① 目的物件の内容、媒介価格等の条件
目的たる物件の所在や地番、建物の種類や構造等、物件を特定するために必要な情報を明記する必要があります。買主として依頼する場合には、希望する物件の条件を明記します。
また、希望する売却(買取り)価格も明記する必要があります。その他にも、売買にあたっての条件等があれば、それも明記します。
② 仲介手数料の額・支払時期・支払方法
仲介(媒介)により、売買等の契約が成立した際に、宅地建物取引業者に支払う仲介手数料(報酬)や支払時期・方法についても、予め契約書に明記しておく必要があります。手数料の額については、国土交通省の告示により、上限が決められており、宅地建物取引業者は、この上限を超えた額の手数料を受け取ることはできません。
また、仲介手数料はあくまでも成功報酬なので、売買等の契約が成立して初めて請求できるものである点にも注意が必要です。
③ 契約の有効期間
仲介(媒介)契約の有効期間も明記する必要があります。この点、先ほどご紹介した3つのタイプの契約のうち、専属専任媒介契約と専任媒介契約は、3ヶ月を超える有効期間を定めることはできません。もっとも、有効期間満了時に依頼者からの申出により、3ヶ月以内の範囲で更新することができます。
一般媒介契約においては、上記のような有効期間について法的制限はありませんが、国土交通大臣が告示した標準媒介契約約款においては、3ヶ月を超えない範囲で決定することとされています。
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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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