業種別顧問プラン(介護・福祉)
目次
介護業界の抱える問題
日本は超少子高齢化社会となり、これからますます高齢者が増え、要介護者が増加すると予想されます。
その一方で、介護業界は、賃金が安く激務というイメージが強いことから、深刻な人手不足の問題が慢性化しています。
また、介護報酬の改定、異業種からの新規参入・M&Aの増加など、介護業界を取り巻く環境も激変しています。
介護施設では、介護保険法に基づく人員基準によりシフトを組んでおり、多くが変形労働時間制をとっています。また、職員の離職率が非常に高い、他の産業と比較して非常に賃金額が低い、非正規職員に大きく依存しているなどの傾向があります。
また、不正受給の問題、腰痛や転倒災害を中心とした労災事故が多いのも特徴です。
第12次労働災害防止計画に、初めて介護福祉施設が盛り込まれ、労働者に対する安全衛生教育の徹底、腰痛の健康診断の普及・徹底の指導等、労働基準監督署による臨検監督等の訪問の機会が増加することが予想されます。
離職率が高いことから、労働基準監督署への申告トラブルも多く、内部告発等により、不正受給が発覚することもあります。賃金等に関する送検事案は許可取り消し対象となりますので、最大限の注意が必要です。M&Aの際には経営監査だけでなく、労務監査も必要となるでしょう。
典型的なトラブル例
介護業界でよくあるトラブルとしては、以下のようなものがあげられます。
利用者とのトラブル
利用者や家族からの苦情
利用者から、介護職員の対応に対する苦情や、事業所やサービスへの苦情がある場合があります。これらの苦情については、正当なものもあれば、不当なものもあるかもしれません。
社会福祉法には、高齢者福祉サービス事業者を含む福祉事業者に対して、利用者等からの苦情について適切に解決するよう努める義務が定められています(社会福祉法82条)。
これを受けて厚生労働省は、苦情解決の仕組みの指針を示しており、具体的な苦情解決体制の内容が示されています(「社会福祉事業の経営者による福祉サービスに関する苦情解決の仕組みの指針について」)
また高齢者虐待防止法では、介護保険対象事業について苦情処理体制の整備義務が定められています(同条20条)。
このため、介護事業者としては厚生労働省の指針などを参考にしながら、苦情を受け付け、解決する体制を整えておく必要があります。
介護事故
介護事故には、転倒事故、誤嚥、転落事故、褥瘡、無断外出・徘徊なとがあります。このうち最も多いのが転倒事故です。
介護事故が起こった場合、介護事業者は、①許認可の取消しといった行政上の責任、②業務上過失致死傷罪などの刑事上の責任、③損害賠償などの民事上の責任を負う可能性があります。
このうち最も問題となるのが民事上の責任です。介護事業者は、利用者との施設利用契約に基づき、利用者の生命・身体・財産の安全に配慮しながらサービスを提供しなければならない安全配慮義務を負っています。
このため、例えば、日頃の様子から利用者が転倒することが予見されており、転倒を避けるための具体的な方法があったにもかかわらず、それをしなかった結果、利用者が転倒して骨折してしまったような場合は、介護事業者は、利用者に対して損害賠償義務を負うことがあります。
損害賠償の金額は、そのケースに応じて異なりますが、治療費、入院費、通院交通費、慰謝料等があり、死亡事故などの場合は高額になる場合があります。
利用者による暴力・ハラスメント
利用者の方が、他の利用者や、介護職員に暴力を振るったり、ハラスメントを行ったりする場合があります。
施設を運営する事業者は、施設の利用者に対し、利用者の安全に配慮しながらサービスを提供しなければならないという安全配慮義務を負っています。
このため、暴力やハラスメントが行われることが十分予想される状況であったのに、何らの対応も取っていなかった等、事業者がこの安全配慮義務を怠った結果、他の利用者に損害が生じたといえる場合は、債務不履行に基づく損害賠償義務を負う余地があります。
また、施設を運営する事業者は、介護職員に対して、職場における従業員の安全と健康を確保する安全配慮義務を負っています。このため、この場合も同様に、事業者が職員に対する安全配慮義務を行った結果、職員に損害が生じた場合は、損害義務を負うことになります。
利用料金の滞納・未払い
利用者が利用料金の支払いを滞納する場合があります。滞納が続く場合は、場合によっては利用者に施設から退去してもらわなければなりませんが、法的には可能かもしれませんが、介護サービスが必要な利用者を強制的に退去させることは現実的には難しいかもしれません。
このため利用料金の滞納がある場合は、保証人に連絡するなど早めに対応して回収する必要があります。
職員との間のトラブル
ハラスメント
介護職員が、他の職員や上司から、セクハラやパワハラを受けることがあります。介護事業者は、介護職員に対して安全配慮義務に基づき、パワハラやセクハラを防止すべき義務を負っています。
パワハラに当たる行為としては、①身体的な攻撃(暴力や傷害等)、②精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、暴言等)、③人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)、④過大な要求(遂行不可能なことの強制等)、⑤過小な要求(仕事を与えない等)、⑥私的なことへの過度な立ち入り等があります。
セクハラに当たる行為としては、①性的な関係を要求して断られたため、解雇や不利益な配置転換や降格処分をするなど労働条件について不利益を受けるもの、②腰や胸等に触って苦痛を感じさせたり、卑猥な言動をしたり、職場に卑猥なポスターを掲示するもの等があります。
このため、介護事業者としては、ハラスメント防止のために、就業規則や服務規律、社内報などで厳正な措置を取ることを明示したり、研修を受けさせたり、苦情相談窓口を設置する等、適切な対応を取る必要があります。
従業員がパワハラやセクハラを行っていたとしても、介護事業者は、安全配慮義務違反による債務不履行責任や使用者責任(民法715条1項)により損害賠償義務を負う場合があります。
また、介護現場では、利用者から介護職員に対するセクハラが大きな問題となっています。介護事業者は、介護職員に対して安全配慮義務を負っていますので、職員が利用者からセクハラを受けた場合には、担当を変更したり、利用者に対して注意するなどして再発防止についての対応を取る必要があります。
問題社員・解雇
介護職員について、利用者に対して高齢者虐待を行ったり、利用者に対する言葉遣いや態度が悪くてクレームがある等、職員に問題がある場合があります。
このような場合、程度や内容にもよりますが、職員に対して指導や研修を行っても改善されない場合は、職員を処分したり、場合によっては解雇することを検討することになります。
ですが、一般的に解雇が認められるためのハードルは高いため、専門家と相談しながら慎重に手続を進めていく必要があります。
残業代請求・未払賃金請求
また退職した職員から、退職後に未払残業代請求をされる場合もあります。また、場合によっては、従業員が労働基準監督署に申告して、労働基準監督署が立ち入り調査(臨検)に来る場合もあります。
当事務所の介護事業者向け顧問サービス
当事務所では、以下について、顧問料金に応じた時間内で、以下のご相談に対応させていただきます。
【介護事業者向けサービスの例】
・利用者とのトラブル(苦情、介護事故、ハラスメント等)
・スタッフとの労務問題(問題社員、ハラスメント、残業代等)
・労働基準監督署による臨検に対する対応アドバイス
・各種法律の調査、アドバイス
・介護施設内の整備体制の構築
・広告宣伝のチェック・事業承継問題、M&Aなど
その他、クレーム対応、介護事故等に対するマニュアル作成、研修などご要望に応じますが、基本的に顧問料金とは別料金となります。詳しくはお問合せください。
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