非正規社員に賞与や退職金は払わなくても良い?(同一労働同一賃金の原則) ご存じの方も多いと思いますが、今月
M&A(株式譲渡と事業譲渡)
1.はじめに
中小企業のM&Aでよく利用されるスキームとして、株式譲渡と事業譲渡があります。
株式譲渡とは、いわゆる法人売買であり、対象会社の株式を売買の対象とする結果、すべての資産、負債、取引上の契約等をそのまま承継することになります。
事業譲渡とは、一部の事業買収であり、対象会社の欲しい事業だけを現金等で買収することになります。
2.メリットとデメリット
株式譲渡と事業譲渡にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
株式譲渡の最大のメリットは、行政上の許認可と取引上の契約等が原則として承継されることにあります。特に、旅館業や病院等、行政上の許認可の取得が面倒な業種を対象とする場合にはメリットが大きいでしょう。また、取引上の契約等の更改が不要である等、手続きが煩雑にならないことは大変便利であると言えます(ただし、Change Of Control 条項がないことが前提)。その他にも、株主総会や債権者保護手続が不要等、法的な手続きが簡素であることや、売り手であるオーナーが現金を手に入れることができること等もメリットとして挙げられます。
株式譲渡の最大のデメリットは、対象会社の簿外債務や偶発債務を引き継いでしまうおそれがあることです。そのため、デューデリジェンス(DD)の実施が欠かせません。
これに対して、事業譲渡のメリットとデメリットは、株式譲渡のメリットとデメリットとおよそ逆のことがいえます。
事業譲渡のメリットは、対象会社の簿外債務や偶発債務を引き継ぐおそれがないことですが、その一方で、行政上の許認可や取引上の契約等を改めて取得・契約する必要があります。
その他にも事業譲渡のデメリットとして、売却代金は対象会社が取得し、オーナーが直接取得することができないことや消費税・印紙税が課されるという点も見逃せません。税務面では、事業譲渡より株式譲渡の方が税率の面で有利になる傾向にあります。
株式譲渡と事業譲渡の上記のメリット・デメリットを考慮し、その中間的なスキームとして、対象会社の対象事業を会社分割したうえで、その会社の株式譲渡を行う方法もあります。
3.まとめ
中小企業のM&Aを行うにあたって、株式譲渡と事業譲渡のいずれを選択するかは、対象企業の財務状況や親会社と組織の統合をスピーディに行うのか、対象会社の経営方針を維持するのか等、M&Aの目的や、財務状況、経営・組織に及ぼす影響等といった経営戦略を考慮しながら検討されるとよいでしょう。
M&Aに関してお悩みの経営者の方がいらっしゃいましたら、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
最新記事 by 弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ (全て見る)
- “働きがいも経済成長も“を目指す企業さまを対象に「SDGs労務コンサルティングプラン」をリリース! - 2022年10月28日
- ベンチャー法務 ~知的財産 - 商標編~ - 2021年12月28日
- 法律事務所瀬合パートナーズ通信 - 2021年3月4日