Q.医師法21条に基づく,医師による警察署への異状死体の届出について
質問
入院中の患者様がお亡くなりになった際,ご遺族の方から,警察署に届け出てほしいとのご要望があることがしばしばあります。このような場合,病院や医師としては,どのように対応すべきなのでしょうか。必ず異状死体として届け出なければ,医師法第21条違反になってしまうのでしょうか。
回答
死因等を判定するために死体の外表を検査し,異状がなければ,所轄警察署に届け出る必要はございません。ご遺族の方には,患者様の死亡につき警察署に届け出ないことについてご納得いただくために,死体を検案した結果判定できた死因等について丁寧にご説明いただくことが望ましいです。
ご指摘のとおり,医師法第21条は,医師に対し,死体を検案して異状があると認めたときは,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと定めています。これに違反した者には,50万円以下の罰金が科されます(医師法第33条の2)。
医師法第21条については,厚生労働省医政局医事課長が,平成31年2月8日付通知(医政医発0208第3号)において,「医師が死体を検案するに当たっては,死体外表面に異常所見を認めない場合であっても,死体が発見されるに至ったいきさつ,死体発見場所,状況等諸般の事情を考慮し,異状を認める場合には,医師法第21条に基づき,所轄警察署に届け出ること。」との解釈を示しています。
この通知は,医師法第21条の解釈として,死体の異状の判断に際し,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること以上に,積極的な調査義務を課すものではございません。すなわち,特に診療中の患者が死亡した場合,当該医師は,上述のような「死体が発見されるに至ったいきさつ,死体発見場所,状況等諸般の事情」を既に知っているでしょうから,死体の外表を見る際に,これらの事情を考慮すべきであるということを意味しています。
例えば,診療中の患者が,診療を受けている当該疾病によって死亡したような場合は,通常,異状死体にはあたりません。他方,外表に異状がなくとも普通の状態とは異なる死であることが明らかな死体を発見した場合にまで,届出義務が免除されるとはいえないでしょう。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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