医療法人の運営
1 はじめに
医療法人とは、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団」のことをいいます(医療法39条)。実際の医療法人の多くは社団たる医療法人です。社団たる医療法人は、さらに、出資持分のある医療法人と出資持分のない医療法人に分類されますが、現在、出資持分のある医療法人については新たに設立することはできなくなっていますので、この記事では、出資持分のない社団たる医療法人を念頭において、その運営について解説していきます。
2 医療法人の機関
(1) 機関の種類
医療法人には、最高意思決定機関である社員から構成される社員総会、業務執行機関である理事から構成される理事会、監査機関である監事という3つの機関があります。分かりやすく株式会社でいうと、社員総会が株主総会、理事会が取締役会、監事が監査役に相当します。
(2) 社員総会
医療法人の理事長は、年2回以上、定款で定める時期に定時社員総会を開かなければなりません。また、理事長は、必要があると認めるときは、いつでも臨時社員総会を招集することができます。
社員総会で決議をすることができるのは、法に規定する事項及び定款で定めた事項です。代表的なものは、理事及び監事の選任及び解任、定款の変更、基本財産の設定および処分、毎事業年度の事業計画の決定又は変更、収支予算及び決算の決定又は変更、重要な資産の処分、借入金額の最高限度の決定、社員の入社及び除名、解散等です。
決議は、社員総会の招集通知によりあらかじめ通知した事項についてのみ行うことができ、社員は各自1個の議決権を有します。
(3) 理事会
理事会は、理事で構成される医療法人の業務執行機関です。理事会は少なくとも3か月に1回開催することが必要ですが、定款で年2回の開催と定めることも認められています。
理事会で決定すべき事項は、重要な資産の処分又は譲受け、多額の借財、重要な役割を担う職員の選任及び解任、従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止、医療法人に対する役員等の損害賠償責任の免除等です。
(4) 監事
監事は、理事会に出席する義務があり、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません。
監事の主な業務は、医療法人の業務や財産を監査し、その内容について報告をすることです。
3 社員・役員
(1) 社員
社員は一人につき一議決権を有します。また、社員総会が合議体であることから、3人以上の社員が必要であるとされています。
社員は社員総会において法人運営の重要事項について議決権を行使することから、実際に法人の意思決定に参画できない者を名目的に選任することは適当ではありません。また、社員になるにも社員総会での承認が必要となりますので、誰でもいつでもなれるというものでもないのです。
(2) 理事
医療法人の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する必要があります。この趣旨は、医師又は歯科医師でない者の実質的な支配下にある医療法人において、医学的知識の欠落に起因し問題が引き起こされるような事態を未然に防ぐという点にあります。
理事長は、理事による互選によって選出され、医療法人を代表することとなります。
(3) 監事
上述したように、監事は、医療法人の業務と財産の状況を監査し、監査報告書を作成し、社員総会や理事(理事会)に提出することが求められます。
監事は原則として1人以上で、社員総会で選任されますが、やはり監査を行うという職務の性質から、医療法人の理事やその親族、従業員等の利害関係者から選ぶことはできませんので注意が必要です。
4 最後に
以上、医療法人の運営について解説しました。株式会社と似て非なる医療法人ならではの規制や注意すべきポイントなどもありますし、運営していくなかでご不明点や手続き漏れがないが、ご不安なことも多いでしょう。
弊所では、医療法人の運営について、法的な観点からアドバイスさせていただき、より安心して運営していただくことが可能となるお手伝いをさせていただきます。
医療法人の運営でお悩みの方は、是非一度ご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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