医療法人の種類

1 はじめに

 医療法人を設立したいけど、いざ調べてみると種類がいくつかあって、どれが適切な形態なのか分からない・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 本稿では、医療法人にどのような種類があるのか、それぞれについてどのような特徴があるのかといった点を中心に解説していきます。

 

2 医療法人とは

 医療法人とは、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団」のことをいいます(医療法39条1項)。
 この定義からも分かるように、医療法人には、社団たる医療法人と財団たる医療法人があり、現在設立されている医療法人のほぼ全てが社団たる医療法人です。厚生労働省ホームページ(医療法人・医業経営のホームページ|厚生労働省 (mhlw.go.jp))の統計データによると、令和5年時点において、医療法人総数が5万8005件のうち、約99.3%にあたる5万7643件が社団たる医療法人となっています。
 社団たる医療法人が、一定の目的のもとに結合した社員によって組織される団体からなる医療法人のことをいうことに対して、財団たる医療法人は、一定の目的のもとで拠出された財産からなる医療法人のことをいいます。平成18年(2006年)法律84号の医療法改正により、解散の際の残余財産については、その帰属すべき者は、国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であって厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるようにしなければならなくなったため(医療法44条5項)、財団たる医療法人において、理事会等で処分方法を自由に決めることはできなくなってしまいました。また、財団たる医療法人においては、金銭その他の資産の寄付行為によって設立されるため、出資持分は存在しません。

 

3 出資持分の有無

 社団たる医療法人は、出資持分のない医療法人出資持分のある医療法人に分けられます。
 出資持分とは、社員が出資者となり、その社員が退社する際や法人を解散する際に出資したものの払戻しを受けられるというもので、株式会社における株式のようなものです。

(1) 出資持分のない医療法人

 先に述べた医療法の改正により、現在は出資持分のある医療法人を設立することはできなくなりました。そのため、医療法人の設立の際には、財産を出資するのではなく、拠出するということになり、解散時の残余財産は拠出者に返ってきません
 出資持分のない医療法人の一類型として、法人の活動の原資となる資金の調達手段として、定款の定めるところにより、基金制度を採用した医療法人(基金拠出型法人などと呼ばれることもあります。)があります。これを採用した場合には、医療法人は、清算時に拠出者への返還義務を負います。拠出者は、医療法人に対する劣後債権に類似した権利を有することになるに過ぎないものの、単純な拠出型よりは良いとして、この形態が一般的となっています。

(2) 出資持分のある医療法人

 医療法の改正前には、出資割合に応じて退社の際や解散の際に残余財産の分配を受けることができる出資持分のある社団たる医療法人を設立することができました。現在も、これらの医療法人は、既存のものに限って当分存続する旨の経過措置がとられています経過措置型医療法人とも呼ばれます)。

 

4 その他の分類

 これまでに解説した類型の他にも、承認や認定を必要とするものがあります。

(1) 特定医療法人

 租税特別措置法第67条の2第1項に規定する特定の医療法人です。社団か財団かの制限はありませんが、社団たる医療法人の場合には、出資持分のない医療法人であることが必要です
 承認の要件は厳格ですが、国税庁長官の承認を得られれば、法人税の軽減税率が適用されるなど、税制上の優遇措置を受けることができます

(2) 社会医療法人

 医療法人のうち、医療法第42条の2第1項各号に掲げる要件(役員における同族関係者の割合、救急医療等の確保等)に該当するものとして、政令で定めるところにより都道府県知事の認定を受けたものをいいます。特定医療法人と同様に、社団か財団かの制限はありませんが、出資持分のない医療法人であることが必要です
 社会医療法人の認定要件は厳格ですが、その認定を受けると、本来業務から生じる所得について法人税が非課税になるとともに、直接救急医療等確保事業に供する資産について固定資産税及び都市計画税が非課税になるなど、税制上の優遇措置を受けることができます

 

5 まとめ

 本稿では、医療法人の種類やそれぞれの特徴をご紹介しました。
 新しく医療法人を設立したい方にとっては、どの形が一番希望に適しているのか、それぞれの種類について、必要な手続きや準備は何があるのかなど、お困りのことは多いかと思います。既に医療法人を運営されている場合でも、現在の運営が法律改正に沿っているのか、解散時にはどのように処理されるのかなど、ご不安な点もあるかと存じます。弊所はご相談のみのご利用も可能ですので、一度、医療法人に詳しい弁護士に相談してみられてはいかがでしょうか。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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