医療法人の解散
目次
1 はじめに
医療法人が解散する事由は様々ですが、解散事由によって、解散の手続が異なります。ここでは、まず、解散事由について説明したうえ、解散の手続について説明します。
2 医療法人の解散事由
医療法人の解散事由は、以下のとおり、7つあります(医療法55条1項、3項)。
① 定款又は寄附行為をもって定めた解散事由の発生
② 目的たる業務の成功の不能
③ 社員総会の決議(社団たる医療法人のみ)
④ 他の医療法人との合併
⑤ 社員の欠乏(社団たる医療法人のみ)
⑥ 破産手続開始の決定
⑦ 設立認可の取消し
以下、詳しく見ていきます。
(1) 定款又は寄附行為をもって定めた解散事由の発生
社団たる医療法人は定款、財団たる医療法人は寄附行為をもって定めた解散事由が発生すると、医療法人は解散します。
(2) 目的たる業務の成功の不能
医療法人が定めた目標を達成することが不可能となったことは、医療法人の解散事由となります。「目的たる業務の成功の不能」に当たるかどうかは、社会通念によって判断されます。
(3) 社員総会の決議(社団たる医療法人のみ)
社団たる医療法人は、総社員の4分の3以上の賛成により、解散の決議をすることができます。
(4) 他の医療法人との合併
他の医療法人と合併し、合併により当該医療法人が消滅する場合は、当該両法人は解散することになります。
(5) 社員の欠乏(社団たる医療法人のみ)
社団たる医療法人は、社員の死亡や代謝によって社員が一人もいなくなった場合には解散することになります。
(6) 破産手続開始の決定
医療法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合(債務超過の場合)、裁判所は、理事もしくは債権者の申立てにより、または職権で、破産手続開始の決定をし、この場合、解散することになります。
(7) 設立認可の取消し
医療法人の設立の認可が取り消されると解散することになります。
3 医療法人の解散手続
(1) 認可
目的たる業務の成功の不能または社員総会の決議による解散の場合、解散には都道府県知事の認可が必要です(医療法55条6項)。
都道府県知事は、認可をする処分または認可をしない処分をするにあたっては、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聞かなければなりません(同条7項)。
また、都道府県知事は、認可をしない処分をするにあたっては、医療法人に弁明をする機会を与えなければなりません(同法67条1項)。
(2) 登記
医療法人が解散したときは、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、解散の登記をしなければなりません(組合等登記令7条)。
(3) 届出
清算人は、定款又は寄附行為をもって定めた解散事由の発生または社員の欠乏によって医療法人が解散した場合には、都道府県知事にその旨を届け出なければなりません(医療法55条8項)。
(4) 清算の手続
解散した医療法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまでは、なお存続するものとみなされます(同法56条の2)。
この場合、合併または破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となります(同法56条の3本文)。ただし、定款もしくは寄附行為により、または社員総会において理事以外の者を選任することもできます(同条ただし書き)。
清算人の職務は、次のとおりです(同法56条の7)。
①現務の結了
②債権の取立て及び債務の弁済
③残余財産の引渡し
①現務の結了とは、解散した当時、終了していない事務を終了させることです。
②債務を弁済するにあたり、清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の広告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならず、この場合、その期間は、二月を下ることはできません(同法56条の8第1項)。判明している債権者がいる場合には、清算人は、各別にその申出の催告をしなければなりません(同条第3項)。
③残余財産の引渡しは、定款又は寄附行為の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属し、帰属すべき者がいない場合、国庫に帰属します(同法56条)。
清算が結了したときは、清算人は、その旨を都道府県知事に届け出なければならず(同法56条の11)、清算結了の日から2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、清算結了の登記をしなければなりません(組合等登記令10条)。
4 まとめ
このように、医療法人の解散には、その解散事由により、順守すべき手続が異なることから、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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