No.1表示を行う際の景表法上の留意点

1 はじめに

 「お客様満足度No.1」、「地域トップの合格者数」、「販売実績第1位」のようなNo.1表示は、他の商品や競争事業者と差別化するための表示として、よく用いられます。しかし、No.1という明確な数値指標であるがゆえに、客観性・正確性を欠く場合には、不当表示として景品表示法違反となるおそれがあります。
 そこで、本記事では、No.1表示を行う際の景品表示法上の留意点について解説します。

 

2 適正なNo.1表示のための要件

 No.1表示については、公正取引委員会事務総局がまとめた「No.1表示に関する実態調査報告書」が大変参考になります。
 この報告書によれば、No.1表示が不当表示とならないためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
②調査結果を正確かつ適正に引用していること

 

3 ①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること

(1)客観的な調査とは

 客観的な調査といえるためには、以下の㋐又は㋑を満たす必要があります。

㋐当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること
㋑社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること

 ㋑の「社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法」が具体的にどのようなものであるかは、表示の内容、商品等の特性、関連分野の専門家が妥当と判断するか否かなどを総合的に勘案して判断されます。

(2)客観的な調査とはいえない例

 以下のような場合は、客観的な調査とはいえず、このような調査に基づくNo.1表示が不当表示となるおそれがあります。

・調査対象者が無作為に抽出されていない場合
・統計的に客観性が十分確保されるほど、調査対象者数が多くない場合
・自社に有利になるような調査項目を設定する等、調査方法の公平性を欠く場合

 

4 ②調査結果を正確かつ適正に引用していること

(1)正確かつ適正な引用のポイント

 客観的な調査を行っていても、実際の表示物におけるNo.1表示が示す内容と、根拠となる調査結果との間に乖離がある場合は、景品表示法上問題となります。そのため、No.1表示を行う際には、調査結果を正確かつ適正に引用する必要があります。正確かつ適正な引用のためには、商品等の範囲地理的範囲調査の期間・時点調査の出典という4つのポイントを意識すると良いでしょう。

(2)商品等の範囲

 調査対象になった商品等の範囲よりも、No.1表示から一般消費者が認識する商品等の範囲の方が広くならないように注意する必要があります。

〈例〉
通信販売される日焼け止め部門で第1位であったにもかかわらず、「お客様満足度 日焼け止め部門第1位」という表示をする場合
対面販売も含めて第1位であるかのような印象を与えるため、不当表示にあたる可能性があります。

 商品等の範囲について業界内に基準がある場合は、その基準に従うようにしてください。その基準が一般消費者に知られていない場合や、そもそも基準がない場合は、どの範囲の商品等を指しているのか、説明を加える必要があります。

(3)地理的範囲

 調査対象になった地理的範囲よりも、No.1表示から一般消費者が認識する地理的範囲の方が広くならないように注意する必要があります。

〈例〉
ある中学校区でA高校への合格者数が第1位であったにもかかわらず、「A高校合格者数No.1」という表示をする場合
A高校への合格者数が全国で第1位であるかのような印象を与えるため、不当表示にあたる可能性があります。

 調査対象になった地域を、都道府県や市町村、校区等に基づいて明瞭に表示するようにしてください。

(4)調査の期間・時点

 直近の調査ではNo.1ではなかったにもかかわらず、過去の調査結果を表示することで、現在もNo.1だと一般消費者に誤認させないよう注意する必要があります。

〈例〉
4年前から2年前までの調査で第1位であったが直近2年間は第1位でない場合に、「3年連続第1位」という表示をする場合
現在も第1位であるかのような印象を与えるため、不当表示にあたる可能性があります。

 No.1表示は、できるかぎり直近の調査結果に基づいて行うようにしてください。過去の調査結果に基づいてNo.1表示をする場合は、いつ時点の調査結果に基づく表示なのかを明示するようにしてください。

(5)調査の出典

 調査の出典を具体的かつ明瞭に示す必要があります。どのような調査でNo.1だったのか、調査会社名や調査名を明示しましょう。

〈例〉
ウェブサイトのイメージ調査の結果が第1位であったにもかかわらず、「お客様満足度第1位」という表示を行う場合
実際にその商品等を利用した人に対する調査が行われ、その商品等の満足度が第1位であったのだろうという印象を与えるため、不当表示にあたる可能性があります。

 No.1表示をするためだけに、結果ありきの調査を行う悪質なリサーチ会社も存在しますので、ご注意ください。

 

5 公正競争規約におけるNo.1表示の規制

 業界の自主ルールである公正競争規約の中には、No.1表示に関する規制を設けているものがあります。たとえば、ビールの表示に関する公正競争規約では、客観的事実に基づく具体的数値または根拠なしに「第1位」等の表示をすることを禁止しています。公正競争規約が存在する商品等のNo.1表示については、公正競争規約の内容も確認するようにしてください。

 

6 まとめ

 No.1表示は、消費者への訴求力が高い一方、その適切な根拠があるかないかがはっきりしています。そのため、表示の仕方を誤ると、たちまち不当表示として景品表示法違反となってしまいます。
 「No.1表示を用いた広告を作成しているが、この表示で問題ないか不安だ」、「No.1表示のためにどのような調査をすればよいか分からない」という方は、ぜひ一度、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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