広告における不当表示

1 不当表示の3類型

景品表示法が禁止している「不当な表示」は,以下の3類型です。

(1)優良誤認表示(法5条1号)

1つ目は,商品やサービスの内容に関するもので,優良誤認表示と呼ばれる類型です。優良誤認表示とは,商品やサービスの内容について,実際のものよりも著しく優良又は他社のものよりも著しく優良であることを示す表示のことです。

 優良誤認表示の例 
◎マフラーの広告で,実際にはカシミヤがほとんど原材料に含まれていないにもかかわらず,素材について「カシミヤ50%」と表示した場合
◎予備校の合格実績広告で,実際には他社と異なる方法で数値化し,適正な比較をしていないにもかかわらず,「大学合格実績ナンバー1」であるかのように表示した場合

優良誤認表示については,後述する不実証広告規制が重要になります。

(2)有利誤認表示(法5条2号)

2つ目は,商品やサービスの価格その他取引条件に関するもので,「有利誤認表示」と呼ばれる類型です。有利誤認表示とは,商品やサービスの価格,数量,アフターサービスその他取引条件について,実際のもの又は競合他社のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示のことです。

〈 有利誤認表示の例 
◎大部分の商品が3割引ではないにも関わらず,チラシ広告に「全商品3割引」と表示している場合
◎実際には,自社に不利となる他社の割引サービスを除外した料金比較であるにもかかわらず,あたかも,自社が最も安いかのように表示

有利誤認表示については,二重価格表示がよく問題となります。二重価格表示については,こちらの記事で詳しく解説しています。

(3)その他内閣総理大臣が指定する表示(法5条3号)

上記(1),(2)ではカバーしきれないものの,一般消費者の選択を阻害する恐れがある表示については,内閣総理大臣が指定し,禁止することになっています。令和4年6月時点で,内閣総理大臣が指定しているものは,次の6種類です。

◎無果汁の清涼飲料水等についての表示
◎商品の原産国に関する不当な表示
◎消費者信用の融資費用に関する不当な表示
◎不動産のおとり広告に関する表示
◎おとり広告に関する表示
◎有料老人ホームに関する不当な表示

 

2 不実証広告規制(法7条2項)

不当表示のうち,優良誤認表示に関して重要になるのが,不実証広告規制です。消費者庁は,「この表示は優良誤認表示かもしれないけど,資料がないから分からない」という場合,事業者に対し,その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を命じることができるのです。これに対し,事業者が合理的な根拠を示す資料を提出できなかった場合,その表示は優良誤認表示とみなされてしまいます

合理的な根拠と認められるためには,①客観的に実証された内容のものであり,②表示と実証内容とが適切に対応していることが必要です。
については,試験・調査によって得られた結果であるか,専門家の見解や学術文献に記載されたものであることが求められ,しかもその試験・調査方法や見解・文献が少数派に分類されるものではダメで,一般的に認められているものであることがポイントとなります。

さらに,資料提出の期限は,原則として15日間しかありません(景表法施行規則7条2項)。
このように,不実証広告規制は,事業者にとってかなり厳しい規制であるといえます。普段から準備しておかなければ,十分な資料を提出することはできないでしょう。

 

3 不当表示のリスク―不当表示をしてしまったら?―

では,事業者がこのような不当表示をしてしまった場合,どのような制裁を受けるのでしょうか。

(1)措置命令(法7条1項)

景品表示法に違反する行為をした事業者は,措置命令を受けることがあります。措置命令の内容は,不当表示の差止め再発防止に必要な措置これらに関連する公示その他必要な事項の3つです。措置命令に従わなければ,懲役刑や罰金等を受けることになります。

(2)課徴金納付命令(法8条1項)

不当表示をした事業者は,課徴金納付命令を受けることがあります。当該命令を受けますと,事業者は,課徴金を支払わなければなりません。
課徴金額は,その不当表示が行われた期間及びその後最大6か月間(合計最大3年間)における対象商品・サービスの売上高の3%です。主力商品・サービスについての不当表示だった場合,その売上高の3%を課徴金として支払わなければなりませんので,事業者にとっては甚大な損害となります。

 

4 広告表示について弁護士に相談するメリット

(1)不当表示の回避

上記の通り,不当表示のうち,優良誤認表示と有利誤認表示をした事業者は,課徴金を納付しなければなりません。そして,その金額は,最大で,主力商品の3年間の売上高の3%ですから,事業者に与えるダメージは計り知れません。これを避けるためには,優良誤認表示や有利誤認表示を回避するしかありません。

景品表示法に精通した弁護士に相談することで,不当表示を回避することができます。弊所では,企業法務チームを組織しており,同チームに所属している弁護士が,不当表示の該当性について迅速に判断いたします。

また,弊所では,不当表示に該当するか否かの判断だけではなく,どのように表示を変更すれば不当表示に該当しないかという提案まで対応可能です。

(2)自主申告による減免制度(法9条)

もしすでに不当表示をしてしまっていた場合でも,その損害を最小化することができます。それが,自主申告による減免制度です。事業者は,消費者庁による調査が入る前に,不当表示をしてしまったことを自主申告することで,課徴金の金額を半分にすることができます。弁護士にご相談いただければ,この自主申告についてもサポートさせていただきます。

(3)最後に

以上の通り,広告表示を侮っていると,措置命令や課徴金納付命令といった制裁を受ける可能性がありますし,何より企業の信用問題にかかわります。広告表示についてお悩みの事業者様は,ぜひ一度,瀬合パートナーズへご相談ください。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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