取締役の違法行為に対する対応
目次
1 はじめに
取締役は、日々の取引に関する判断等、会社の経営を行っています。しかしながら、取締役が、会社として違法行為を行ったとすれば、会社に重大な損害を与えかねません。そこで、会社としましては、取締役の違法行為を事前に差し止める等して抑止し、事後的にも当該取締役に損害を填補させ、また、場合によっては当該取締役を解任して再発防止に努める等の対応が必要となります。
本稿では、取締役の違法行為に対する会社や株主の各種対応についてお話しします。
2 差止請求 -事前の対応
まず、取締役の違法行為に対して取り得る事前の対応としては、当該行為の差止請求が考えられます。すなわち、会社の株主は、取締役に対し、当該取締役が違法行為をする場合や、違法行為をするおそれがある場合であって、当該行為により会社に著しい損害が生ずるおそれがある場合には、当該行為を差し止めるよう請求することができます(会社法360条)。
差止請求の対象となる行為は、会社の目的の範囲外の行為、法令や定款に違反する行為です。取締役は、会社に対して善管注意義務(会社法330条、民法644条)や忠実義務(会社法355条)を負っていますので、株主は、取締役が一般的な注意義務を怠ったような場合にも、法令違反行為として差止請求を行いうることになります。
また、取締役が実際に違法行為を行っている場合だけでなく、違法行為をするおそれがあるという段階であっても、当該違法行為の差止請求を行うことが可能です。会社に損害が生じる前に取締役の違法行為を是正することができることがメリットであるといえます。
3 損害賠償請求 - 事後的な対応その1
つぎに、取締役の違法行為に対して取り得る事後的な対応としては、これにより会社に与えた損害の賠償請求が考えられます。すなわち、取締役が違法行為により、会社に対して損害を与えた場合、会社は、当該取締役に対し、当該違法行為により会社に生じた損害の賠償を請求することができます(会社法423条)。この請求は、会社に代わって株主が、株主代表訴訟(会社法847条)により請求することもできます。
会社の取締役に対する損害賠償請求は、取締役が会社に損害を与えた場合全てに認められるとすれば、取締役の経営判断を委縮させてしまうおそれがあるため、当該判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあるか、又は、意思決定の過程及び内容が著しく不合理である場合に限って認められます(経営判断の原則)。
ただし、今回のように、取締役が明確な法定違反等の違法行為を行ったような場合には、取締役が会社の経営判断として違法行為を行うことを選択することは、いかなる理由であれ許されることではありませんので、経営判断の原則に関わらず、会社の取締役に対する損害賠償請求は認められるといえます。
4 解任請求 - 事後的な対応その2
さらに、違法行為を行った取締役に対する処分として、解任が考えられます。会社は、株主総会の決議により、いつでも取締役を解任することができます(会社法339条)。また、取締役が違法行為を行ったにもかかわらず、株主総会では解任決議を行うことができない場合には、株主は、裁判所に対し、当該取締役の解任請求をすることもできます(会社法854条)。
5 まとめ
このように、取締役の違法行為に対する対応には専門的な知識が必要であることから、取締役が違法行為を行っている疑いがあると気づいた早期の段階で、豊富な経験を有する弁護士に対応方法や対応内容について、相談することが望ましいといえます。
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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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