取締役会の適切な運営方法について
目次
1 はじめに
取締役会は、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督を主として行いますが、その具体的な運営方法については、会社法上で明確に定められてはいません。
取締役会の運営方法を軽視してしまうと、取締役等の役員が損害賠償責任を負うことにもなりかねないため、取締役会を適切に運営することが重要です。
以下では、取締役会の議事・決議について、実効的な運営方法を説明します。
2 取締役会で決議すべき事項について
会社法364条4項は、取締役会決議が必要な事項として、「重要な財産の処分・譲受(同項1号)」、「多額の借財(同項2号)」などを定めています。
この点、会社法上では、何が「重要な財産」にあたるかといった数値基準は定められていないため、会社ごとに定められる取締役会規則により、取締役会決議の要否を決める具体的基準を設けておくことで、取締役会決議が必要であるかの判断をするにあたり、重要な考慮要素となるといえます。
3 開催の手順
① 招集手続
取締役会は、原則として各取締役が招集することができます(会社法366条1項)。
招集手続は、取締役会の日の1週間前までに、各取締役、監査役に招集通知を発する必要があり(会社法368条1項)、実務上は書面によって通知するのが通例ですが、近時では電子メールによって通知する例も増えています。
招集通知には、取締役会の日時、場所を示すことが必要であるとされていますが、議題については、法律上記載することは要求されていません。しかしながら、事前に各取締役に議題を通知し、取締役会の資料等についても事前にクラウドなどにアップしておくことで、取締役会における議論が充実し、適切な業務執行の決定がすることができると考えられているため、少なくとも議題については記載しておくことが望ましいと言えます。また、取締役会規則において、招集通知に議題を記載することを定めておくことも可能です。
例外的に、取締役全員の同意がある場合には、招集手続を経ることなく取締役会を開催できますが(会社法368条2項)、後に取締役会決議の効力を争われた場合にそなえて、招集手続をしておくと良いでしょう。
② 取締役会の議事・決議
取締役会の議事をどのように行うかについて、会社法上の規定はありませんが、会議の形をとって、議題・議案について質問、意見を交換し、決議する必要があります。この「会議」は、テレビ会議や電話会議システムによることも可能ですが、議事録を回覧して署名させる方法で行うことはできません。
また、議長についての定めもありませんが、実務上、取締役の中から選定された議長が、議決に加わることができる取締役の過半数が出席していることを確認した上で、開会を宣言して議事を進めることが通例です。
議長の選定方法としては、定款や取締役会規則において、代表取締役を議長と定め、代表取締役が参加できない場合の対応についても、あらかじめ規定しておくことで、議事をスムーズに進行することができます。
取締役会においては、決議事項、報告事項の大きく2つの議事を行います。
決議事項とは、上記で述べた取締役会で決議すべき事項のことで、出席した取締役の過半数の賛成によって決定されます。
報告事項については、取締役による自己の職務の執行状況の報告(会社法363条2項)や、監査役による取締役の不正行為等の報告(会社法382条)を行います。この報告事項は、各取締役が負う監視義務を果たす上で、重要な情報源となりますので、詳細に報告することが望ましいといえます。
③ 議事録の作成・保存
取締役会の議事については、議事録を作成し、出席取締役・監査役全員が署名または記名押印する必要があります(会社法369条3項)。
議事録の内容としては、①取締役会が開催された日時および場所、②特別取締役による決議であるときはその旨、③取締役会の議事の経過の要領およびその結果、④特別利害関係人がいる場合は、その取締役の氏名、⑤議長が存するときは、議長の氏名を記載する必要はあります(会社法施行規則101条3項各号)。
また、議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備えおかなければならず(会社法371条1項)、株主や債権者は、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できることから、上記の記載事項に漏れがないよう記載しておく必要があります。
4 まとめ
以上のとおり、取締役会の具体的な運営方法については、会社法上で明確に定められてはいないため、取締役会規則などで詳細に定めておくことで、迅速かつ適切な意思決定を行い、取締役の職務執行の監督を十分に行うことができます。
取締役会の運営方法や、取締役会規則の定め方にご不安がある方は、是非弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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