取締役会を開催しないリスクについて
目次
1 はじめに
多くの中小企業では、取締役会を開催していないのが実情ですが、取締役会を開催しなかったことにより、会社に損害が生じた場合には、取締役等の役員が責任を追及されることにもなりかねません。以 下では、取締役会を開催しないリスクについて解説していきます。
2 会社法上の開催義務について
会社法では、代表取締役その他の業務執行取締役は、3ヶ月に1回以上、自己の職務の状況を取締役会に報告しなければならない(会社法363条2項)と定められており、これは省略できないとされているため、3ヶ月に1回以上の頻度で、取締役会を開催しなければなりません。
他方で、会社法は、一定の場合に、取締役会の議事・決議を省略できることを定めています。具体的には、取締役が議題の提案をした場合に、取締役全員が書面又は電磁的記録により、同意の意思表示をしたときは、議事・決議を省略して、その提案を可決する決議があったとみなす旨を定款で定めることができます(会社法370条)。
また、取締役、監査役等の取締役会への報告については、取締役全員への通知で足り(会社法372条1項)、議事を省略することができます。
もっとも、上記のとおり、3ヶ月に1回以上は取締役会を開催する必要があることから、代表取締役等の職務状況の報告とともに、取締役、監査役等の職務状況の報告を行うことが望ましいといえます。
3 取締役会を経ない会社の行為の効力について
取締役会を開催しなかった場合や、招集手続や決議内容に法定違反等がある場合には、たとえ多数派取締役の意思が明確であったとしても、取締役会決議の効力は認められません。
取締役会を開催することなく、会社が行った行為の効力については、会社内においては無効となりますが、他社との取引等の対外的行為については、原則として有効となり、その結果会社に損害が生じる可能性があります。
例えば、取締役が利益相反取引をする場合には、取締役会の承認が必要とされていますが(会社法356条1項2号・3号、365条1項)、その承認を欠いた取引は、原則として有効であり、相手方がそれにつき悪意・有過失である場合にのみ無効となります。
取締役会決議を欠く会社の行為の有効性は、下記の表のとおりになります。
行為類型 | 行為の有効性 |
内部的行為 (ex)株主総会の招集 |
無効 |
外部的な個別行為 (ex)利益相反取引 |
原則:有効 例外:相手方が悪意・有過失の場合は無効 |
外部的な集団行為 (ex)募集株式、社債の発行 |
有効 |
4 取締役等の責任について
会社法上、取締役会決議が必要とされている行為について、取締役会を開催しなかったことにより会社や第三者に損害が生じた場合には、取締役等の役員は損害賠償責任を負うこととなります(会社法423条1項、429条1項)。
例えば、代表取締役が取締役会決議を経ることなく、会社の重要財産を処分した場合、会社法362条4項1号の法令違反となり、当該代表取締役は、この処分によって会社に生じた損害について損害賠償責任を負うこととなります。また、その他の取締役についても、当該代表取締役の行為について、監視義務を負っていますので、当該代表取締役と連帯して損害賠償責任を負う可能性があります(会社法430条)。
5 まとめ
以上のとおり、取締役会を開催しなかった場合、取締役等の役員が損害賠償責任を負う可能性があります。このような責任を負わないためにも、会社法上で規定されている事項について、取締役会を開催することが必須です。
取締役会を開催すべきか分からない、開催方法に不安があるという方は、是非弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
最新記事 by 弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ (全て見る)
- 医療機関向け法務相談サイトがオープンしました - 2024年10月2日
- R6.7.26「第7回 企業不祥事に関する定期情報交換会」の開催 - 2024年7月27日
- “働きがいも経済成長も“を目指す企業さまを対象に「SDGs労務コンサルティングプラン」をリリース! - 2022年10月28日