取締役会と会社法規定について

1  はじめに

 取締役会は、取締役全員によって構成される合議体であり、①業務執行の決定、②取締役の職務執行の監督、③代表取締役の選定及び解職を行うことを職務としています。
 これらの職務の具体的内容、取締役会の開催・運営方法について、会社法上の規定から説明していきます。

 

2  業務執行の決定について

 取締役会が自ら決定しなければならない事項として、会社法362条4項には、以下のとおり定められています。
① 重要な財産の処分および譲受け
② 多額の借財
③ 支配人その他の重要な使用人の選任および解任
④ 支店その他の重要な組織の設置
⑤ 社債の発行に関する事項
⑥ 内部統制システムの整備
⑦ 定款の定めに基づく役員等の責任の免除
⑧ その他重要な業務執行の決定
 その他にも、取締役会で決議しなければならない事項として、株主総会の招集に関する決定(会社法298条4項)など個別に規定されているものもあります。
 これらの会社法上で定められた重要事項以外については、個々の取締役に決定を委任することができます。

 

3  取締役の職務執行の監督について

 取締役会は、取締役の職務執行を監督します(会社法362条2項2号)。監督の具体的方法としては、会社の業務執行の状況について、代表取締役その他の業務執行取締役や使用人に対して、報告書・資料の提供等を求め、その妥当性を審議し、不適切と認めたときは是正を命じることができます。
 取締役会の監督権限は業務の適法性だけでなく、妥当性にも及びます。例えば、代表取締役が適法な業務執行を行おうとしていた場合であっても、取締役会が経営上妥当ではないと判断した場合には、代表取締役にこれを中止することを命じることができます。

 

4  代表取締役の選定・解職

 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定し、その解職をすることができます(会社法362条2項3号)。解職には、特段理由は必要とされておらず、当該取締役への告知を要することなく、取締役会の決議により当然に効力が生じます。
 もっとも、代表取締役から解職されても、取締役としての地位は失わないことから、取締役からも解任するためには、別途、株主総会決議を行う必要があります(会社法339条1項)。

 

5  取締役会の開催方法について

(1)  招集

 取締役会は、原則として各取締役が招集することができます(会社法366条1項)が、定款又は取締役会で特定の取締役を招集権者と定めることもできます(同項ただし書)。その場合であっても、招集権者以外の取締役は、議題を示して招集権者に招集を請求することができ、一定期間内に招集がされないときは、自ら取締役会を招集できます(会社法366条2項3項)。
 招集手続は、原則として、取締役会の日の1週間前までに、各取締役に招集通知を発する必要があります(会社法368条1項)。監査役会設置会社においては、監査役にも取締役会の出席義務があるため、監査役にも招集通知をする必要があります(会社法383条1項、368条1項)。株主総会とは異なり、招集通知に議題を記載することは不要です。
 例外的に、取締役全員の同意がある場合には、招集手続を経ることなく開催できますが(会社法368条2項)、後に取締役会決議の効力を争われないよう、招集手続をしておくことが望ましいといえます。

(2)  決議

 取締役会の議事をどのように行うかについて、会社法上の規定はありませんが、会議の形をとって、議題・議案について質問、意見を交換し、決議する必要があります。この「会議」は、テレビ会議や電話会議システムによることも可能ですが、議事録を回覧して署名させる方法で行うことはできません
 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数をもって行います(会社法369条1項)。
 また、決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることはできません(会社法369条2項)。具体的には、代表取締役の解任決議における代表取締役、利益相反取引の承認決議をする場合の当該取引を行う取締役などは、議決に加わることはできません。
 取締役会の議事については、議事録を作成し、出席取締役・監査役全員が署名または記名押印する必要があります(会社法369条3項)。
 取締役会の決議に参加した取締役については、議事録に異議をとどめない限り、決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。例えば、取締役会で利益相反取引の承認決議がされたことにより、会社に損害が生じた場合には、その決議に賛成した取締役が損害賠償責任を負うことになりますので(会社法423条3項3号)、議事録において異議を述べたことを記載しておくことが重要となります。
 また、議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備えおかなければなりません(会社法371条1項)。

 

6  まとめ

 以上のとおり、取締役会の職務や、取締役会の開催、運営方法については、会社法で多岐にわたって取り決められています。取締役会の招集手続や、決議方法にご不安のある方は、是非この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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