不動産賃貸経営における管理委託契約の解除・損害賠償
目次
1.不動産会社との管理委託契約の解除の可否
不動産賃貸経営をするにあたり、不動産会社等の管理会社と管理委託契約をされている方も多いと思います。
その場合、管理委託契約は委任契約あるいは準委任契約の性質を有するため、契約期間が残っていたとしても、いつでも自由に解除することができるのが原則です(民法651条1項)。
もっとも、例外的に、委任契約が「受任者の利益をも目的とするとき」は、①受任者が著しく不誠実な行動に出たなどのやむを得ない事由があるとき、または②解除権自体を放棄したものとは解されない事情があるときでなければ、解除は制限されます。
ここでいう、「受任者の利益」とは、「契約により受任者に約束されている報酬とは別の、委任事務と直接関係のある利益をいう」と解されており、単なる対価としての管理報酬は「受任者の利益」には含みません。
したがって、一般的には、管理会社との管理契約は自由に解除できる場合が多いと思われます。
ただし、転貸業務とともに管理業務も行っているサブリース会社のように、建物の管理を通じて、サブリース会社が行う転貸業務の質や内容を高めるといった場合、サブリース会社自身の利益のためになされる側面も有し、「受任者の利益をも目的とする」といえることから、解除が制限されますので、ご注意ください。
2.不動産会社との管理委託契約を解除した場合の損害賠償の要否
上記1のとおり、不動産賃貸経営者は、不動産会社との管理契約を原則としていつでも自由に解除できますが、「不利な時期」に解除した場合、損害を賠償しなければならない旨規定されています(民法651条2項)。
そこで、期間途中で解除した場合、残存期間分の管理報酬等について、損害賠償を請求されるのではないかといった問題が生じます。
まず、「不利な時期」とは、その委任の内容である事務処理自体に関して受任者が不利益を被るべき時期をいい、事務処理とは別の報酬の喪失の場合は含まないと解されています。
また、「賠償すべき損害の範囲」についても、解約自体から生ずる損害ではなく、時期が不当であったことから生じる損害をいい、突然の解除により相手方において負担せざるを得なくなった出費等に限られ、逸失利益や営業利益など、委任契約あるいは準委任契約の継続を前提とする事項については、損害に含まれないと解されています。
したがって、中途で解約したからといって、そのような違約金条項がない限り、残存期間分の管理報酬について、損害賠償が認められるということはほぼないと考えてよいでしょう。
ただし、その他に不利な時期における解除として、一定の損害賠償義務が生じ得る例としては、管理会社が清掃業務等、管理業務の一部を下請けに出していた場合の下請け会社に対する解約金や、当該物件の管理業務のために雇用していた従業員を解雇した場合の解雇手当等が考えられますので、この点に留意する必要があります。
3.実際の対応
上記2のとおり、不当な時期に管理契約を解除した場合、下請け会社に対する解約金、従業員への解雇手当等について、賠償請求の対象となる可能性があります。そこで、これらについて賠償請求の対象とならないためにはどうすればよいのでしょうか。
この点、エレベーター保守管理委託契約の解除につき、3ヶ月の予告期間を置いたこと等を考慮して、「不利な時期」にあたらない旨判示した判例(東京地判平成15年5月21日)があります。
したがって、管理会社との契約を解消したいとお考えの不動産賃貸経営の方も、なるべく即時解除は避け、少なくとも3ヶ月程度の予告期間を置いたうえで、契約解除をされることをお勧めします。
不動産賃貸経営でお悩みの方は、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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