サブスクリプションビジネスを検討する際の法的問題
目次
1 サブスクとは
サブスクリプションサービス(略して「サブスク」)とは、提供する商品やサービスの数ではなく、利用期間に対して対価を支払う方式のことをいいます。Apple Musicなど月額定額制のサービスが典型例です。毎月安定した売り上げが得られることもあって近年大変注目されており,サブスクリプションサービスを提供するビジネスの導入を検討されている企業も多いのではないかと思います。
同じく近年拡大中のSaaS(Software as a Service:「サース」)とも相性が良く,SaaSの課金方法としてサブスクが採用されることも多いです。
そんなサブスクリプションビジネスを始める場合,法的問題として,以下の4つを押さえておく必要があります。
2 法的問題①:景品表示法のおそれ
サブスクリプションビジネスでは,「月額○○円で~~し放題」というフレーズでアピールされていることが多くあります。
しかし,いざサービスを利用し始めると,一部のサービスには追加料金が必要となる場合,「し放題」とはいえません。また,「~~」の中身が限定的な場合も「し放題」とはいえません。
このように,サービスの実態と「~~し放題」というフレーズの乖離がある場合,景品表示法5条の禁止する「優良広告」や「有利広告」に該当する可能性があります。「優良広告」や「有利広告」に該当すると判断されてしまった場合,措置命令などの行政処分や刑事罰,課徴金が科される可能性があります。
サービスの実態と異なるフレーズを用いないように注意してください。
3 法的問題②:ポイント利用方式の注意点
(1)資金決済法による規制
サブスクリプションビジネスでは,顧客が専用のポイントを購入し,そのポイントを使ってサービスを利用するという方式が採られることが多いです。このようなポイント利用方式を用いる場合,資金決済法に違反する恐れがあるため注意が必要です。
すなわち,事前にポイントを購入させる方式は,資金決済法3条1項1号の「前払式支払手段」に該当します。そのため,毎年3月末又は9月末時点において、発行している未使用ポイント残高が1000万円を超えたとき,事業者は,以下の義務を負うことになります。
㋐届出義務(同法5条)
事業者は,内閣総理大臣へ届出をしなければなりません。
㋑表示義務(同法13条)
事業者は,支払可能金額など一定の事項を,顧客に表示または提供しなければなりません。
㋒供託義務(同法14条)
事業者は,未使用ポイント残高の2分の1の金額を供託しなければなりません。
㋓報告義務(同法23条)
事業者は,報告書を作成して行政に提出しなければなりません。
(2)資金決済法による規制を回避する方法
資金決済法による規制を回避する方法があります。それは,ポイントの有効期限を6ヶ月未満にすることです。同法4条2号,同法施行令4条2項により,ポイントの有効期限が6カ月未満の場合は,上記規制が適用されないのです。
4 法的問題③:未成年者による契約
サブスクリプションサービスは,その手軽さから,未成年者も多く利用することが想定されます。しかし,未成年者による法律行為は,保護者の同意を得ていない場合,いつでも取り消すことができてしまいます(民法5条1項,2項)。安定的な売り上げを目指してサブスクリプションビジネスを導入したのに,保護者が後から契約を取り消して返金を求められてしまっては,意味がありません。
そこで,未成年者の利用が想定される場合は,以下の措置を取っておく必要があります。
㋐顧客の年齢確認
生年月日の入力画面を設けます。未成年者が虚偽の生年月日を入力して成人であると詐称した場合は,保護者による取消しができなくなります(同法21条)。
㋑保護者の同意確認
本当に保護者の同意があったのかを確認することは不可能ですが,同意画面や決済画面において「保護者の同意が必要です」と繰り返し表示することで,注意喚起することができます。
㋒利用上限額の設定
顧客が未成年者の場合に限って利用上限額を設定しておくという方法も考えられます。未成年者の法律行為も,お小遣いの範囲内といえる金額であれば,保護者の同意が不要とされているためです(同法5条3項)。
5 法的問題④:利用規約を用いる場合の注意点
サブスクリプションビジネスでは,定型的なサービスを不特定多数の顧客に提供するわけですから,サービスの利用条件等を「利用規約」という形で明示することが多いです。この利用規約は,民法上の「定型約款」(同法548条の2以下)に該当します。したがって,利用規約には,法律の定める一定の事項を記載する必要があります。また,利用規約を変更する際には,民法の規定に従って行う必要がありますので,注意が必要です。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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