下請法の違反行為と対策法

はじめに

 下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者と下請事業者の公正な取引を確保し、下請事業者の利益を守るための法律です。しかし、近年ではこの法律の違反行為が増加しており、その対策が求められています。本記事では、下請法の違反行為とその対策法について解説します。

 

1 親事業者の義務

 下請法は、親事業者に、以下の義務を課しています。

(1) 書面の交付(下請法3条)

 親事業者は、発注に際し、委託をした日、下請事業者の給付の内容、給付を受領する日、場所、下請代金の額、支払期日等の必要事項を全て記載した書面を交付しなければなりません。

(2) 下請代金の支払期日(同法2条の2)

 親事業者は、給付内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を、物品等を受領した日から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内で定める必要があります。

(3) 書類の作成・保存(同法5条)

 親事業者は、下請事業者に対し、下請法所定の業務を委託した場合において、下請事業者の給付内容・下請代金の額等の事項を記載した書類を作成し、これを2年間保存しなければなりません。

(4) 遅延利息(同法4条の2)

 親事業者は、下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から実際に支払いをするまでの期間につき、その日数に応じ、未払額に年14.6%を乗じた額の遅延損害金を支払わなければなりません。

 

2 親事業者の禁止行為

 下請法は、親事業者の以下の行為を禁止しています。

(1) 受領拒否(下請法4条1項1号)

 注文した物品等の受領を拒むことです。
 例えば、下請事業者が、定められた納期に、定められた品質、数量の製品を納入しようとしたところ、親事業者が、倉庫がいっぱいで保管場所がないことを理由に断ることが、これにあたります。

(2) 下請代金の支払遅延(同項2号)

 下請代金を受領後60日以内の範囲であらかじめ定められた支払期日までに支払わないことです。
 例えば、下請事業者が請求書を送付してこなかったとしても、受領等の日から60日以内の範囲で予め合意された支払期日までに下請代金を支払う必要があります。

(3) 下請代金の減額(同項3号)

 あらかじめ定めていた下請代金を減額することです。
 例えば、親事業者が、Aサッカーチームの優勝記念グッズの販売を計画し、その製造を下請事業者に委託したところ、目論見が外れてBサッカーチームが優勝してしまったとして、下請代金を減額することです。

(4) 返品(同項4号)

 受け取った物品を返品することです。
 例えば、親事業者が納期遅れを承知の上でいったんは受領した後、納期遅れを理由に返品することです。

(5) 買いたたき(同項5号)

 類似品等の価格や市価に比べ著しく低い下請代金を不当に定めることです。
 例えば、親事業者が下請事業者に部品の製造を発注していたところ、原油価格の高騰の影響を受けて、下請事業者から発注単価の引き上げを求められたのに発注単価を据え置きにすることです。

(6) 購入・利用強制(同項6号)

 親事業者が指定する物品、役務を強制的に購入、利用させることです。
 例えば、親事業者が自社や自社の関連会社の製品を下請事業者に購入させたり、そのサービス利用させることです。

(7) 報復措置(同項7号)

 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、親事業者が下請事業者に対し不利益な取り扱いをすることです。
 例えば、(3)の事例のように、親事業者から下請代金を減額されたため、下請事業者が中小企業庁にこのことを申告したところ、親事業者から取引を停止されたことがこれにあたります。

(8) 有償支給原材料等の対価の早期決済(同条2項1号)

 有償で支給した原材料等の対価を、それによって出来上がる物品の下請け代金の支払期日よりも早く下請代金と相殺したり、支払わせたりすることです。
 例えば、すでに履行期が到来している他の下請代金と、期限未到来の下請代金に含まれるべき原材料等の代金を相殺することです。

(9) 割引困難な手形の交付(同項2号)

 代金の支払として一般の金融機関で割引できない手形を交付することです。
 例えば、手形サイトが120日を超える手形を交付することがこれに当たります。

(10)不当な経済上の利益の提供要請(同項3号)

 下請事業者から金銭、労務の提供等をさせることです。
 例えば、親事業者が協力金、協賛金等を下請代金から差し引くことがこれにあたります。

(11)不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(同項4号)

 下請事業者の負担で注文内容の変更、受領後のやり直しをさせることです。
 例えば、親事業者が下請事業者にCMの制作を行わせたところ、完成した番組がスポンサーの意向に沿わなかったため、CMの制作を下請事業者の費用負担の下にやり直させることが当たります。

 

3 違反行為の対策法

 下請法の違反行為を防ぐためには、以下の対策が有効です。

(1) 発注書の確認

 上記1(1)のとおり、下請法3条が規定する項目を全て記載した発注書を交付しているかを確認すべきです。

(2) 下請代金の支払の確認

 上記2(2)のとおり、下請代金を物品の受領日等から60日以内に支払っているかを確認すべきです。

(3) 下請代金の金額の確認

 下請代金の金額が不当に低くなっていないか、決められた下請代金の金額を減額していないかを確認すべきです。

 

4 まとめ

 下請法の違反行為は、公正な取引の秩序を乱し、下請事業者に大きな負担を強いる行為です。下請法に違反すると、違反事実が公表されて社会的な信用を失ったり、50万円以下の罰金刑が科されたりするなどのペナルティがあるため、下請法に違反していないかどうか心配な場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
 (本原稿は、2024年7月17日時点で作成したものとなりますので、以降の判例、法改正による変更の可能性にご留意ください)

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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