医療機関への悪い口コミを削除する方法
目次
1 はじめに
現代では、飲食店や宿泊施設だけでなく、診察する病院を選ぶのにも、グーグルマップをはじめとするウェブサイトの口コミを参照することが増えています。自分達の身の安全がかかっている以上、悪い口コミの多い病院で診察・治療を受けたくないと考えるのは当然のことでしょう。
しかし、口コミサイトでは、時として根も葉もない、誹謗中傷を投稿されてしまうこともあります。口コミの評価が低くなってしまうと、患者数が低下したり、病院イメージが悪化したり、採用活動にも影響を与えることになってしまいます。
そこで、悪質な口コミが投稿された場合に、どのように対処すればよいのか、この記事では解説します。
2 サイトの運営者に削除依頼を送る
まずは、口コミサイトの運営に、口コミ削除を依頼する方法が考えられます。口コミを掲載するサイトでは、口コミのガイドライン(掲載基準)を設けていることがほとんどです。掲載の際にはAIや人の目によってチェックはされますが、中には営業妨害・名誉棄損にあたる口コミが、そのまま掲載される場合もあります。
掲載されてしまった場合であっても、多くのサイトでは、ガイドラインに反する口コミについて、削除依頼の申請をすることができます。例えば、Googleマップの場合には、ハラスメント、ヘイトスピーチ、なりすまし、誤情報などを規制しており、これらにあたる口コミについて削除を申請することができます。
3 裁判手続きを利用する
口コミサイトの方に、違反コンテンツであるとして口コミを報告しても、削除に応じてもらえない場合があります。その場合には、裁判所の手続きを利用することになります。
(1)仮処分の申請
まずは、裁判所に対して仮処分を申し立て、削除命令を出してもらうことを検討すべきでしょう。裁判手続きにおいて、口コミの内容の違法性を立証することができれば、裁判所から口コミサイトの運営会社へ削除命令が出されます。このような場合には、削除に応じる運営会社がほとんどでしょう。
ただし、削除を求める側が、記載された口コミが名誉棄損等に該当することを証拠によって立証する必要があります。
(2)発信者情報開示請求
発信者情報開示請求とは、インターネット上で個人や企業・団体に対して誹謗中傷を行った人物を特定するための手続きです。特定人物によって悪質なデマ投稿が繰り返される場合や、口コミを削除してもらってもまたすぐに投稿されてしまい、いたちごっこになってしまっている場合など、口コミの投稿者に法的措置をとりたい場合には、この手続きを行い、口コミの投稿者を特定することになります。
口コミサイトにも、個人情報の守秘義務があるため、任意で投稿者の情報を開示してもらえることは考えにくく、投稿者に対して法的措置をとる場合には、この手続きをとる必要があります。
4 まとめ
口コミサイトにおいて、悪質な口コミが投稿された場合には、まずは口コミサイトの運営者の方に、削除を依頼することになります。それでも削除がされない場合には、裁判所に仮処分を申し立てて削除命令を出してもらったり、場合によっては発信者情報開示請求によって投稿者を特定してから法的措置を講ずることになります。
5 おわりに
インターネットの普及により、病院を受診する際にも、口コミサイトを参考にする場合が多くなっていると思われます。事実無根で悪質な口コミが多数書き込まれてしまえば、患者数が減少するにとどまらず、病院の評判が低下し、優秀なスタッフを確保することも難しくなり、経営が立ち行かなくなる可能性もあります。
口コミサイトの運営が、口コミを削除してくれない場合には、裁判を起こすしかありません。しかし、裁判では、病院側が口コミの違法性を立証する必要があります。違法性立証のために必要な証拠を集め、裁判所を説得するための主張を行うことは専門家の助けなしでは困難だと思います。
悪質な口コミにお困りの方は、弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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