ChatGPTを業務利用するリスク

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ChatGPTとその法的リスク

 ChatGPTは、米国OpenAI社が開発したものであり、大規模な自然言語処理モデル(LLM)をチャット形式で利用することができるサービスとして提供されています。

 ChatGPTは、膨大なデータを用いた機械学習によって、人間のような自然な対話を行うのみならず、メールや小説、ブログ記事等といった文章の生成、プログラミングコードの生成を行うことも可能となっています。また、ChatGPTにより作成された文章等は、コンテンツポリシー及び利用規約を遵守する限り、商用利用も可能です。そのため、近時、ChatGPTを業務上利用することによる業務効率化に関心が寄せられています。

 本稿では、ChatGPTを業務利用する際の法的リスク及び注意点についてお話しします(当記事の作成は2024年6月12日時点のものとなります)。

情報漏洩リスク

 ChatGPTを利用する際、利用者はまず情報の入力を行い、ChatGPTとの対話や文書の生成を行います。
 ChatGPTの利用規約やデータ利用ポリシーによれば、このとき利用者が入力した情報は、ChatGPTの機械学習のためのデータとして使用されたり提供元であるOpenAI社の社員がその内容を閲覧したりする場合があります。そして、これを回避するためには、利用者はChatGPTのAPIを経由して情報を入力するか、又は、オプトアウトを申請する必要があります。

 つまり、利用者がChatGPT利用の際に、何らの対策を講じることもなく個人情報や機密情報を入力してしまったとすれば、当該個人情報や機密情報がChatGPTを通して第三者に知られてしまうおそれがあります。

 そのため、会社の業務においてChatGPTを利用する際には、社員が個人情報や機密情報等の秘匿性の高い情報を入力して情報漏洩が発生することのないよう、個人情報やの機密情報の扱いについて、社員へ個人情報や機密情報の扱いに関する周知や教育を行い、必要に応じて上述のような方法によりChatGPTを利用する等の対策を講じる必要があります。

著作権侵害リスク

 利用者がChatGPTを利用する際に、ChatGPTに機械学習を行わせる目的で、既存の著作物を利用すること自体は、当該著作物の思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的とする行為ではないため、基本的には著作権侵害にあたりません

 また、ChatGPTに特定の著作物を学習させて文章等を生成させた場合であっても、当該生成物に当該著作物の創作的表現が残存しない場合には、当該生成物は著作権を侵害するものではないといえます。

 反対に、ChatGPTにより生成された文章等が、既存の著作物との間に類似性、依拠性が認められる場合には、当該著作物の著作権を侵害するものといえます。

 そのため、企業がChatGPTによる生成物を利用する場合には、ChatGPTによる生成物が第三者の著作権を侵害しうるものであるか否か確認した上で、著作権侵害に該当しうる場合には利用許諾を得る等の適正な方法を採用する必要があります。

信用性毀損リスク

 ChatGPTは、学習した情報に基づいて文章を生成するものに過ぎず、生成物の内容の真実性や正確性を担保しているものではありません。ChatGPTの学習データの内容如何によっては、有害な記載を含む文章が生成されるおそれもあります。

 そして、ChatGPTの利用規約には、ChatGPTの利用者が、ChatGPTを利用する際の入力内容及び出力内容について責任を負うことが定められています。

 そのため、企業がChatGPTによる生成物を用いて情報発信を行う場合には、事前に必ず、生成物の内容の真実性や正確性を確認しなければなりません
 万が一、企業が、ChatGPTによる生成物の内容の確認が不十分であったために、虚偽の情報や有害な情報を顧客等に発信してしまった場合には、企業の評判や信用が損なわれるのみならず、法的なトラブルが生じるおそれがあり、利用者である企業自身が、その責任を負わなければならないためです。

リスクを意識しながら利用しよう

 このように、ChatGPTを業務上利用する際には、種々のリスクがあるため、従業員に対して教育・指導を行い、また、ChatGPTによる生成物の事後的なチェックを行う等、リスクを減らすための適切な対策を講じる必要があります。

 ChatGPTを業務上利用する際のリスクを把握し、適切な対策方法を検討するには、自社のみの判断ではなく、この分野に詳しい弁護士等に相談することをお勧めいたします。

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