「神戸たばこ商業協同組合相続対策セミナー」
目次
相続対策の目的とは?
①家族の円満な相続の承継
②相続税の節税
③資産価値の向上
この3つを同時に実現すること
相続対策には投資的側面がある!!
巷の相続対策の失敗の原因
節税を重視するあまり・・・
① 資産価値が下がってしまった
② 納税資金を準備できなくなってしまった
③「争族」となってしまった
① 資産価値が下がってしまった
⇒事前に信頼できる専門家と相談
(金融機関、税理士、不動産業者、工務店等)
② 納税資金を準備できなくなってしまった
⇒生命保険(非課税枠など)の活用
「争族」とならないためには
家庭裁判所への相続関係の相談件数は、平成14年の90,629件から平成24年の174,494件へ(最高裁判所「平成24年度司法統計」より)
この10年で約1.9倍に増加!!
「争族」は金額の多寡ではない!
遺産分割事件で扱う財産額のうち
・5000万円以下が44.0%
・1000万円以下が29.1%
⇒課税額5000万円以下のトラブルも多い!
・家庭裁判所における遺産分割事件(家事調停・審判)の件数は、平成14年の11,223件から平成24年の15,286件へ(最高裁判所「平成24年度司法統計」より)
この10年で約1.4倍に増加!!
平均審理期間12.6月、1年以上が約3割も!
これだけは忘れないでほしい・・・
何もしないことは最大のリスク!!
⇒遺産分割対策をしましょう!
遺産分割協議は全員一致が原則!!
誰か一人でも反対する者がいれば、成立しません!
音信不通の相続人が一人でもいると手続が複雑化します。
遺言の必要性
①相続人が多数いる場合
→遺産分割協議がまとまらない
②養子縁組がされている場合
→相続税対策のために、養子縁組をする人が増えているが、他の相続人からすれば、法定相続分が減ることに
③相続人が行方不明の場合
→裁判所に申し立てて代理人をたてる等、別途手続きが必要
何もしないでいると・・・
・不動産や会社株式をもっていた場合、相続人全員の共有財産となる
・民法や会社法の規定にしたがわない限り、不動産の管理や処分、株主としての権利行使等は、
何もできない状況に・・・
・閉鎖会社の場合、事業に関与していない相続人による突然の株式買取請求や第三者への株式売
却も・・・
・相続税もたくさんとられるかも・・・
もめることが予想される事例
① 家族関係が複雑である!
離婚と再婚を繰り返してきた
いくつも家庭をおもちである
② 兄弟姉妹の仲がよくない!
③ 被相続人の介護をしてきてくれた人がいる!
④ 相続財産が不動産中心!
不動産が共有となると、修繕が必要な場合等、
意思決定が必要な場合にもめてしまう
誰に何を相続させるのかを自分で決めたい!
①自宅は妻に残したい!
②自社株は後継者にすべて渡したい!
→「後継者に事業用資産のすべてを」
かつ「相続人に平等に財産を分配する」
③相続人以外に財産をあげたい!
④法定相続の割合を変えたい!
⑤子どもがいないので、相続人は妻と自分の兄弟!
→4分の1は兄弟に!
⑥同性婚で、パートナーに財産を残したい!
遺言書を作成しましょう!
遺言書を残すことで、誰に、何をどのように残すかという意思を明確に示すことができます!
遺言あれば相続減税!?
自民党の「家族の絆を守る特命委員会」は8日、遺言に基づいて遺産を相続すれば残された家族の相続税の負担を減らせる「遺言控除」の新設を要望する方針を固めた。遺言による遺産分割を促し、相続をめぐるトラブルを防ぐ狙いだ。党税制調査会に提案し、2018年までの導入をめざす(日本経済新聞2015年7月9日朝刊)。
遺言の種類と違い(自筆証書遺言と公正証書遺言)
自筆証書遺言のメリット
① 自分だけで遺言を作成できるため、基本的に費用はかからない
→紙とペンと朱肉があれば足りる
② 自分の好きな時に、好きなタイミングで遺言を書くことができる
③ 誰からも関与を受けずに遺言を作ることができるので、隠しておけば秘密を保つことができる。
自筆証書遺言のデメリット
①無効になりやすい
遺言の書き方を少しでも間違えると無効になる
(例:平成27年6月吉日など)
②紛失してしまう恐れや発見されない恐れ
→さらには捨てられてしまう恐れも
③改ざんされてしまう恐れ
④手続きまでに時間がかかる
亡くなった後に、その遺言を家庭裁判所に持っていかなければならない→検認(けんにん)
⑤「書くこと」ができないとそもそもこの方式では遺言が作成できない、自筆が要件
→代理人に書いてもらう、ワープロ打ちではダメ
公正証書遺言のメリット
①形式面でのミスによる遺言の無効がまずありえない
法律のプロ中のプロである「公証人」の関与があるため
②紛失や改ざんのおそれが極めて少ない
公証役場が遺言の原本を保管する
③字が書けなくても作成できる
遺言に書きたい内容を公証人に伝えれば良いだけ
④すぐに手続きをすることができる(検認手続きが不要)
亡くなった後に、遺言を家庭裁判所へ持っていく必要がない
公正証書遺言のデメリット
①少なからず遺言の作成費用がかかる
→公証人手数料が発生するため
②遺言の内容について秘密にはならない
作成する際には、公証人のほか、証人2名の立ち合いが必要になるため
③やや時間と手間がかかる
公証人や証人の協力が必要なため、思い立ったらすぐに作成、いつでもどこでも遺言が作成で
きるというわけではない。
公正証書遺言がおすすめ!!
遺言書を作成するにあたって、ぜひとも入れておきたい項目は?
・祭祀財産
・葬儀費用
・療養看護
・ペットの終活
祭祀財産とは
・祭祀財産とは、墓地・墓石、仏壇・祭具、系譜(系図)
・慣習に従って祖先の祭祀を主宰する人が受け継ぐ
但し、被相続人の指定があればその者が祭祀承継する
・祭祀を承継することを理由に遺産を多く取得するように主張する相続人がいたとしても、これ
は認められない
⇒遺言書において、祭祀主宰者を指定し、祭祀承継に伴う費用を考慮した相続分割合にしてお
くとよい
葬儀費用とは
・葬儀費用をだれが負担するか、法律の規定はない
・通常は香典を葬儀費用に充当し、不足分を遺産に関する費用として、相続財産のなかから支払うも
のとして処理されている
・但し、葬儀費用が相当な範囲内であるか否かの判断が難しく、相続人間で意見が一致しないまま支
出されたときは、その負担をめぐる問題が生じる
・審判では、葬儀費用を遺産から引くという判断がされることはない
⇒遺言書において、葬儀費用を遺産から支出する旨を定めておくとよい
療養看護とは
・相続人の中に、被相続人の療養看護に努め、財産の維持もしくは増加に「特別の貢献」をした者がいる場合、その相続人は、法定相続分に加えて別の取り分も受け取ることができるのだが・・・
①寄与分は相続人以外には認められない
(ex. 内縁の妻、息子の嫁)
②夫婦や直系血族、兄弟姉妹の間での通常の看護は「特別の貢献」とはいえず、寄与分は認めら
れない
⇒遺言書において、療養看護してくれた人に配慮した相続分割合にしておくとよい
ペットの終活とは
・子どもの出生者数約103万人に対し、犬猫の飼育数は約2100万匹
・ペットの終活も考える時代かも
⇒ペットに直接財産をのこすことはできないので、財産を贈与するかわりにこの子の世話を頼むと
いう遺言書(負担付き遺言書)を作成する
遺言執行とは
・遺言執行者とは、遺言の内容を確実に実現してくれる人をいいます。遺言の内容によっては、執行を必要とするものがある(例)認知届の提出、推定相続人の廃除・取消
・遺言執行者を指定しておくことにより、相続人間での紛争を緩和する効果もある
・遺言執行者は、未成年者、破産者以外なら誰でもなることができるが、遺言執行には利害が絡むことが多いので、手続きをスムーズに進めるためには、相続に利害関係がない、専門知識を有する人が望ましい
遺言執行のポイント!
①遺言の内容を確実に実現するために、遺言書のなかで、なるべく遺言執行者を指定しておくこと!
②遺言執行者には、相続に利害関係のない、専門知識のある人が望ましい
自己信託(信託宣言)の活用
【相談事例①】
中小企業を経営していますが、私には障がいをもった子どもがいます。この子どものために十分な生活資金を残しておきたいと考えています。ただ、私は会社経営者として会社の債務を個人保証しています。現在、会社の経営は順調ですが、今後、会社の経営が破綻したときに、子どもに財産を残せなくなるのではないかと心配しています。何かいい方法はありませんか?
【回答】
自分を委託者兼受託者として、自己の財産を自己信託(信託宣言)し、子どもの生活のために、予め倒産隔離しておく(倒産隔離機能の活用)。但し、公正証書等において意思表示することが必要。
※受益者を指定した段階で贈与税が発生する可能性がある
※詐害的な自己信託には対応がとられている
後継ぎ遺贈型信託
【相談事例②】
長男に財産を継がせたいのですが、長男が亡くなった後、長男の妻とは折り合いが悪く、財産が承継されるのは納得できません。そこで、次男の子にその財産を継がせたいのですが、何かいい方法はありませんか?
・本来、長男の相続の際に、長男の妻の財産をどのように相続させるかは妻がきめることであって、自分の遺言では定めておくことはできません(民法上、「後継ぎ遺贈」は無効とされています)。
【回答】
現受益者の有する受益権が当該受益者の死亡により、あらかじめ指定された者に順次承継される旨を定めた信託にする
・受益権の承継は、回数に制限はなく、順次受益者が指定されていても構わない。ただし、30年を経過した後は、受益権の新たな承継は一度しか認められない。まだ生まれていない孫や甥姪を受益者として定めておくことも可能。
段階承継型信託
【相談事例③】
離婚した元妻との間に子どもがおり、財産を充分に残してあげたいと考えています。しかし、子どもがまだ幼く、いま数千万円の財産が相続されても、有効に活用できないでしょうし、下手をすれば元妻が全て浪費してしまうかもしれません。子どもの成長に応じて、その都度、有効活用してもらえるようにしたいのですが、何かいい方法はありませんか。
【回答】
自分を信託者、信頼できる家族の誰かを受託者、子を受益者として、子に渡したい財産を信託する。たとえば、信託財産がなくなるまで、毎年100万円ずつ支払うといった具合に、信託契約のなかで、子の成長段階に応じて、受託者から子へ財産が渡されるように定めておく。
本日覚えて帰ってほしいこと
何もしないことは最大のリスク!!
遺言書を作成するのなら、公正証書遺言!!遺言を作成する際は、相続に利害関係のない、専門知識のある人を遺言執行者として指定することが望ましい。場合によっては、家族信託の利用も検討する。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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