代表取締役の変更と特別利害関係人

質問

 代表取締役を選任・解職するにあたって、解職対象となる株主兼代表取締役は、株主総会又は取締役会の決議に参加できるのでしょうか。また、代表取締役を選定するにあたって、候補者となる取締役についてはどうでしょうか。

回答

 取締役会を設置しているか否かによって、必要な決議が異なりますので、以下では、場合分けをした上で説明いたします。

・取締役会設置会社の場合

 取締役会設置会社の場合、代表取締役の選定及び解職は、定款に特段の定めがない限り、取締役会決議で行うことになります(会社法362条2項3号)。
 そして、取締役会における代表取締役の解職決議において、判例は、解職対象となる代表取締役は、私心を去って会社の利益のために判断するとは期待できないとして、特別利害関係人(同法369条2項)にあたるとしています(最判昭和44年3月28日民集23巻3号645頁)。そのため、当該代表取締役は、議決に加わることはできません。
 他方、代表取締役の選定決議の場合、株主でありかつ候補者となる取締役は、業務執行の決定に参加するにほかならないため、特別利害関係人には当たらないと一般に解されています。そのため、当該取締役は議決に参加した上で、自分に投票することもできます。

・取締役会非設置会社の場合

 取締役会が設置されていない場合、定款定款の定めに基づく取締役の決定株主総会の決議によって代表取締役を選定・解職することになります(同法349条3項)。
 では、株主総会決議で代表取締役を選定・解職するにあたって、候補者となる取締役や解職対象となる代表取締役が同時に株主でもある場合、当該株主は特別利害関係人にあたるのでしょうか。
 この点について明示的に述べた判例はありません。ただ、取締役の解任決議において、解任対象となる取締役兼株主は、特別利害関係人にはあたらないとした判例は存在します(最判昭和42年3月14日民集21巻2号378頁)。
 同判例は、当該株主が特別利害関係人にあたらない理由として、「株主が単に個人として利害関係を有するにとどまらず、同時に、会社の株主として会社の支配ないし経営の参加に関する事項について利害関係を有する場合、…株主たる当該取締役等は、…株主としても重大な利害関係を有していることは明らかである」と述べており、株主として決議に参加することの重大さを認めているところ、これは代表取締役の選定・解職決議にも妥当します。
 そのため、代表取締役の選定・解職決議にあたって、候補者となる取締役や解職対象となる代表取締役が同時に株主であったとしても、当該株主は特別利害関係人に当たらない可能性が高いと考えられます。

 なお、取締役会決議では、特別利害関係人は議決に加わることができないため、議決に加われば、それだけで当該決議は原則として無効となります。
 他方、株主総会決議では、特別利害関係人でも議決に加わること自体は許されており、当該議決権行使によって「著しく不当な決議」がされた場合に初めて決議取消事由になります(同法831条1項3号)

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