「請負契約における報酬の未払い」
目次
1 はじめに
請負契約は、他の契約と比べても代金(報酬)の未払いの問題が生じやすい契約類型とされています。
以下では、請負契約において、代金の未払いが生じた場合の対処方法について解説していきます。
2 工事完了前の不払い
(1)請負契約における報酬の支払時期
原則として、請負契約においては、報酬の支払時期が仕事の完成後(後払い)とされており、工事が完了してはじめて代金を請求できるようになります(民法633条)が、特約や約款上の定めがあれば、報酬前払や中間払いの約定も有効です。
(2)中間金の不払いへの対応
工事完了前に特約で定めた中間金等の不払いが生じた場合には、そもそも残工事を進めてよいのか(請負代金を回収できる見込みがあるか)どうかを検討する必要があります。
不払いの原因が、注文者の一時的な資金繰りの悪化である場合には、注文者に支払時期を確認し、覚書を作成してもらうことも考えられます。
もっとも、不払いの金額が大きい場合や、注文者が覚書の作成に応じないなどのために支払時期が明確にならない場合には、その時点で工事を中断すべき場合もあるでしょう。この場合、注文者の代金支払債務の不履行を理由に、請負契約を解除するということになります。
3 工事完了後の不払い
(1)商事留置権
工事完了後に報酬の不払いが生じた場合には、仕事の完成物の引渡前であれば、請負人には完成物についての(商事)留置権が認められます(商法521条)。留置権は、代金の支払いを受けるまでは目的物を引き渡さなくてよい(留置することができる)という権利のことであり、これにより、間接的に注文者に代金の支払いを促すことが認められています。
報酬の支払いを担保するためにも、代金未払いの状態で安易に完成物を引き渡すべきでありません。
(2)工事が契約の内容に適合しない場合
もっとも、工事を完了した場合でも、それが請負契約の内容に適合したものでない場合には、報酬の支払いを受けることができません。民法上、一応工事を終えていれば、報酬請求権自体は発生しますが、注文者は請負人に対して不適合部分の修補を請求することができますし(追完請求権。民法559条本文・562条)、この修補がなされるまでは、請負人に報酬を支払わないことが認められているのです(同時履行の抗弁。民法533条)。
この場合において、請負人が注文者からの修補の請求に応じないときは、注文者は、修補に代わる損害賠償を請求することが認められています(填補賠償。民法415条)。この修補の代わる損害賠償債務と報酬債務は、同時履行の関係にあると理解されていますので、仮に報酬債務の額が損害賠償債務の額を上回る場合でも、特段の事情がない限り、報酬全額について、注文者は支払を拒むことが認められているのです(従って、報酬債務が損害賠償債務を上回っている差額分についても、請負人は支払いを受けることができません)。
4 最後に
以上のように、請負契約は代金の未払いの問題が多く発生する一方で、代金を回収するうえでは、法律上の専門的な知見が不可欠といえます。
もし、「工事が完了したのに、請負代金を払ってもらえない」といったことでお困りなら、請負契約に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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