労務デューデリジェンスの範囲
目次
1 労務デューデリジェンスとは
デューデリジェンス(DD)とは,直訳すると,当然行われるべき(Due)注意・努力(Diligence)であり,M&Aの場合などに行われる徹底した調査のことをいいます。この徹底した調査を労務の分野において行うのが労務デューデリジェンスです。
2 労務デューデリジェンスの必要性
例えば,ある会社を買収した後,従業員から未払残業代の請求を受けたり,常態化した長時間労働により労災が発生したりしても,後の祭りです。買収をする前に,労務デューデリジェンスを実施して,このようなリスクがないことをチェックしておく必要があります。
3 労務デューデリジェンスの範囲
デューデリジェンスを労務に限ったとしても,その範囲は広範に及びますが,一般的には次のような項目が想定されます。
(1) 就業規則・雇用契約書
事業所に常時従業員が10人以上いる会社につきましては,就業規則の作成が義務付けられています。就業規則がないと,例えば,問題を起こした従業員を解雇しようとしても,どのような場合に解雇できるのかが明らかではなく,解雇が困難になってしまうというような不都合が生じてしまうことから,従業員の数が10人以下であっても,従業員の基本的な権利義務を明らかにしておくため,就業規則を作成するメリットがあります。
雇用契約は口頭でも成立するため,雇用契約書の作成は義務ではありませんが,労働条件明示義務はあるため,雇用契約書を作成するのが普通です。
就業規則や雇用契約書により,従業員の基本的な権利義務を確認することになります。
(2) 36協定・労働時間の管理
会社が従業員に残業を命じるためには,従業員代表または組合との間で,36協定を締結し,労働基準監督署に届け出ておく必要があります。従業員の労働時間を会社がしっかりと把握できているのか,その管理体制を確認しておく必要があります。
(3) 未払残業代・過重労働
就業規則・賃金規程により定めれられた賃金が適切に支払われているのか,労働時間が適切に把握されており,残業代の未払いがないのか等を確認しておく必要があります。残業時間は適切な範囲に収まっているのか,有給休暇の取得実態,長時間労働により従業員の健康状態が悪化して,労働災害が発生するリスクがないのか等を確認する必要があります。
(4) ハラスメント
職場環境が適切なものであるのかを把握して,パワーハラスメントやセクシャルハラスメント等の発生を防止する体制が取られているのか等の確認が必要です。
(5) 解雇・懲戒
雇止めやリストラ,懲戒処分などの実態を把握して,訴訟リスクがないのか等を確認します。
4 労務デューデリジェンスは弁護士に依頼
上記の調査範囲は一例であり,労務の分野に限られるといっても,デューデリジェンスをすべき範囲は広範に及びます。また,訴訟リスクの調査は,弁護士でなければ判断することが困難でしょう。労務デューデリジェンスを検討する場合,労務に精通した弁護士に依頼するのが適切です。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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