早期退職による返金トラブルを防ぐには?人材紹介会社が知っておくべき返金規定のポイントと弁護士への相談方法

1 早期退職による返金トラブルが急増する背景

 近年、コロナ禍により有効求人倍率は一時的に下がったものの、まだまだ倍率は1を上回っており、売り手市場です。また、雇用の流動化に伴い、転職などによる人材の移動が活発な状態となっております。企業が、より良い人材とのマッチングを望み、人材紹介会社を利用することも少なくありません。企業は、高額の紹介手数料を払っておりますので、紹介を受けた人材が早期退職をした際には、その高額の手数料に見合わないと感じ、返金を求めるケースが増加しています。

 

2 人材紹介会社にとってのリスクとは

 人材紹介会社には、返金トラブルが生じることで、返金額相当の経済的損失を被るリスクがあります。また、このような経済的な損失という点にとどまらず、トラブルが生じると人材紹介会社は、対応に時間と労力をかけることになりますので、会社に重大な悪影響を及ぼしかねません。顧客企業からの信頼低下も無視できない影響といえるでしょう。
 このように、人材紹介会社にとってのリスクは多岐にわたります。

 

3 実際によくある返金トラブル

 人材紹介会社を利用して採用した求職者が、採用後わずかな期間で退職した際に、求人会社が人材紹介会社に対し支払った手数料の返金を求めたものの、契約書に早期退職した場合の返金規定を設けていなかったため、返金を拒むというケースが挙げられます。人材紹介会社としては、返金規定が存在しない以上は、返金する法的根拠は存在しないため、求人会社の請求を拒むことになりますが、求人会社としては高額な手数料を支払っているにもかかわらず、早期離職されるとコストをかけて人材紹介会社を利用した意味がなくなってしまうため、返金を求めて、このようなトラブルが生じることがあります。

 

4 返金トラブルを防ぐために見直すべきポイント

 人材紹介会社は、その紹介により就職した者が早期に離職したことその他これに準ずる事由があった場合に、当該者を紹介した雇用主から徴収すべき手数料の全部または一部を返戻する制度その他これに準ずる制度である返戻金制度(職業安定法施行規則第24条の5第1項第2号参照)を設けることが望ましいです(令和7年4月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領参照)。
 トラブルを未然に防ぐためには、契約書に返金規定が定められているのか、またその規定は後々争いにならないように明確なものとなっているかという点は見直すべきポイントであるといえます。

 

5 返金規定の例と実務での運用方法

 返金規定の例としては、以下のようなものが考えられます。

(返戻金額)
⑴ 入社後30日以内の退職:紹介手数料の100パーセント返金
⑵ 入社後31日~60日以内の退職:紹介手数料の70パーセント返金
⑶ 入社後60日~90日以内の退職:紹介手数料の50パーセント返金

以下の場合には、返戻金を支払わないものとする。
雇用主による解雇、雇用主の責めに帰すべき事由により雇用契約を終了した場合

 上記は簡単な一例ですが、返金が可能な時期やその額、免責事由等を記載することで、責任を明確にし、返金トラブルが生じることを未然に防ぐことが重要となります。

 

6 トラブルになりやすい企業の特徴とは

 契約書に返金規定を定めていない、あるいは定めていてもその規定が曖昧な場合には、人材紹介会社は後々トラブルに巻き込まれるリスクがあります。どのようなリスクがあるのか理解できず、またそのようなリスクを返金規定の形で反映できないとトラブルになりやすいといえます。このような企業は特に注意が必要です。

 

7 返金規定の見直し・整備は弁護士に相談を

 雇用の流動化等に伴って、人材紹介を利用した採用の流れはより一層重要性を増していきます。そのような中でトラブルに巻き込まれないように、専門家である弁護士に相談の上、その人材紹介会社に合った適切な規定の整備をお勧めいたします。

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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