フリーランス新法の解説
目次
1 【フリーランス新法の概要】
(1) 正式名称
令和6年11月1日、フリーランス新法が施行されました。この法律の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)といいます。
(2) 目的(第1条)
この法律の目的は、取引の適正化と就業環境の整備です。前者の部分は、公正取引委員会・中小企業庁が、後者の部分は厚生労働省が所管しています。
(3) 新法の対象(第2条第1項、第5項、第6項)
新法は、事業者間(BtoB)における委託取引を対象としています。
新法は、従業員を使用しない個人または一人役員の法人を「特定受託事業者」(フリーランス)、従業員を使用しない個人または一人役員の法人を「業務委託事業者」、従業員を使用する個人または法人、または二以上の役員がいる法人を「特定業務委託事業者」と定義しています。
(4) 義務と禁止行為
新法は、取引の適正化と就業環境の整備の2つのパートで構成されています。「特定」業務委託事業者か否か、一定期間以上の業務委託かどうかで、適用される規律が以下のとおり異なっています。
ア 業務委託事業者が業務を委託する場合
➊取引条件の明示義務(第3条)
イ 特定業務委託事業者が業務を委託する場合
➊取引条件の明示義務(第3条)
➋期日における報酬支払義務(第4条)
➍募集情報の的確表示義務(第12条)
➏ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
ウ 特定業務委託事業者が一定期間(1か月or6か月)以上の期間行う業務を委託する場合
➊取引条件の明示義務(第3条)
➋期日における報酬支払義務(第4条)
➌発注事業者の禁止行為(第5条)
➍募集情報の的確表示義務(第12条)
➎育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)
➏ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
➐中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)
(5) 違反への対応
違反行為に対しては、以下の対応が取られます。
所管省庁(公正取引委員会・中小企業庁、厚生労働省)への申出(第6条、第17条)
※報復措置の禁止(第6条第3項、第17条第3項)
↓ ※中小企業庁の措置請求(第7条)
※フリーランス・トラブル110番 0120-532-110(第二東京弁護士会)
報告徴収・立入検査(第11条、第20条)
↓
指導・助言(第22条)、勧告(第8条、第18条)
↓ 勧告に従わない場合
命令・公表(第9条、第19条)
↓ 命令違反
50万円以下の罰金・両罰規定(第24条、第25条)
2 【第2条(対象となる事業者・取引)】
新法の対象となる取引は、以下のとおりです。
資料出所:「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化法」
《ここに注意!①》フリーランスも含まれる!
Q 私はフリーランスです。従業員はいません。私が他のフリーランスに業務を委託する場合、新 法の適用はありますか。
A 「特定業務委託事業者」ではないので、「取引条件の明示義務(第3条)」以外の適用はありません。
Q 当社は、週3回パートさんに来てもらっています。1日あたり5時間勤務です。従業員を使用しているとして、フリーランスにはあたらないのでしょうか。
A 「従業員を使用」とは、①1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、②31日以上雇用されることが見込まれる労働者を雇用することをいうため、フリーランスにあたります。
Q 当社はXさんに運送業務を委託しています。運送経路や出発時刻等を管理し、日給制です。業務委託契約なので、新法が適用されますよね?
A 《ここに注意!②》実態が「労働者」である場合、新法の適用はありません。労働法が適用されます。
Q 当社は、業務を受注した後に、唯一の従業員が退職して従業員がゼロになりました。当社はフリーランスにあたりますか。
A 業務委託をする時点で「特定受託事業者」に該当しない場合、フリーランスにあたりません。
Q 当社は、私が一人で業務をしていました。私以外に役員はいません。業務を委託した後に従業員を雇用したのですが、当該業務委託について、当社は「特定業務委託事業者」としての義務を負うのでしょうか。
A 業務委託をする時点で「特定業務委託事業者」に該当しない場合、「特定業務委託事業者」としての義務を負いません。
Q 当社は、複数の事業を営んでいます。ある事業については従業員を使用していますが、今回受注した事業では従業員を使用していません。当社はフリーランスにあたりますか。
A 従業員を使用しているか否かは、個別の業務委託や事業に関してではなく、受注事業者が個人又は法人として従業員を使用しているか否かで判断されるので、あたりません。
Q A弁護士とB弁護士が共同で弁護士事務所を運営しています。法人化はしていません。B弁護士が単独で事務員を雇用していますが、A弁護士もその事務員に仕事を手伝わせています。A弁護士はフリーランスにあたりますか。
A A弁護士と事務員の間に直接の雇用関係がなく、事実上、A弁護士の仕事を手伝っているにすぎない場合、A弁護士は、フリーランスにあたります。
Q A弁護士とB弁護士が共同で弁護士事務所を運営しています。法人化はしていません。事務所が雇用主となって事務員を雇用しています。A弁護士とB弁護士はフリーランスにあたりますか。
A 当該事務所が民法上の組合である場合、各組合員が事務員を雇用していると考えられるため、A弁護士及びB弁護士はフリーランスにあたりません。
当該事務所が権利能力なき社団である場合、当該社団そのものが当該事務員を雇用していると考えられるため、A弁護士とB弁護士は従業員を使用しているとはいえず、フリーランスにあたります。
Q 当社は、Xに業務委託をするにあたり、Xに対し従業員を使用しているかを確認したところ、Xは、業務能力を高く見せようとして従業員を使用していると嘘の回答しました。その後、はずかしながら、当社は、新法に違反する行為を行ってしまいました。当社は、新法に基づく措置の対象となりますか。
A このような場合でも、発注業者の行為を是正する必要があるため、指導・助言が行われることがあります。ただし、事案の内容に鑑み、勧告や命令を直ちに行うことはしないとされています。
Q 私はサラリーマンですが、副業で業務を受託しました。私はフリーランスにあたりますか。
A 他の事業者から受託した業務を行う範囲では、フリーランスにあたります。
Q 当社は、派遣労働者を1名受け入れています。当社はフリーランスにあたりますか。
A ①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、②継続して31日以上労働者派遣の役務の提供を受けることが見込まれる派遣労働者を受け入れる場合であれば、フリーランスにあたりません。
Q 私は、妻と長男の3人で同居し、この3人で事業をしています。フリーランスにあたりますか。
A 同居の親族のみを使用している場合は、フリーランスにあたります。
Q 建設工事は下請法の対象外(建設業法が適用される)ですが、新法でも対象外でしょうか。
A 《ここに注意!③》新法の適用対象に、業種・業界の限定はありません。建設工事も業務委託の対象となります。
Q 当社は荷主から貨物運送の委託を請け負いました。当社の運送作業に必要なため梱包作業を他の事業者に委託しました。この梱包作業を他の事業者に委託する部分は、自ら利用する役務なので下請法の対象外ですが、新法も対象外でしょうか。
A 新法は、発注事業者がその事業のために他の事業者に役務の内容等を指定して依頼するものであれば、発注事業者が他者に提供する役務に限らず、《ここに注意!④》発注事業者が自ら用いる役務の提供をフリーランスに委託することも対象となります。
3 【第3条(取引条件の明示義務)】
取引条件の明示についての概要は、以下ののとおりです。
資料出所:「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化法」
業務委託をした場合、書面等により、直ちに、次の取引条件を明示しなければなりません(規則1条)。
① 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
② 業務委託をした日
③ 特定受託事業者の給付の内容
④ 給付を受領または役務の提供を受ける期日
⑤ 給付を受領または役務の提供を受ける場所
⑥ 給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
⑦ 報酬の額および支払期日
⑧ 現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること
Q 私はフリーランスですが、私がフリーランスに業務を委託する場合、フリーランス同士なので、取引条件は電話で伝えればいいですよね。
A フリーランス同士であっても、書面または電磁的方法により取引条件を明示しなければなりません。再掲《ここに注意!①》フリーランスも含まれる!
Q フリーランスが開設しているブログに取引条件を書き込みました。これで取引条件を明示したことになりますよね。
A 《ここに注意!⑤》電磁的方法は、電子メールのほか、SMS、SNSのメッセージ機能等のうち送信者が受信者を特定して送信できるものに限定されます。インターネット上に開設しているブログやウェブページ等への書き込み等のように、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、第三者が特定の個人に情報を伝達することができる機能が提供されるものは含まれないので、明示したことになりません。
Q 新法の施行日以前に行った業務委託が施行日以後も継続しています。あらためて、取引条件を明示しないといけないのでしょうか。
A 施行日前の業務委託について、明示する必要はありません。もっとも、施行日後に契約の更新(自動更新を含みます。)が行われた場合は、新たな業務委託が行われたものとして、明示する必要があります。
Q 取引条件を明示するにあたり、登記されていない名称やペンネーム、ハンドルネームを記載してもよいでしょうか。
A 当事者間で双方を特定できるものであれば、登記されている名称や戸籍上の氏名である必要はなく、ハンドルネームやペンネームでも記載可能です。
Q 当社はソフトウェアの作成を委託したいのですが、現時点では最終ユーザーが求める仕様が確定しておらず、正確な委託内容を決定することができません。どうしたらよいでしょうか。
A 未定事項については、その内容が定められない理由と未定事項の内容が決まる予定日を明示しなければなりません。
また、未定事項が決まったら、直ちに明示(補充の明示)する必要があります。その際、「この書面は、○年○月○日付け発注書の記載事項を補充するものです。」というように、当初の明示と関連性が分かるようにする必要があります。
Q 電子メールで取引条件を明示しようと思います。メールの本文に、取引条件が掲載されたウェブページのURLを記載したり、取引条件を記載したPDFを添付する方法でもよいでしょうか。
A どちらも認められます。閲覧できなくなった場合に備え、スクリーンショット等で保存しておきましょう。
Q 当社は、Xに業務を委託するにあたり、自社のアプリケーションを用いて取引条件を明示しました。ところが、Xが契約に違反したため、Xのアカウントを停止しました。Xから、取引条件を確認したいので、書面を交付してほしいと言われたのですが、応じなければならないのでしょうか。
A 《ここに注意!⑥》取引条件を電磁的方法により明示した場合、フリーランスから書面の交付を求められたときは、遅滞なく、書面を交付する必要があります。
ただし、フリーランスの保護に支障を生ずることがない場合の例外があります。
㋐フリーランスからの電磁的方法による提供の求めに応じて明示をした。
㋑業務委託が、契約の締結も含め、インターネットのみを利用するものであり、発注事業者により作成された定型約款がインターネットを利用してフリーランスが閲覧することができる状態に置かれている。
←㋐・㋑の場合でも、フリーランスに帰責性なく閲覧できなくなった場合(契約違反は閲覧できなくなったことの直接の理由ではない)は、さらに例外。
㋒既に書面の交付をした。
4 【第4条(期日における報酬支払義務)】
報酬の支払い義務についての概要は、以下のとおりです。
《ここに注意!⑦》発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払う必要があります。
Q 60日の起算日は、検品をした日からでよいでしょうか。
A 検品の有無に関係なく、物品を受領した日から60日以内です。
Q 支払期日は「●月●日まで」とか「●●日以内」と定めてもよいでしょうか。
A 支払期日がいつなのかを特定できないため、認められません。
《ここに注意!⑧》支払期日を定めなかった場合などの支払期日
・支払期日を定めなかったとき⇒物品等を実際に受領した日
・給付を受領した日から起算して60日を超えて定めたとき⇒受領した日から起算して60日を経過する日
Q 物品を受領した後、業務委託時に明示した内容と異なることが判明し、やり直してもらうことになりました。この場合も、物品の受領日から起算して60日以内に報酬を支払わなければならないのでしょうか。
A フリーランスの責めに帰すべき事由があり、報酬の支払前にやり直しをさせる場合には、やり直しをさせた後の物品を受領した日が支払期日の起算日となります。
Q 当社は、フリーランスに、4月1日に大阪で、4月15日に札幌で、5月1日に名古屋で、5月30日に東京で開催される各公演をまとめて委託しました。当社は、全公演分の報酬の支払期日を、最終公演の5月30日から60日以内の期間内で定めようと思います。支払期日違反となりますか。
A 発注事業者は、4月1日の大阪での公演に係る報酬は、4月1日から60日以内のできる限り短い期間内の特定の日を支払期日として定める必要があります。4月15日の札幌での公演、5月1日の名古屋での公演に係る報酬も同様です。このため、支払期日の規定に違反します。
Q 当社は、フリーランスとの間の業務委託において、毎月末日納品締切、翌月末日支払として、月単位の締切制度を採用しています。月によっては1か月が31日の月もあるため、給付を受領した日から60日を超えて報酬を支払うことがありますが、問題でしょうか。
A 「受領した後60日以内」を「受領した後2か月以内」として運用するため、31日まである月も、30日までしかない月も、同じく1か月として考えるので、問題ありません。
資料出所:「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化法」
Q 現在、当社は、納品後直ちに報酬を支払っています。しかし、新法は、報酬の支払期日について給付の受領日から「60日以内」と規定しているので、次回の業務委託からは支払期日を納品後60日後にしようと思います。問題でしょうか。
A 発注事業者とフリーランスとの間で、業務委託が継続的に行われている場合において、新法の規定のみを理由として、殊更に従前設定されていた支払期日よりも遅い支払期日を新たに設定することは、「できる限り短い期間内」に支払期日を定めたものとはいえないため、問題となります。
Q 当社は、フリーランスから指定された口座に報酬を振り込みました。ところが、フリーランスが当社に口座番号を間違えて伝えていたため、支払期日までに報酬を支払えませんでした。当社は、新法に違反したことになるのでしょうか。
A 「特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかった」ため、当該事由が消滅した日から起算して60日以内に報酬を支払えばよいです。
Q フリーランスが請求書を提出してくれないので報酬の支払ができません。これは、「特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかった」に該当しますか。
A 該当しません。フリーランスからの請求書の提出の有無にかかわらず、給付を受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに報酬を支払う必要があります。
Q 当社は、元委託者から受けた運送業務の一部を、フリーランスに再委託しました。支払期日の例外があると聞いたのですが。
A 《ここに注意!⑨》発注事業者は、通常明示すべき事項に加えて、①再委託である旨、②元委託者の名称、③元委託業務の対価の支払期日を明示することで、フリーランスへの報酬の支払期日を、元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができます。
資料出所:「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化法」
Q 支払期日を元委託支払期日から起算して30日以内の日を定めましたが、元委託者からの支払が元委託支払期日よりも遅れました。遅れた日数分だけ支払期日を遅らせてもいいでしょうか。
A フリーランスへの支払を遅らせることはできません。
Q 当社は、フリーランスに再委託を行う際、元委託支払期日が6月25日であること、及びフリーランスに対する報酬の支払期日を7月15日とすること等を明示していたものの、実際には、元委託業務の対価が6月15日に支払われました。当社は、フリーランスへの支払も早くしなければならないのでしょうか。
A 従前に設定していた支払期日である7月15日までにフリーランスに対し報酬を支払えば、問題となりません。
資料出所:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)【令和6年11月1日施行】説明資料
Q 当社は、4月1日に業務を委託しました。給付の受領予定日は4月30日ですが、28日に納品できました。1か月以上の業務委託に該当するのでしょうか。
A 業務委託をした日を1日目、給付の受領予定日が終期となるため、該当します。
《ここに注意!⑩》一定期間の「終期」は、給付受領予定日や契約の終了日等の「予定日」で判断します。「終期」よりも前または後に、実際に給付を受領したとしても、「終期」は変わりません。
Q 当社は、フリーランスとの間で、4月1日から5月31日まで有効となる基本契約を締結し、4月15日に、給付を受領する日を4月25日とする個別の業務委託を行いました。この場合、当該個別の業務委託は、1か月以上の期間行う業務委託に該当するのでしょうか。
A 個別の業務委託より早く基本契約を締結しているため、業務委託の期間の計算に当たっての始期は、当該基本契約を締結した日となり、個別の業務委託の給付を受領する日より後に基本契約の終了日が到来するため、業務委託の期間の計算に当たっての終期は、当該基本契約が終了する日となるため、該当します。
Q 当社は、4月1日、給付を受領する日を4月25日と明示してフリーランスに業務を委託しました。ところが、フリーランスのミスで作業が遅れた結果、実際に給付を受領したのは5月1日でした。この場合、当該業務委託は、1か月以上の期間行う業務委託に該当するのでしょうか。
A 業務委託の期間の計算に当たっての終期は、明示されていた給付を受領する日となるため、当該業務委託は1か月以上の期間行う業務委託には該当しません。
Q 当社は、4月1日、給付を受領する日を4月25日、検査期間を10日間、検査期間終了日を契約の終了日と明示して、フリーランスに業務を委託しました。この場合、当該業務委託は、1か月以上の期間行う業務委託に該当するのでしょうか。
A 終期は、業務委託に係る契約の終了する日となりますので、当該業務委託は1か月以上の期間行う業務委託に該当します。
Q A社は、フリーランスに業務を委託しています。A社のグループ会社であるB社も、同じフリーランスに同じ業務を委託しています。A社の業務委託とB社の業務委託の時期が近接している場合、「契約の当事者が同一」であるといえるのでしょうか。
A 契約の更新と認められるには、①契約の当事者が同一であり、給付または役務提供の内容が一定程度の同一性を有すること、②空白期間が1か月未満であることのいずれも満たす必要があります。A社とB社はグループ会社であっても同一の法人ではないため、業務委託に係る前後の契約の当事者は、同一とはいえません。
Q 当社は、フリーランスに対し、現場Aのとび工事について委託し、その後、別の現場Bの土工工事について委託しました。「給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有する」に該当しますか。
A 日本標準産業分類では、いずれも「072 とび・土工・コンクリート工事業」に該当すると考えられるので、該当します。
*「給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有する」かは、機能、効用、態様等を考慮要素として判断されます。その際は、原則として日本標準産業分類の小分類(3桁分類)を参照し、前後の業務委託に係る給付等の内容が同一の分類に属するか否かで判断されます。
Q 当社は、フリーランスにデータベースの設計及びサーバーの運用・保守を委託し、契約終了後、改めてサーバーの運用・保守のみを委託しました。「給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有する」に該当しますか。
A 前後の業務委託に係る契約について、その一部が同じ小分類に該当する場合には一定程度の同一性を有すると考えます。日本標準産業分類では、前の業務委託は「391 ソフトウェア業」及び「401 インターネット附随サービス業」、後の業務委託は「401 インターネット附随サービス業」に該当すると考えられますので、該当します。
Q 当社は、フリーランスに居宅についての大工工事の業務を委託し、その後当該居宅に関する内装工事を追加で発注しました。「給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有する」に該当しますか。
A 日本標準産業分類では、大工工事は「071 大工工事業」に、内装工事は「078 床・内装工事業」として、別の小分類に該当すると考えられますが、同一の居宅について、先に大工工事について業務委託を行い、後で内装工事について業務委託を行うといった状況は、「当事者間のこれまでの契約や当該特定業務委託事業者における同種の業務委託に係る契約の状況等に鑑み」、前後の業務委託は一体のものとしてなされているといえるため、該当します。
Q 前の業務委託の終期は12月31日です。1月31日に次の業務委託をしました。空白期間が「1か月未満」に該当しますか。
A 空白期間は、始期の初日から起算して、翌月の応当日(翌月の同日。ただし、翌月に応当日がない場合には、翌月の末日。)の前日までの期間をもって「1か月」とします。
空白期間の始期は1月1日となるので、1月31日(2月1日の前日)までの期間が「1か月」となります。そのため、空白期間が「1か月未満」に該当します。
Q 前の業務委託の終期は5月15日です。6月15日に次の業務委託をしました。空白期間が「1か月未満」に該当しますか。
A 空白期間の始期は5月16日となるので、6月15日(6月16日の前日)までの期間が「1か月」となります。そのため、空白期間が「1か月未満」に該当します。
Q 前の業務委託の終期は8月30日です。9月30日に次の業務委託をしました。空白期間が「1か月未満」に該当しますか。
A 空白期間の始期は8月31日となるので、9月30日(9月31日がないので、9月末日)までの期間が「1か月」となります。そのため、空白期間が「1か月未満」に該当します。
Q 当社は、フリーランスに対して、4月1日から6月10日までを契約期間とする1回目の業務委託をし、実際には6月15日に給付を受領しました。その後、新たに7月15日から10月31日までを契約期間とする2回目の業務委託をしました。空白期間が「1か月未満」に該当しますか。
A 6月16日(実際に給付を受領した日である6月15日の翌日)から7月15日(7月16日の前日)までが1か月の空白期間となるため、該当します。
6 【第5条(発注事業者の禁止行為)】
禁止行為の概要は、以下のとおりです。
(1) 特定受託事業者との1か月以上の業務委託に関し、以下の①~⑤の行為(1項1~5号)をしてはなりません。
①受領拒否
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒むこと(1項1号)
②報酬の減額
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく業務委託時に定めた報酬の額を減ずること(1項2号)
③返品
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく、給付を受領した後、その給付に係る物を引き取らせること(1項3号)
④買いたたき
特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること(1項4号)
⑤購入・利用強制
特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること(1項5号)
(2) 特定受託事業者との1か月以上の業務委託に関し、以下の①~②の行為(2項1~2号)によって特定受託事業者の利益を不当に害してはなりません。
①不当な経済上の利益の提供要請
自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること(2項1号)
②不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく、特定受託事業者の給付の内容を変更させ、又は特定受託事業者の給付を受領した後若しくは特定受託事業者から役務の提供を受けた後に給付をやり直させること(2項2号)
Q 当社は、フリーランスに対し、地元球団の優勝記念グッズの作成を委託する予定であることを伝えました。ところが、フリーランスは受託見込みでグッズを作成してしまいました。当社がグッズの受領を拒むことは、受領拒否にあたりますか。
A あたりません。ただし、実際には正式な業務委託を行っているにもかかわらず、口頭で業務委託を行い、作成させた給付の受領を拒むことは、3条通知による明示義務違反となるほか、受領拒否として問題となるおそれがあります。
Q 当社は、個々の業務委託に共通して適用する報酬の算定方法を定めています。この算定方法に基づき、フリーランスに業務を委託しましたが、このたび、報酬の算定方法を変更して報酬の額を引き下げました。引き下げた報酬の額のみを支払うことは、報酬の減額にあたりますか。
A あたります。
Q 当社は、フリーランスに業務を委託しました。報酬の額は複数の計算式で算定します。複数の計算式それぞれの過程で出た端数は切り捨てました。切り捨てられた端数の合計が1円を超えてしまいましたが、報酬の減額にあたりますか。
A あたります。1円未満の端数の処理をすることは問題ありませんが、計算過程で生じた端数を切り捨てていった結果、1円を超える場合には報酬の減額となります。
Q 当社は、フリーランスに報酬を支払う際、振込手数料を差し引きました。フリーランスの了解は得ていません。報酬の減額にあたりますか。
A あたります。なお、事前に振込手数料はフリーランスが負担する旨を合意していた場合はあたりませんが、合意をしていたとしても、実費を超えた振込手数料の額を差し引くと、報酬の減額に当たります。
Q フリーランスの給付の内容に、直ちに発見することのできない委託内容と適合しないことあるときでも、返品できないのでしょうか。
A 受領後6か月以内であれば返品できます。
Q 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等が上昇したとして、フリーランスから報酬の引上げを求められましたが、報酬を据え置きました。買いたたきにあたりますか。
A フリーランスと十分な協議をすることなく、一方的に、通常支払われる対価を大幅に下回る報酬の額を定めたような場合には、買いたたきにあたります。
Q 当社は、放送コンテンツの撮影を委託したフリーランスに、当社の関連会社が製作した映画のチケットをまとめて購入してもらいました。購入・利用強制の禁止にあたりますか。
A あたります。
Q 当社は、フリーランスに運送を委託しましたが、ついでに荷積み作業も無償で行ってもらいました。不当な経済上の利益の提供要請にあたりますか。
A あたります。
Q 当社は、フリーランスにソフトウェアのプログラムの作成を委託しました。プログラムを受領したところ、仕様と異なることが判明したので、無償で作成し直してもらいました。不当な給付内容の変更・やり直しにあたりますか。
A あたりません。
7 【第12条(募集情報の的確表示義務)】
募集情報の的確表示義務の概要は、以下のとおりです。
広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、
・ 虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはりません(1項)
・内容を正確かつ最新の内容に保たなければなりません(2項)
資料出所:「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化法」
Q 当社は、昔から付き合いのある1人に業務を委託しようと考えています。的確表示義務の対象となりますか。
A なりません。
Q 当社は、前もって収集していたメールアドレスにbccで募集情報を一斉に送信してフリーランスを募集しようと考えています。的確表示義務の対象となりますか。
A 形式的には1人のフリーランスに対して送信したメールであるように見えても、実質的に複数の宛先に送信しており、広く募集しているといえるため、対象となります。
Q 当社は、募集情報のプラットホームを運営する事業者に募集を委託したいと考えています。的確表示義務の対象となりますか。
A なります。そのため、他の事業者が虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしていることを認識した場合、他の事業者に対し、情報の訂正を依頼するとともに、他の事業者が情報の訂正をしたかどうか確認を行わなければなりません。
《ここに注意!⑪》他の事業者に募集を委託した場合には、情報の訂正・募集の終了・内容の変更を反映するよう他の事業者に速やかに依頼する必要があります。
Q 意図せず誤って事実と異なる募集情報を表示してしまいました。虚偽の表示にあたりますか。
A 虚偽の表示にあたりませんが、一般的・客観的に誤解を生じさせる場合、誤解を生じさせる表示に該当します。
8 【第13条(育児介護等と業務の両立に対する配慮義務)】
育児介護等との業務の両立に対する配慮義務の概要は、以下のとおりです。
6か月以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。
6か月未満の業務委託については、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をするよう努めなければなりません。
資料出所:「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化法」
Q フリーランスから、介護のため毎週金曜日についてはオンラインで就業したいとの申出がありました。現場作業が必要なのでオンラインへの変更は難しいのですが、必ず実現しなければ義務違反となるのでしょうか。
A フリーランスが希望する配慮を必ず実現しなければならないというものではありません。配慮の内容や選択肢について十分に検討した結果、やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、配慮不実施の旨を伝達し、その理由について説明すれば、違反にはなりません。
Q フリーランスに育児に関する配慮を実施したことによって、これまでより短い時間で業務を行うことになり業務量が減少しました。その分の報酬を減額すると、「不利益な取扱い」となるのでしょうか。
A なりません。もっとも、フリーランスが育児等に関する配慮を受けたことを理由として、現に役務を提供しなかった業務量に相当する分を超えて報酬を減額すると、不利益な取扱いに該当します。
9 【第14条(ハラスメント対策に係る体制整備義務)】
ハラスメント対策に係る体制整備義務の概要は、以下のとおりです。
・ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません(1項)。
・フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはなりません(2項)。
資料出所:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)【令和6年11月1日施行】説明資料
10 【第16条(中途解除等の事前予告・理由開示義務)】
中途解除等の事前予告・理由開示義務の概要は、以下のとおりです。
6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、
・原則として30日前までに予告しなければなりません。
・予告の日から解除日までにフリーランスから理由の開示の請求があった場合には理由の開示を行わなければなりません。
・ただし、次の①~⑤の例外事由に該当する場合は、予告が不要です。
① 災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
② フリーランスに再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
③ 業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
④ フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
⑤ 基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間(おおむね6か月以上)、個別契約が締結されていない場合
Q 当社は、フリーランスへの業務委託を8月31日に解除したいと思います。いつまでに予告すればよいでしょうか。
A 予告日(当日)から解除日の前日までの期間が30日間確保されている必要があるため、8月1日までに予告が必要です。
Q 30日前までの予告を行わなかった場合、解除は無効になるのでしょうか。
A 無効にはなりません。
Q 当社は、顧客からクレームがあったため、事前予告の上、フリーランスとの契約を解除しました。フリーランスから解除の理由を開示するよう求められましたが、開示しないといけないでしょうか。
A 当該理由を開示すると、顧客へ報復する蓋然性が高いと認められる場合などは、第三者の利益を害するおそれがある場合に該当するとして、開示義務を負いません。※他の法令に違反することとなる場合も例外
11 最期に
以上のとおり、フリーランス新法の概要についてご説明いたしました。業務委託を行っている企業様は、業務委託の相手方がフリーランスかどうか、一定期間以上の業務委託なのかどうかを再度ご確認いただき、求められる義務と禁止行為に違反していないかどうかをご確認ください。フリーランス新法が適用されるか等にお困りの企業様は、弊事務所にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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