自動更新条項付き求人広告の契約にご注意を!

第1 はじめに

 少子高齢化社会の到来と人口減少に伴い、企業の人手不足が深刻化しています。名の通った大企業であってもこの問題は避けては通れず、中小企業においても優秀な人材をコンスタントに確保することは一つの大きな課題となっています。
 こうした状況下で、近年、求人広告を活用した採用活動を行っている企業は多いのではないでしょうか。実際に企業ブースを設けて行う採用活動には限界がありますし、就職先を探す側からしてもネットから求人情報を得ることは極めて一般的になってきています。
 企業が求人広告の活用を試みることは、企業にとって大きなメリットがあります。もっとも、企業がこうした求人広告を利用する際には、広告会社による「無料で求人広告をネットに出しませんか?今だけ期間限定で無料キャンペーン実施中です」といった勧誘に注意する必要があります。有料契約を別途申し込まない限り、無料期間が続くと思っていたところ、いつの間にか無料期間が終了しており、10万円を超える多額の広告費を請求されたといったケースが後を絶ちません。
 請求を受けた後にあわてて広告会社へ連絡し、無料の契約だったはずであると伝えると、広告会社から、「弊社の利用規約には一定の無料期間を過ぎると、自動的に有料契約に移行すると記載してある。有料契約に移行する前に今回の契約を終了させる連絡がなかったので、規約どおり有料契約に移行しただけだ」といった事前に説明されていなかった規約を理由に反論され、広告費を期限内に支払うよう求められるといった問題です。
 こうしたいわゆる自動更新条項が契約に盛り込まれている求人広告を利用する際に、企業としてはどのような点に注意する必要があるのかについて、以下見ていきたいと思います。

 

第2 求人広告トラブルに対する注意喚起

 求人広告の契約をきっかけとしたトラブルが増加していることから、日本弁護士連合会から注意喚起がなされています。(参考URL:https://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/lp202212.html
 また、ハローワークから事業者に対しても、求人広告をインターネット等に掲載依頼する際には、事前に広告料金や掲載期間、無料掲載期間終了後の料金、解約方法等についてよく確認した上で契約を行うよう呼びかけがなされているところです。
(参考URL:https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kyuujinkoukokutoraburu.pdf

 

第3 企業としての求人広告トラブルへの対応

 それでは、こうした求人広告被害にあってしまった場合に、企業としてはどのような対応が考えられるでしょうか。企業の場合は、個人がこのような被害にあったケースと異なり、消費者契約法による保護が受けられません。
 そうすると、契約したからには会社としては請求された広告費を払わなければならないのか?というと、そういうわけではありません。近時の裁判例において、詐欺や公序良俗違反を理由として広告会社による広告費の請求を認めなかったものが現れ始めています。こうした裁判例は、広告会社が「広告費が無料であること」のみを強調し、無料期間に限りがあることや無料期間が経過した場合、自動的に有料契約に移行する契約内容となっていることを一切悦明していなかったこと、有料契約に移行した場合、直ちに多額の広告費が発生するにもかかわらず、広告会社から企業に対して有料契約への移行に関する意思確認を何ら行っていなかったことなどを重視しています。
 そのため、こうした事情が認められるケースでは、広告会社からの請求を拒める可能性があるといえます。ただ、あくまで言い分が裁判所に認められるかどうかはケースバイケースの上、必然的に会社として訴訟対応等に労力をさかなければならなくなります。会社にとっては紛争を予防することこそが最も重要ですので、求人広告の契約を行う際には、注意喚起がされているポイントについて、よく契約内容をご確認いただければと思います。

 

第4 おわりに

 ここまで自動更新条項の定めがある求人広告の契約について見てきました。重要な契約内容を伝えないような業者とは契約を締結しないことが一番ですが、もしも契約締結後に、上で述べたようなトラブルに発展してしまった場合には、すぐに一度弁護士にご相談いただければと思います。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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発行日:2021.03.04

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